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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第六章 懇願――使い魔探し

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クズ王子は、命を守る

 突き出されたナイフが、眼前に迫る。

 メテオ・スターの呪文を詠唱しようと思ったものの、動作が間に合わない。

 グッと奥歯を噛みしめたのと同時に、カイが目の前に躍り出たのがわかった。

 両手を広げ、庇うような体勢を取る。


「カイ――!!」


 プリンセス・ラブリー・ロッドを捨てて、カイの腕を握る。そして、私は願う。どうか、この場から逃げられますように、と。


 魔法陣が浮かび上がり、強い輝きを放った。

 温かな光に包まれ、意識を手放した。


『フンフンフンフ~~ン』


 平和ボケしているとしか思えない、気の抜ける鼻歌で目が覚める。

 布団の代わりに、私の半身を覆うほどの巨大な葉っぱがかけられているのに気づいた。

 慌てて起き上がると、大根に似た生き物と目が合う。


「お、お前は――!?」

『メルヴ・イミテーションダヨオ』

「ああ、そうだ」


 そうだった。おぼろげだった記憶が甦る。

 黒衣の男の凶刃が迫った瞬間、カイが私を庇うような体勢を取ったのだ。このままでは、カイがやられてしまう。そう判断し、私は咄嗟にメルヴ・イミテーションから貰った転移のブローチを使ってここまでやってきたのだ。


「そうだ、カイは!?」

『ココニイルヨオ』

「カイ!!」


 カイも私と同じように倒れた状態だった。巨大な葉っぱも丁寧にかけられている。


『眠ッテイル、ダケダヨオ』

「そ、そうか」


 どこかケガをしているかもしれない。念のため、回復魔法をかけておく。


「ううっ……!」

「カイ!」


 僅かに身じろぎ、ぎゅっと身体を丸くする。


「どうした!? どこか痛むのか!?」

「――た、守れ――かった」

「なんだと?」

「ううっ……!」


 もう一度回復魔法をかけたほうがいいのか。迷っていたら、メルヴ・イミテーションが『大丈夫ダヨオ。ソット、シテオイテ』と言ってくれた。このままここでカイが目覚めるのを待つしかないようだ。


「メルヴ・イミテーション、突然訪問して、悪かったな」

『嬉シカッタカラ、イイヨ!』

「感謝する」


 つい先日、メルヴ・イミテーションの葉を聖獣の治療のために貰った。頭上から生える葉がなくなり、つんつるてんな状態になっていたが、今日見てみたら小さな芽が生えてきていた。


「葉っぱ、生えてきたんだな」

『ソウ!』


 ちょっとした傷ならば、この葉でも完治できるという。


『アゲヨウカ?』

「いや、いい。大丈夫だ。気持ちだけいただいておこう」

『ソッカー』


 メルヴ・イミテーションはあまりにも純粋すぎる。私やカイ以外の人間とは会わせるべきではないのだろう。


「今日は、このブローチのおかげで助かった」

『ヨカッタヨオ』


 そんな話をしているうちに、カイが目覚めた。突然「クリストハルト殿下!!」と叫びながら起き上がったので、跳び上がるほど驚いた。


「カイ、私はここにいる。無事だ」

「クリストハルト殿下っ!!」


 カイは私にケガがないと確認するなり、がばりと抱きついてくる。

 このような反応はこれまで一度もなかった。

 彼女がまとう板金鎧の突起が頬や首にこれでもかと突き刺さる。正直痛かったが、こうして抱きしめられる気分は決して悪くない。


「よかった……。生きてた……!」


 カイの声は震えていた。もしかしたら、泣いているのかもしれない。

 身を挺して私を庇ったカイを、怒ろうと思っていた。けれども、こんな反応をされてしまったら、何も言えなくなる。

 瞼に兜の突起が刺さって痛かったが、私はカイを抱き返し、耳元で囁く。


「私は生きている。だから、心配するな」


 背中を撫でるというよりは、拳でゴツゴツと鎧を叩くと表現したほうがいいのか。

 カイは次第に落ち着きを取り戻す。

 そして、目にも止まらぬ速さで私から離れた。


「――っ!! すみません!!」

「いや、構わないが」

「こ、このような愚行、許されるはずがありません」

「私が許すから、気にするな」


 カイは片膝を突き、頭を下げる。これでもかと、申し訳なさそうにしていた。


「私は先ほどのように、敬語ではなく、甘える様子を見せてくれたら嬉しいのだが」

「わ、忘れてください! ちょっと前まで、夢うつつだったんです」

「うーむ」


 先ほどのカイは幻だったのか。すっかり、いつものカイに戻ってしまった。


「あの、私、どうして無事なのですか? そもそも、ここはどこなのですか?」


 質問を捲し立てたあと、カイはメルヴ・イミテーションのほうを見る。

 注目が集まったからか、メルヴ・イミテーションは恥ずかしそうに頬に手を当てていた。


「お前にナイフが迫った瞬間、私はここに転移するよう願った」

「だから、私は無傷のまま倒れていたのですね」

「ああ、そうだ。そしてここは、世界樹の空間。さらに、そこにいるのは世界樹メルヴ・イミテーションだ」


 一気に濃い内容を話したからか、カイは黙り込んでしまう。

 首を傾げ、しばし何か考えるような素振りを見せてから、再度メルヴ・イミテーションのほうを確認していた。


「世界樹、ですか?」

『メルヴ・イミテーションダヨオ』


 メルヴ・イミテーションがカイに手を差し出す。カイはされるがままに握り返し、「カイ・フォン・ヴェルヒヘルトです」と自己紹介していた。

 

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