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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
最終章 クズ王子は――未来に手を伸ばす

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77/90

クズ王子は、公爵令嬢を説得する

「げ、アウグスタがいる!! 転移失敗じゃん!! 課金して、高価な魔法巻物が無駄になっちゃった!!」


 船乗りみたいな上着に丈が短いスカートを合わせた、黒髪黒目の小柄な少女――彼女は、行方不明になったと囁かれていた聖女マナだ。

 どうして彼女がここに? と思ったのと同時に、死んだはずの私が居合わせてしまった。

 幸いと言うべきか。彼女の視線はアウグスタにあった。私の危機を察したカイが前に立ちはだかり、姿を隠してくれる。その間に、コンパクトを使って女性の姿に変身した。恰好も、フロックコートからドレスに替えておく。


 それにしても聖女マナはどうして、王家と繋がりが強いアウグスタのもとへとやってきたのか。理解に苦しむ。

 アウグスタも同様に疑問に思ったのだろう。聖女マナへと質問を投げつける。


「あなた、なぜここに?」

「なぜって、国から追われているから、逃げているに決まっているじゃん」

「わたくしが国に通報すると、思いませんでしたの?」

「だって、ここに来るとは思わなかったんだよ!」


 どうやら、聖女マナは望んでここへ下り立ったわけではないらしい。


「私を助けてくれる人のもとへって、願って転移したの。そうしたら、あなたのところに下り立ったってわけ」


 聖女マナの手には、もう一枚の魔法巻物がある。危機が迫ったら、どこかへ逃げるつもりなのだろう。


「王子クリストハルトを生き返らせる魔法だって、習得していた。けれども、失敗したの! わざとじゃないんだから! 誰にだって失敗はあるのに、私ひとりを悪者にして、酷くない?」


 私は今、ここにいる。聖女の蘇生術が失敗したのは私が生きているから、というのもあるのかもしれない。

 アウグスタも同じように考えているのだろう。聖女マナを見つめる視線に、同情の色が混じっているように見えた。


「それよりも、大変なの! 私、〝ログアウト〟ができなくなってしまって――!」


 〝ログアウト〟――それは聖女マナが元の世界へ戻る呪文である。

 ということは、彼女は私の蘇生術が失敗してから、この世界に居続けたというわけか。

 なぜ、〝リセット〟をしなかったのか?

 もしかしたら、〝ログアウト〟同様に使えなくなっているのかもしれない。

 だとしたら、彼女は私達の脅威ではなくなった。

 このまま見放したら何をするかもわからない。聖女マナが危険人物であることは変わりないので、傍に置いておいたほうがいいだろう。

 険しい表情で聖女マナを見つめるアウグスタに、提案してみる。


「アウグスタ、彼女を、ここで保護すべきだと私は思う」

「それは、どうしてですか?」

「国が勝手に召喚した聖女を外の世界へ放り出すなど、無礼極まりない行為だとは思わないか?」

「そうそう! 本当にそのとおりだよ!」


 調子に乗って同意する聖女マナを、ジロリと睨む。この世に存在しないはずだった彼女のおかげで、私やカイは振り回された。恨みがましい気持ちを抑え、アウグスタを説得する。


「しかし、聖女マナを匿っていることがバレてしまったら――」

「あの、こちらをお使いください」


 カイが聖女マナへ差し出したのは、変身コンパクトである。

 そうだ、その手があった。

 カイは女性で変身していない。つまり、コンパクトを使っている状態ではないのだ。だから、聖女マナが代わりに使えるというわけである。


 変身コンパクトを目にした聖女マナは、身を乗り出して覗き込む。


「え、何それ! 見たことないアイテムなんだけれど!」

「こちらは変身コンパクトです。女性から男性へ変身したり、人間から動物に変身したりできる魔技巧品です」

「すごーい! そんな隠しアイテムがあったなんて!」


 聖女マナは上機嫌で、カイから変身コンパクトの説明を聞いていた。

 彼女が選んだのは黒ねずみの姿だった。変身コンパクトはペンダント状になり、首輪からぶら下がっていた。


「ちゅ~! ねえ、アウグスタ。この姿だったら、匿ってくれるでしょう?」

「……」


 こちらからも頼むと、頭を下げる。


「わかりました。その黒ねずみの姿でいるのであれば、保護いたしましょう」


 アウグスタの説得に成功し、ホッと胸をなで下ろす。


「あ、そういえば、さっき男の人の声がしたんだけれど、どこに行ったの?」


 男の人というのは私だろう。聖女マナの登場に驚き、声をあげていたようだ。


「そ、それは――」

「私です」


 カイが挙手する。思いがけない発言に瞠目した。


「驚くと、低い声が出てしまうのです。どうか、お気になさらないでください」

「ふーん、そうなんだ。わかった」


 カイに感謝したのと同時に、聖女マナが単純思考の持ち主でよかったと感謝する。

 

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