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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第五章 移動――大森林へ

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クズ王子は、世界樹のもとへ辿り着く

 ドロテーアは先ほどの戦闘で、自分の攻撃魔法が役に立たなかったことを気にしていたようだ。あんなにも素材の回収に積極的だったのに、今は薬草にも目をくれずに歩いている。おまけに、魔物避けの魔法も展開してくれた。


「上級魔物には効果がないかもしれないけれど」

「いや、何もしないよりはいい」


 ドロテーアの魔法は効果を発揮したようで、先ほどから魔物が出現しない。ありがたい話である。

 一応、メテオ・スターは杖に込められた魔力が尽きるまで撃てるようだが、私の精神がもたないだろう。

 ゲイズとの戦闘後、誰もプリンセス・ラブリー・ロッドを使用した私について触れなかったので助かった。

 いじられていたら、その場で拗ねていただろう。大人の対応をしてくれたことに、心の底から感謝した。


 それから一時間ほど歩いたのか。急に、鳥のさえずりや風の音、木々が重なり合って鳴る葉音などが聞こえなくなる。


「これはいったい――?」


 急に前を歩いていたゴッガルドが立ち止まる。危うく筋肉の塊にぶつかりそうになった。


「おい、どうした?」

「ここから先は、たぶんクリストハルト君しか進めない場所みたい」

「なんだと?」


 この先に世界樹があるようだ。しかしながら、天を見上げても世界樹らしい特別な樹はないように思えるのだが。


「たぶんだけれど、国王陛下と王太子殿下であるあなたしか入れないように魔法がかけられているのだと思うわ」

「そうか」


 ならば、ひとりで進むしかない。カイを振り返ると、心配そうな空気を振りまいていた。兜で表情などわからないのに、不思議と感じ取ってしまう。


「ではカイ、行ってくる」

「どうかご無事で」

「ああ」


 意を決し、たったひとりで先へと進む。

 木漏れ日が差し込む静かな森の中を、不安を抱きつつ歩いて行く。

 光線のような太陽の光を浴び、一瞬目を眇めていたら突然景色が変わった。


「これは――!」


 森の中に、ぽっかり開けた場所に出てくる。やわらかな陽だまりの中、中心に切り株が置かれていた。その上に、マンドレイクのような大根に手足が生えたような生き物がちょこんと座っている。

 私の声に反応して、マンドレイクに似た生き物は振り返る。

 つぶらな瞳に、〝3〟みたいな口が特徴的だった。

 大きさは小型犬くらいで、魔物のような禍々しさはいっさい感じない。

 私を見つめ、小首を傾げていた。


「お前は、何者なんだ?」


 思わず、問いかけてしまう。すると、マンドレイクに似た生き物は質問に答えた。


『メルヴ・イミテーション、ダヨオ』

模倣イミテーション?」

『ソウダヨオ。ヨロシクネエ』


 木の枝のような手を上げたあと、ペコリと頭を下げた。

 敵意はまったく感じない。それどころか、若干歓迎しているような空気さえ感じる。つぶらな瞳が、キラキラと輝いて見えたのだ。


「私は、クリストハルト・ルードヴィヒ・アルベルト・フォン・リンデンと申す」

『クリス?』

「ああ、クリスでよい」


 改めて、互いにぺこりと会釈しあった。

 自己紹介が済み、かつ意思の疎通も取れそうなので、質問を投げかけてみる。


「私は、世界樹を探してやってきたのだが、この近くにあるのだろうか?」

『メルヴガ、世界樹ダヨオ』

「は?」

『世界樹!』


 メルヴ・イミテーションは胸を張り、誇らしげな様子で私を見つめる。

 この、友好的なマンドレイクに似た生き物が、世界樹だって?


「本当に、世界樹なのか?」

『ソウダヨオ。正確ニ言ッタラ、他ノ世界ノ世界樹ヲ、模倣シタ、存在ダヨオ』

「ああ、だからイミテーションと名乗っているわけか」

『ソウ!』


 本物の世界樹は、神が作った他の世界にあるらしい。メルヴ・イミテーションはそれを模倣して作られた存在であると。


「ずっとここに独りでいたのか?」

『ソウダヨ!』


 大森林の最深部で月から降り注がれる魔力を集め、世界へ供給させる。それが世界樹の役目だ。それを、誰とも話すことなく淡々と行っていたらしい。


「寂しくなかったのか?」

『ウーン、ヨクワカラナイケレド、クリスガ来テ、嬉シカッタカラ、寂シカッタノカモ!』

「そうか」


 遊びに来たい気持ちはあるものの、ここまでの道のりが壮絶である。できるならば、二度と大森林には足を踏み入れたくない。

 これくらいの障害がないと、世界樹を守れないのだろう。


『クリス、世界樹ニ、何カ用事?』

「ああ、そうだった」


 聖獣が弱っていることを打ち明けると、メルヴ・イミテーションは葉を分けてくれるという。


「いいのか?」

『ウン、イイヨオ』


 そう行って、頭上に生えた一枚しかない葉っぱを引き抜いた。


『ヨイショ……ット。ハイ、ドウゾ!』

「いや、世界樹の葉とは、お前の頭に生える、たった一枚だけの葉だったのだな」

『ソウダヨ!』


 私が葉を欲したので、メルヴ・イミテーションはマンドレイクには見えない、謎の生き物と化してしまった。

 ちなみに、生え替わるのは百年後らしい。

 申し訳ない気持ちがこみあげてきたが、聖獣の守護がなければ国が危機を迎える。世界樹だって、襲撃を受けてしまうのだ。


「メルヴ・イミテーション、感謝する」


 深々と頭を下げたあと、世界樹の葉を受け取った。

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