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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第七章 契約――魔女と共に

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クズ王子は、死体を作る

 カイとメルヴ・イミテーションを呼び戻し、今度はこれからについて話す。


「まずは、クリストハルト殿下の死体を偽装したいと言っていたわね」

「ああ、そうだ。可能だろうか」

「まあ、できるけれど」

「材料費と報酬は払う!」

「それはもちろんいただくわ。ただ――」

「ただ?」

「材料を集める覚悟があるのか、聞きたいんだけれど」

「ある!」

「聞く前に言わないほうがいいわよ」


 今回用意する死体は、燃えさかる森に放置して焼死を装う。すべて燃えたら大変なので、ある程度原形は残したい。


「それは無理よ。あの火事、けっこう酷い状況で、消すのに数日かかると思うわ」

「そ、そうか」

「ただ、魔法警務官が死体の検死を行うでしょうから、そこで王太子の遺体があると判明する可能性が高いけれど」

「それだと、外見だけでなく、中身までも私と同じになるよう作る必要があるのでは?」

「そうよ。だから、あなたが大変だって言っているの?」

「具体的に、どう大変なのだ?」


 魔女ドロテーアは空中に呪文を描き、魔法書を呼び寄せる。それは黒革に赤文字で魔法陣が描かれた、不気味な雰囲気が漂う装丁であった。 人体を作るための一冊なので、ごくごく一般的に流通しているような魔法書ではない。気味悪く感じてしまうのも、無理はないだろう。


「人を作るために必要な材料は、ウンディーネの祝福水にスライム・ゼリィ体、ワイバーンの脂肪に、サラマンダー鉱山の石、蜜クリーム糖、それから魔石を五十個ほど、かしら」

「それをすべて集めるのか?」

「いいえ。これらは私の工房に在庫品があるわ」

「す、すごいな」


 なんでも歴代の魔女が、王家の無茶な命令に応えられるよう貯蔵していた品々だという。


「これらの材料で作れるのは、典型的な人間の形。それではダメだということは、わかっているわよね?」

「ああ。魔法警務官が検死したら、私でないとバレるだろう」

「そう。人間のひな形が完成したら、クリストハルト殿下により近い状態までもっていく必要があるの」


 そのために、ある材料が必要だという。


「まずひとつめは、体のいたる場所にある体毛」

「体毛、というのは毛髪だけでなく、その、体中すべての部位の毛が必要なのだな」

「そうよ。耳毛に鼻毛、胸毛……まあ、いろいろ」


 ドロテーアが材料集めが大変だという理由が、今になって理解できた。


「あとは、体液のすべてを提出してちょうだい」

「体液というのは、血液に唾液」

「あとは言わなくてもわかるわね?」

「……」

「返事は?」

「はい」


 額から、ぶわっと汗が滲んできた。果たして、すべて集めることができるのだろうか。

 自分の死体を偽装することは大変の一言では済まないようだ。


 カイのほうをちらりと見る。体液の下りを聞かされてから、非常に気まずそうにしていた。本当に申し訳なく思う。


「じゃあ、さっさと作るわよ。カイは私を手伝って。メルヴ・イミテーションはクリストハルト殿下の助手をお願い」

『ハーイ!』


 ドロテーアは道具一式を、魔法を使って手元に呼び寄せる。そこには毛抜きや消毒したナイフ、素材を保管する試験管などが収められていた。


「いい? あんまり時間はかけないこと。一時間とは言わないけれど、三時間かけたら私が採取しにくるからね」

「わかった。なるべく、早く集めるように努めよう」


 そんなわけで、素材集めを開始する。

 想像以上に大変な作業だったが、手先が器用なメルヴ・イミテーションのおかげで体毛はすぐに集まった。

 体液に関しては、メルヴ・イミテーションは席を外してもらい、なんとか自分で集める。

 一時間半ほどで、集めることができた。


 地下の実験室に素材を持っていくと、ドロテーアに怒られてしまった。


「遅い!!」

「すまない」


 すでに、人体のひな形は完成していた。私と同じ背丈の人型が、魔法陣の上に横たわっている。


 他にも材料が必要だったようで、青いガラス玉や鹿の角のような物なども置かれていた。


「素材は――すべて集まったみたいね」

「ああ」

「じゃあ、仕上げをするわよ」

「頼む」


 ドロテーアは素材の入った木箱に呪文を描き、何やらぶつぶつと唱えていた。

 魔法陣が浮かび上がり、素材がひとつの塊になる。それを、人体のひな形へと挿入していった。


 眩い光に包まれ、人型の形が変わっていく。

 私と同じ金の髪が生え、瞼には青い瞳が宿る。指先には爪が生え、しなやかな筋肉もつき始めた。

 四肢がブルリと震え、魔法陣の光に包まれる。


「できたわ!!」


 光が収まったあと、その姿を確認する。

 魔法陣の上に、私とそっくりな男が全裸で横たわっていた。

 カイが目にも止まらぬ速さで、マントをかけてくれる。

 彼女はこれまで見たことがないくらい、赤面していた。

 なんというか、そこまで気が回らずに申し訳ないと思った。

 

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