表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/68

おししょーは、一騎討ちの条件を呑むようです。

 

「条件は一つ。どちらが勝っても負けても、お互いの兵に手を出さず、無条件で降伏すること。もし誰かが我々の一騎討ちに手を出した場合、その時点で約束は反故にされたと見做みなす。すでに、こちらの兵には話をつけている」

「……そいつは随分と、俺たちに有利な条件じゃねーか?」


 もしティーチがバックラーを倒せば、城塞都市と敵兵を一切戦闘を行うことなく傘下に収められるということになる。


「ほぉ……」


 こちらの問いかけに、バックラーは太い笑みを浮かべた。

 ユラリ、と、その体から圧を伴う気迫が覗く。


「容易く俺に勝てる、と思っているのなら、ナメられたものだ」

「いや、そーゆーわけじゃねーけど」


 戦士としての矜持きょうじ、というものだろうか。


 勝敗に言及して『楽だ』と口にしたわけではないのだが、そう取られても仕方のない発言ではあるかもしれない。

 そもそも真正面からぶつかったら、戦力的にも兵数的にも、また地形上も、こちらが圧倒的に不利なのである。


 しかし誤解を解いても仕方がないので、ティーチは話を先に進めた。


「本当にいいのか? そんな条件で」

「俺は、民の血も兵の血も望まん。辺境軍も、今敵対しているだけで、平和を得ることが出来た我が国の民だ。それに」

 

 バックラーはチラリとカノンに目を向けた後、背後のウィズとグラスを親指で示す。


「二人にも、俺が負けたら貴様らになるべく協力するように伝えてある。……カノンとて、不要に民の命を奪いはせんだろう?」

「それはねー♪ ボクたちの狙いは、あくまでもブレイヴだけだからー♪」


 あっさりとカノンは答えるが、実際にその通りだった。


 だからといって、辺境伯領の周りのように、魔王を始末しなければ魔物で溢れ返る可能性がある以上、負けるわけにはいかないのだが。


「支配とかめんどくさそうだし、興味ないからな。俺はさっさと終わらせて昼寝がしたい」


 するとふと、訝しんだようにバックラーが眉をひそめる。


「支配に興味がない……? ならばなぜ、陛下を狙う?」

「それは、ティーチがキミに勝ったら説明してあげるよー♪」


 そう、今言っても、意味がない。

 彼自身が魔王の洗脳を受けているのは、間違いない事実だからだ。


 どれほど高潔に見えようとも、それは元々の性格的な面がそうだから、というだけなのである。


 バックラーは少し考えた後、一つうなずいた。


「良いだろう。諦めるつもりがないのなら、後は条件を呑むかどうかだけだ」

「正直やりたくねーけどな」

『おいッ!!!!』


 正直、彼はめちゃくちゃ強そうだ。

 なので思わず本音を漏らすと、ブレイヴが我慢できなかったようで、声を張り上げた。


「!? ……喋るのか、そのスライム」

「いや気にすんな。だが、やるよ。やりたくねーけど、俺もお前さんと同じように被害が少ない方がいいと思ってるしな」

「そうか。では、十分後。準備を整えて戻ってこい」

「分かった」 

 

 こちらの兵に事情を説明する時間も必要なので、ティーチはカノンと連れ立って自陣に戻った。


※※※


 ーーーやはり、掴みどころのない妙な奴だな。


 バックラーは、戻っていくティーチを見て首を傾げていた。


 目的が全く分からない。

 権力にも興味がなさそうなら、陛下に恨みを抱いているような様子もなかった。


 命じられた以上、始末はしなければならないが、不可解ではあった。


「さて、彼は一騎討ちに大人しく応じるかな?」


 やり取りを黙って見ていたグラスが、彼らが十分に距離を取ったところで、楽しげに口を開く。


「応じなければ、総力で叩き潰すだけだ。どちらにしたところで元々、先陣を他の者に譲るつもりはなかった」


 バックラーは兜を被り、背中に差していた大剣を引き抜く。


「だよねー。指揮官失格だとは思うけど。バックラーじゃなきゃ、アタシは無能扱いするところだよ」


 グラスは、自分の勝利を疑っていない、ということだろう。

 信頼されている自覚はあった。


「無能か。……元々、デカい体で壁になる以外に能はない」

 

 バックラーには、ブレイヴやウィズのように特別な素質も、レイザーのような才覚もなければ、グラスのような頭脳も持ち合わせはない。


 ただ愚直に前に出て、剣や槍を振るうことしか出来ない、ただの戦士なのだ。

 仲間に恵まれただけで、本来は栄誉を得るような人間ではないと、バックラー自身は心の底から思っていた。


「一騎討ちがどうなっても、アタシの仕事は、状況がどう転んでもこっちが勝つように計らうことだからねー。もし連中が小賢しいことをしたら、悪いけど勝手に動くよ?」

「それでいい。……では行ってくる」


 約束通り、十分でこちらに一人で戻ってくるティーチを見ながら、バックラーはグラスの後に恋人に声をかけた。


「一つ、お伝えしておきますけれど」

「何だ?」


 ウィズは、相変わらず表情を変えずに淡々と告げる。


「ーーー壁になる以外に能がない、は、謙遜が過ぎるかと思いますよ?」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こういう燻し銀のおっさんは相当固いよな 抜けるかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ