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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第五章 移動――大森林へ

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クズ王子は、友を得る

 世界樹の葉の代わりに何か返せたらいいと思ったが、現状、メルヴ・イミテーションに渡せる品などなかった。


「その、世界樹の葉と引き換えに、何か私もあげられたらよかったのだが」

『ダッタラ、オ友達ニ、ナッテ、クレル?』

「私と友達に、だと!?」

『ソウ』


 あまりにも純粋で、ほのぼのとした願いであった。もちろん、断る理由などない。


『ワーイ! アリガトネエ』


 友達になった印にと、メルヴ・イミテーションは木彫りの葉っぱブローチをどこからともなく取り出す。


『コレガアッタラ、イツデモココニ、転移デキルヨ!』

「なっ!?」


 あの大森林を通ることなく、直接やってこられるという、とんでもない品を私に託してくれるようだ。


「貴重な品なのではないのか?」

『オ友達ダカラ、イインダヨ~』


 メルヴ・イミテーションに差し出されたそれを、手のひらに受け取った。

 近くで見ると、なんとも歪な形の葉っぱであった。メルヴ・イミテーションの手作りだという。


『木ヲ削ッテ~、葉ッパノ汁ヲ、塗ッタンダヨ』

「よくできている。素朴な仕上がりだ」

『デショウ?』


 苦労して作ったのだろう。私に報告してくるメルヴ・イミテーションの表情は、清々しいものであった。


「これがあったら、いつでも遊びにこられるな」

『エヘヘ~。楽シミニ、シテイルネ!』


 胸に近づけると、ブローチは金具がなくとも密着した。何か魔法がかけられているのだろう。


「メルヴ・イミテーション、ありがとう。気に入った」

『ヨカッター!』


 小躍りして喜ぶメルヴ・イミテーションを愛らしく思い、抱きしめてしまった。嫌がられるかもと思ったが、枝のような細い手で抱き返してくれる。

 離れたあと、疑問に思っていることを投げかけてみた。


「ここは、国王と王太子である私しか入れない空間のようだが、何か理由があるのか?」

『ワカラナイ』


 どうやら結界は、メルヴ・イミテーションが施したものではないらしい。

 いったい誰が……というのは神のみぞ知ることなのだろう。


「ひとつ質問したいのだが。ここの空間に、私の親友であるカイを呼ぶことも可能だろうか?」

『ウン、イイヨー!』


 あっさり快諾してくれた。なんでも、私の親友はメルヴ・イミテーションの親友でもあるらしい。なんとも単純明快な理由であった。


「メルヴ・イミテーション、感謝する」

『コッチコソ、遊ビニ来テクレテ、アリガトウネエ』


 目的は世界樹の葉であったが、いつの間にか遊びに来たことになっていた。

 メルヴ・イミテーションと話していると、ささくれていた心が不思議と癒やされる。カイもきっと、心を許してくれるだろう。


 メルヴ・イミテーションがいる周囲に結界をかけて、保護しようとした術者の気持ちをなんとなく理解してしまった。


「では、メルヴ・イミテーションよ。また遊びに来る」

『ウン!!』


 メルヴ・イミテーションはぶんぶんと手を振り、見送ってくれた。

 皆のもとへ戻ると、ゴッガルドから熱烈な抱擁を受ける。


「クリストハルト君、よかったわ! 心配していたの!」

「たかが十五分程度だろう。大げさだな」

「え?」


 ゴッガルドが私から離れて、信じがたいという表情で見つめる。


「十五分? クリストハルト君の体感では、それくらいだったの?」

「そうだが、お前達は違うのか?」


 ゴッガルドは何も答えず、懐から取り出した懐中時計を差し出す。爪先で蓋を弾くと、時計の針はとんでもない数字を示していた。


「なっ……!? さ、三時間も経っていたのか?」

「ええ」


 驚いた。メルヴ・イミテーションがいた空間は大森林とは別次元だったようだ。

 ならばなぜ、崩壊した世界で大森林が燃やされたのと同時に、世界樹をも焼き尽くしてしまったのか。

 わからない。

 ただ、大森林は世界樹の魔力を受けて、植物が巨大化していたり、魔物が凶暴化したりしている。何かしら、互いに影響し合う仕組みがあるのだろう。

 ひとまず、メルヴ・イミテーションのもとへ行くときには、時間の経過に気を付ける必要がありそうだ。


 カイのほうを見ると、明らかに安堵した空気が伝わってくる。板金鎧で全身覆われているものの、カイの様子を見るだけで何を考えているのかわかるのだ。


「それはそうと、世界樹の葉が入手できたから戻ろう。早くても、五時間以上はかかるだろうから、のんびりしている暇は――」

「あるわよ」


 答えたのはドロテーアである。どういうことなのか、確認する暇もなく景色がガラリと変わった。着地したのは、聖獣が横たわる地下部屋。


「て、転移魔法か!?」

「ええ、そうよ」


 なんでもすぐに帰ってこられるように、転移魔法を展開していたらしい。

 私達が突然現れたので、聖獣の看病をしていたアウグスタや侍女らを驚かせてしまった。一度「すまない」と謝っておく。


「それはそうとドロテーア、お前、転移魔法が使えるのか!?」

「いいえ、使えないわ。これは魔法巻物スクロールを使ったのよ」


 ドロテーアが使ったように見えた転移魔法は、一瞬で魔法の展開ができる魔法巻物の効果だったようだ。魔法巻物というのはあらかじめ魔法の紙に魔法陣と呪文を描き、破った瞬間に効果が出る代物である。彼女自身が転移魔法を使えたわけではないようだ。


 ゴッガルドがパンパンと手を叩き、「お喋りはいいから、聖獣様の治療を行うわよ!」と叫ぶ。私は世界樹の葉をゴッガルドへと託した。


「これが、世界樹の葉なのね。思っていたよりも、大きいわ」


 メルヴ・イミテーションの頭上に一枚だけ生えていた大変貴重な葉だ。

 一瞬病気を患う王妃殿下の顔がよぎったものの、今は聖獣を治すのが先決だろう。

 ゴッガルドは世界樹の葉を巻物のようにくるくる丸め、聖獣の嘴へ突っ込んだ。

 すると――

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