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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
最終章 クズ王子は――未来に手を伸ばす

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クズ王子は、新たな行動を起こす

 耳を澄ませたものの、会話はそれっきり途切れてしまう。

 他のテーブルからも、噂話は聞こえない。王族の死を悼む期間だからか、大きな声でお喋りできないのだろう。


 ここで、秘密の会話をするため、メルヴ・イミテーションにこちら側の声を遮断してもらう。

 魔法が展開されたのちに、話し始める。


「おそらく、どこに行っても、このような雰囲気なのだろうな」

「ええ」


 噂話を聞き耳立てて情報収集しようと思っていたのに、偽装した死が活動を妨害してくれる。なんてことだと、頭を抱え込んでしまった。


「いっそのこと、王宮にでも潜入できたら直接話が聞ける気がするのだが、どこから潜り込めばいいのか見当もつかない」


 王宮には大勢の侍女やメイドがいる。しかしながら、勝手に紛れ込むことは不可能だろう。雑多に働いているように見えて、ひとりひとり身分は明らかにされ、保証人の推薦のもとで働いているのだ。


 つまり、王宮に潜入するには認められた立場にいる者の推薦が必要なのである。


「ドロテーアに頼めば王宮でメイドの推薦は得られるだろうが――」


 彼女が扮するジン・フォン・ドロッセルは貴族で、爵位は男爵だったか。

 魔石商会での働きが認められ、二、三年前の叙勲式に参加し、爵位と勲章を得ていたような気がする。

 新興貴族であることに加えて、歴史はないに等しい者の推薦などたかがしれている。下働きのメイドにでもなれたらいいほうだ。

 王宮で働く推薦が得られても、情報を握っているであろう上層部の人間に接触できない職場では意味がない。


「惑わし眼鏡があれば、メイドとして潜入したあと、王宮内を調査できると思うのですが」

「いいや、危険だ」


 王宮内には、魔法に詳しいエルフや嗅覚に優れた獣人、気配察知が得意な竜人などが歩き回っている。こそこそと怪しい行動をして、彼らに拘束されたら身元保証人のドロテーアが疑われてしまうだろう。


「上層部の人間の噂話を聞くために王宮へ潜入するには、高い身分の推薦人が必要だ」


 カイはどうすればいいのかわからないのだろう。顔を俯かせている。

 そんな彼女に、私はある提案をしてみる。


「これからアウグスタと接触しようと考えているのだが、カイはどう思う?」

「アウグスタ様に、ですか?」

「ああ、そうだ」


 アウグスタは王妃教育の一環として、王妃殿下の侍女を務めていた経験がある。

 そんな彼女を介して王宮へ潜入したら、怪しまれずに済むだろう。


「たしかにアウグスタ様であれば、王宮でも一部の人間にしか許されていない階層へいざなってくれるでしょうが……」


 果たして巻き込んでもいいものなのか、とでも考えているのだろう。カイの考えなど、聞かずともわかるのだ。


「アウグスタ嬢に、すべての事情をお話しされるのですか?」

「いいや、すべてではない。話すのは死体を偽装したことと、命を狙われていること、それからこの女性になっている者の正体が私ということのみだ」


 カイの表情は晴れないままだ。彼女が反対するようであれば、この作戦は取り下げる。けれども、その様子はない。きっとカイも適任はアウグスタしかいないと考えた上で、迷っているのだろう。


「カイ、アウグスタは聖獣に選ばれし乙女だ。何かあったら、聖獣が守ってくれるから心配ない。それに、アウグスタには貸しがひとつある」


 貸しというのは、聖獣の命を助けた一件である。私の貸しというよりは、メルヴ・イミテーションへの恩と言ったほうが正しいのだが。


「公爵令嬢であるアウグスタ様とは、どのようにして面会を取り付けるのでしょうか?」

「それは簡単だ。ごくごく普通に、公爵家を訪問するだけでよい」


 ただ、アウグスタに伝える用件は工夫が必要だろう。


「そうだな。魔法学校にあった喫茶店、サロンカフェ〝クライノート〟で働いていた従業員で、個人的にお伝えしたいことがあるとでも言えばいいだろう」

「わかりました。出発はいつになさいますか?」

「今からだ。すぐに行こう」


 そんなわけで、次なる目的地は公爵家となる。

 公爵邸に辿り着くと、先触れのない約束だったため不審がられてしまった。

 魔石商会を営むジン・フォン・ドロッセルの縁者だと名乗った上で、あらかじめ決めていた伝言を侍女に伝える。

 すると、アウグスタは私達の前に現れた。だが、ホッとしたのもつかの間の話であった。


「あなた達、何者ですの? おふたりとも、〝クライノート〟で働いている者ではありませんね?」


 聖獣を従えたアウグスタが、私に見せたことがないくらいの怖い顔で問いかけてきた。


 さっそく、怪しいふたり組だと見抜かれてしまった。

 

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