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おやこ
体験した出来事を膨らませて書きました。あまあまかもです。
怒鳴り声が聞こえた。わめき声じゃなくて、本当に胸を貫く本気の心配からの声。
私が振り向いた先で、泣きじゃくる子供を抱き締めてあやしながら、母親が父親を叱責していた。
「あなたが走ってでも止めないから!」
「いやでも……」
その声の必死な響きは、私の胸に矢として刺さる。あぁ……これが【母】の強さなんだなと。
私は【女】から【母】に、ちゃんと成れるのだろうか。厳しさも優しさも、ちゃんと使って育てていけるのか。
もやもやと考えて、足を止めていた私に彼が頭をぽんぽん。
「子供……欲しいな」
「うん……」
俺もちゃんと育児参加するから、ちゃんと支えるからと早口で喋る彼を見て、多分私は、やっていけるなと、何と無く胸が温かくなる。
さっきの親子は、泣き止んだ子供に、泣きそうな父親を連れて去っていった。
どんな形でも、対話出来るなら大丈夫。そんな気がする。
相変わらず、しどろもどろと喋る彼の腕に指環をはめた手を絡めると、ゆっくり歩き出す。私達の家へ。




