勘違い令嬢は推しの殿下と添い遂げたい
最終話です!ビビアンとリチャードの恋路を最後まで見守って頂けますと嬉しいです!
「はぇ? 殿下?」
息せき切って追いかけてくるリチャードに、ビビアンは思わず間抜けな声を漏らす。
だが、直ぐに淑女の仮面を被り直して微笑んだ。
「いかがなさいましたか? 何か御話忘れた事がございましたか?」
言いながら、婚約破棄の話を具体的に聴きたくなくて、ビビアンは半歩後退る。
だが、息を整えたリチャードはどんどんと近付いて来て、彼女の目の前に立った。
「ビビアン、婚約破棄含め、今までの事は全て君の勘違いだ」
言われている意味が分からず、ビビアンは首をかしげる。
そんな彼女の手を、リチャードは両手で包み込んだ。
ビビアンは、エスコート以外で繋いだ事の無かったリチャードの手に驚く。
「で、殿下⁉」
リチャードは真剣な色を翠の瞳に乗せ、ビビアンの紫の瞳を真っ直ぐに見る。
「君は、僕とトムが恋仲だと思っているんだろう? それは違う。僕が好きなのは君だ、ビビアン」
意味を咀嚼しきれず、ビビアンは固まり、その後素っ頓狂な声を上げた。
「ほえぇ⁉ なんですって~⁉」
ビビアンは身を乗り出し、リチャードに今までの事を話し始める。
「だって、わたくしが初めてご挨拶した時、トム様と顔を赤らめて話していらしたではないですか!」
「それは君に一目惚れしたから、トムに婚約者は君が良いと話していたんだ」
「で、でもでも、トム様の肩に手を置いて詰め寄っていらしてましたわ! あれは恋人同士の触れ合いでは⁉」
「……多大に空想が膨らんでいる様だが、きっとそれはトムを叱っていた時の事だな」
他にもあれやこれやを話したが、リチャードは完璧な返しでビビアンの勘違いを指摘した。
「では、本当にわたくしの勘違い……?」
「そう言っているだろう」
ビビアンはへなへなとその場に座り込む。
では、あの贈り物や家への訪問も、カモフラージュなどではなかったのだ。
勝手に勘違いして、恥ずかしいったらない。
婚約破棄の事も勘違い……、ではない。
婚約破棄についてだけは、リチャードがさっき確かに婚約についての話をしていたではないか。
ばっとビビアンは顔を上げる。
「でも、婚約破棄は事実なのですよね? さっき殿下も仰っていたもの……!」
だが、リチャードは屈んでビビアンに眼を合わせる。
「それも君の勘違いだよ、僕が言いたかったのは、婚約式が少し延期になったという報告だ」
「え、延期……?」
「そうだよ、春ではなく、健国祭のある夏に併せて行う事になったと言いたかったんだ」
ビビアンは、婚約破棄を意識するあまり、婚約というワードだけで勘違いしてしまったのだ。
恥ずかしいやら、申し訳ないやら、様々な感情でビビアンの頭の中はぐちゃぐちゃになる。
ふっ、と微笑んだリチャードは、ビビアンの手の甲に口付けた。
「で、殿下ぁ⁉」
「ビビアン・ハンナム嬢、僕は君をずっと愛している。どうか僕と結婚して欲しい」
顔を真っ赤にしたビビアンは、手の甲とリチャードの顔をせわしなく交互に見遣る。
そして、こくこくと頷いた。
「返事も貰えると嬉しいんだけど?」
上目遣いに見つめられて、ビビアンの心臓は大きく音を立てる。
そうか、自分はトムとリチャードのカップルが推しだったのではなくて……。
「はい! わたくしも殿下をこれまで以上に推し、夫婦となる事を誓いますわ!」
~END~
お読みいただきありがとうございました!
今までウェブ小説のお作法を全く知らず投稿していたのですが、有難くもアドバイスを頂いて、思い付いたのがこのお話でした。
楽しんで頂けていたら幸いです!
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