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勘違い令嬢は婚約破棄して推しカップルを眺めたい  作者: みん


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7/7

勘違い令嬢は推しの殿下と添い遂げたい

最終話です!ビビアンとリチャードの恋路を最後まで見守って頂けますと嬉しいです!


 「はぇ? 殿下?」


 息せき切って追いかけてくるリチャードに、ビビアンは思わず間抜けな声を漏らす。

 だが、直ぐに淑女の仮面を被り直して微笑んだ。


 「いかがなさいましたか? 何か御話忘れた事がございましたか?」


 言いながら、婚約破棄の話を具体的に聴きたくなくて、ビビアンは半歩後退る。

 だが、息を整えたリチャードはどんどんと近付いて来て、彼女の目の前に立った。


 「ビビアン、婚約破棄含め、今までの事は全て君の勘違いだ」


 言われている意味が分からず、ビビアンは首をかしげる。

 そんな彼女の手を、リチャードは両手で包み込んだ。

 ビビアンは、エスコート以外で繋いだ事の無かったリチャードの手に驚く。


 「で、殿下⁉」


 リチャードは真剣な色を翠の瞳に乗せ、ビビアンの紫の瞳を真っ直ぐに見る。


 「君は、僕とトムが恋仲だと思っているんだろう? それは違う。僕が好きなのは君だ、ビビアン」


 意味を咀嚼しきれず、ビビアンは固まり、その後素っ頓狂な声を上げた。


 「ほえぇ⁉ なんですって~⁉」


 ビビアンは身を乗り出し、リチャードに今までの事を話し始める。


 「だって、わたくしが初めてご挨拶した時、トム様と顔を赤らめて話していらしたではないですか!」

 「それは君に一目惚れしたから、トムに婚約者は君が良いと話していたんだ」

 「で、でもでも、トム様の肩に手を置いて詰め寄っていらしてましたわ! あれは恋人同士の触れ合いでは⁉」

 「……多大に空想が膨らんでいる様だが、きっとそれはトムを叱っていた時の事だな」

 

 他にもあれやこれやを話したが、リチャードは完璧な返しでビビアンの勘違いを指摘した。


 「では、本当にわたくしの勘違い……?」

 「そう言っているだろう」


 ビビアンはへなへなとその場に座り込む。

 では、あの贈り物や家への訪問も、カモフラージュなどではなかったのだ。

 勝手に勘違いして、恥ずかしいったらない。

 婚約破棄の事も勘違い……、ではない。

 婚約破棄についてだけは、リチャードがさっき確かに婚約についての話をしていたではないか。


 ばっとビビアンは顔を上げる。


 「でも、婚約破棄は事実なのですよね? さっき殿下も仰っていたもの……!」


 だが、リチャードは屈んでビビアンに眼を合わせる。


 「それも君の勘違いだよ、僕が言いたかったのは、婚約式が少し延期になったという報告だ」

 「え、延期……?」

 「そうだよ、春ではなく、健国祭のある夏に併せて行う事になったと言いたかったんだ」


 ビビアンは、婚約破棄を意識するあまり、婚約というワードだけで勘違いしてしまったのだ。

 恥ずかしいやら、申し訳ないやら、様々な感情でビビアンの頭の中はぐちゃぐちゃになる。

 ふっ、と微笑んだリチャードは、ビビアンの手の甲に口付けた。


 「で、殿下ぁ⁉」

 「ビビアン・ハンナム嬢、僕は君をずっと愛している。どうか僕と結婚して欲しい」


 顔を真っ赤にしたビビアンは、手の甲とリチャードの顔をせわしなく交互に見遣る。

 そして、こくこくと頷いた。


 「返事も貰えると嬉しいんだけど?」

 

 上目遣いに見つめられて、ビビアンの心臓は大きく音を立てる。

 そうか、自分はトムとリチャードのカップルが推しだったのではなくて……。


 「はい! わたくしも殿下をこれまで以上に推し、夫婦となる事を誓いますわ!」


 


 ~END~



お読みいただきありがとうございました!


今までウェブ小説のお作法を全く知らず投稿していたのですが、有難くもアドバイスを頂いて、思い付いたのがこのお話でした。

楽しんで頂けていたら幸いです!


☆、ブクマ頂けますと、嬉しくて月までジャンプします!


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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 イッキ読みでしたが、誤解がとけたリチャード様が報われて安心しました。 トムも早く言ってくれれば勘違いが止まったのに……絶対糸目だこの侍従。 一番最初から主人公が腐っておられたので、ど…
疾走感が素晴らしく勢いよく読んでしまう作品でした! 文体もとても読みやすく、なにより登場人物がかわいい! 登場人物全員に好感が持て、シーズンIIとかないかな…と期待してしまいました!それくらい読後の話…
リチャード様、思いが通じて良かった……! 可愛らしいハッピーエンドで、キュンッとしました!
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