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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
最終章 クズ王子は――未来に手を伸ばす

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クズ王子は、思い出す

 その姿を見たのは、数ある終わった人生の中でも一度だけだった。それはカイよりも先に私が死んでしまった時の話である。


 何度目の人生だったかは、よく思い出せない。けれどもカイがオーガになった姿は、よく覚えていた。

 それは私がなんらかの罪を犯し、公開処刑が行われた日の話。断頭台に首を置き、執行官の斧が振り落とされる。

 その瞬間――私の首ではなく執行官の首が飛んだのだ。

 首を跳ね飛ばしたのはカイだった。

 拘束が解かれ、カイは私に手を差し伸べる。しかしながら、カイはいつものカイではなかった。

 額から二本の角が生え、目は真っ赤に染まり、牙も鋭く尖っていた。

 その特徴は、オーガそのもの。

 かろうじてカイだとわかるのに、まるで恐ろしい化け物のように感じて、私は差しだされた手を握れなかったのだ。

 そうこうしているうちに、カイは駆けつけた騎士に押さえ付けられる。

 私の死刑執行も、速やかに行われた。

 乱暴に断頭台に連れ戻され、首に何度も何度も斧が打ち付けられる。

 一度で首を切り落とす処刑道具もあったのに、枢密院の投票で打ち首と決まったのだ。投票した奴らの顔は、今でも思い出せる。なんとも腹立たしい。

 首を飛ばされた瞬間、騎士達を振り払って駆けてくるカイと目があったような気がして、胸が切なくなった記憶が甦ってきた。

 その後、オーガと化したカイがどうなったかはわからない。私は打ち首となって死んでしまったから。


「うわあああああああ!!!!」


 カイの叫びでハッと我に返る。 

 全身串刺し状態なのに、カイは力で黒い杭を折って前に出る。

 体に杭が残っているのに剣を振り上げ、オーガに一撃を与えた。

 オーガの腹部を切りつけると、血が溢れてくる。それと同時に、魔法陣が浮かび上がって発動された。今度は、氷の矢がいくつも突き出てきた。

 カイは全身に氷の矢を受けながらも、猛攻を止めない。


 オーガは逃げ回り、攻撃が届いても致命傷を避けるような動きを見せていた。

 そして、カイに切断された切り口が光ったかと思えば、新しい腕が生えてくる。

 オーガはとにかく生命力が強いと以前読んだ本に書いてあった。四肢が切断されても生えてくる、という記述も記憶に残っている。ただ、これほど早く生え替わるとは、本に書いていなかった。

 腕を取り戻したオーガは戦斧を拾い、カイに向かって振り下ろす。


「オオオオオオ!!」


 先ほどと気迫がまるで違っていた。カイが想定外の強さを見せているからだろう。

 ここで、思い出す。そういえば、私達には〝奥の手〟があったのだと。

 オーガになったカイに、声が届くかはわからない。けれども、私は力の限り叫んだ。


「カイ! ルイーズ嬢から買い取った例の物を使え!!」


 それは、亜人に有効な猛毒だ。それならば、四肢を切り落としても復活するオーガを倒すことができるだろう。

 カイは私のほうを見て、こくりと頷いた。

 腰ベルトの鞄に入れていたようで、オーガから距離を取るのと同時に手に取る。

 猛毒を剣にまき散らし、再び斬りかかる。

 オーガにとっては謎の液体でしかないが、警戒しているのだろう。カイの攻撃を回避し始める。

 どうすればいいのか。頭を抱えていたら、メルヴ・イミテーションが前に出てきた。


「お、おい、危険だぞ」

『メルヴモ、オ手伝イスル!!』


 そう言って、頭上から生やした蔓を飛ばした。それはオーガの足にぐるぐる巻きついて、動きを止める。

 メルヴ・イミテーションは両足で踏ん張り、『グウウウウ……!』と苦悶の声をあげる。

 ズズズと引っ張られているようだったので、私はメルヴ・イミテーションに抱きついて加勢した。

 オーガがこちらを睨んだ瞬間、隙ができる。

 カイは剣をまっすぐに、オーガの胸へと突き出した。


『ガ、ガアアアアアア!!!!』


 即効性の猛毒だ。すぐに、命を奪うだろう。

 オーガは片膝を突き、そのまま動かなくなった。

 同時に、カイもその場に蹲る。


「カイ!!」


 魔法を封じる結界は解けたのか。わからないが、全身血だらけのカイに回復魔法を施す。


「祝福よ、不調の因果を癒やしませ――!」


 魔法陣が浮かび上がり、回復魔法が発動される。けれども、出血が止まらない。

 もう一度試すも、結果は同じだった。


「殿下、もう、手遅れの、ようです。たくさん、血を、失いました」


 兜を外そうとしたが、角が引っかかっていてできなかった。代わりに目びさしバイザーを少しだけ開く。瞳や肌は赤く染まり、いつものカイとは異なっていた。


『メルヴノ葉ッパ、食ベタラ、元気ニナルカラ!』

「ありがとう、ございます。お気持ちだけ……いただきます」

「どうしてだ!?」

「もう、遅い……」


 その一言を最後に、カイは目を閉じる。深い傷口を押さえていた手も、だらりと力なく落ちていった。


「カイ! カイ!!」

「……」


 アウグスタと聖女マナも駆け寄り、カイを覗き込む。


「そ、そんな!」

「まだわかりませんわ!」


 アウグスタがカイの脈拍を測ったようだが、何も感じなかったようだ。


「そんな、まさか、カイが、死ぬ……なんて」


 涙が溢れてくる。胸が苦しくもなった。

 カイはずっと、このような気持ちで私の死に向き合っていたのだろうか?

 だとしたら、辛い経験を何度もさせてしまった。


「ああ……!」


 嘆きが嗚咽となって吐き出される。

 アウグスタが私の背を、優しく撫でてくれた。


『ウウウウウ……!』


 低い声が聞こえ、我が耳を疑う。

 倒したはずのオーガが、微かに動いていたのだ。


 カッと目が見開かれ、立ち上がった。それと時同じくして、ドタバタと廊下が騒がしくなる。


 これまで閉ざされていた扉が開かれ、騎士達が押し入ってきた。

 その先頭にいたのは、フェリクスだった。


「オーガを発見! 皆の者、攻撃開始!」


 騎士達が一斉に、オーガに襲いかかる。

 猛毒で弱っていたオーガは、あっという間に倒された。今度は心臓に槍が突き刺され、二度と立ち上がれないように鎖でグルグル巻きにされる。


 フェリクスがやってきて、私に向かって声をかけていたが――何も耳に届かなかった。

 オーガは倒されたが、カイは死んでしまった……。

 これまで一生懸命、死から逃れようとしてきた。カイと一緒に生きられるのであれば、何もいらない。そう思っていたのに、私が犯人捜しをしたばかりに、彼女を失ってしまった。

 悲しい、空しい、悔しい、憎たらしい。


「もう、生きていたって仕方がない」


 そう思い、近くに転がっていた亜人向けの猛毒を手に取る。中には一滴だけ、毒が残っていた。


 口を広げ、その雫が落ちる瞬間、傍にいた聖女マナが叫んだ。


「ちょ、ちょ、ちょーー、待って!! なしなし、こんなのなし!! リセットーーーー!!」

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