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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第五章 移動――大森林へ

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クズ王子は、地下通路を進んでいく

 驚くべきことに、地下通路は草で覆われていた。壁や天井にも蔓が這っていて、非常に不思議な空間となっている。


「なぜ、噴水の下がこのような状態に?」


 その疑問に、ドロテーアが答える。


「大森林の植物が流れ込んだのだと思うわ。あそこの植物は世界樹が貯め込んだ魔力の影響で、やたらと勢いがあるのよ」

「なるほどな」


 念のため、地下へと繋がる出入り口には大森林の植物が出て行かないよう魔法がかけられているという。そういう魔法も、国家専属魔女の仕事だったようだ。


 話ながら歩いていたら、カイに注意されてしまった。


「クリストハルト殿下、足元の草が若干の水分を含んでいますので、注意してくださいね」

「わかった」


 背後を歩くカイを振り返る。今世では初めて見る、漆黒の板金鎧姿であった。

 この姿だと、辛い記憶ばかり甦る。きっと、私の影のように生きるために黒を選んだのだろう。


「カイ、全身鎧を装備して、辛くないか?」

「いいえ、力は普段から有り余っていますので、まったく問題ありません」

「そうか。無理はするなよ。辛かったら言ってくれ」

「もったいないお言葉……いいえ。お心遣いに、深く感謝します」


 自分を下げるような言動が多かったカイだったが、ここ最近は私の言葉も素直に聞き入れてくれているような気がする。

 終わってしまった世界の私は信じがたいほど勝手だった。カイの人生をなんとも思わず、常に傍に侍らせていたのだ。

 今後はカイがしたいことを聞き出して、願望を叶えたいと思う。

 もしも護衛を辞めたいと言われたときは……ショックだが受け入れるほかない。カイはこれまで十分尽くしてくれた。今まで以上に私のために頑張る必要などない。


 と、カイと話しているうちに大きな扉の前に辿り着く。

 石造りの扉には呪文がびっしりと彫られており、その緻密ちみつさに驚くばかりであった。

 扉の隙間から、植物が侵入しているのが見てわかる。ここから地下通路へ広がっていったのだろう。


「すさまじい生命力だな。太陽の光がなくとも、ここでこのように成長するとは。魔女ドロテーアよ、これも大森林の植物だからなのか?」

「ええ、そう。地上の植物は太陽光を浴びて成長するけれど、大森林の植物は魔力を吸収して成長するの」

「なるほど」


 扉の向こうは魔物と遭遇する可能性が高い。ドロテーアは警戒を怠らないようにと注意する。


「あたしも、杖を持っていたほうがいいわね」


 ゴッガルドはそう言って白衣と背中の間に手を差し入れる。出した手には、鋭い突起がいくつも突き出した鉄球が付いた武器――モーニングスターを握っていた。


「なっ!? そ、それは杖ではない!!」

「あたしはこれを杖として使っているのよ」

「打撃系の槌ではないか!」

「攻撃にも使えることはたしかね」


 ゴッガルドは軽く素振りをしていたが、ブオン! ブオン! と杖ならば鳴らないはずの音を響き渡らせていた。


「あたしもね、魔法学校の保健医になる前は普通の杖を使っていたのよ。でも、生徒の相手をしていると、言うことを聞かない子がいてね……」

「そのモーニングスターで反抗的な生徒をぶっていたのか?」

「まさか! 暴力で言うことを聞かせるなんて、時代遅れもいいところよ」


 だったらモーニングスターをどのように使っていたのか。聞きたいような、聞きたくないような。ゴッガルドは勝手に話を続ける。


「みんなの前で、モーニングスターを使って素振りをしていたの。それだけで、言うことを聞いてくれるようになったわ」

「やはり、暴力的な解決ではないか!」

「暴力はふるっていないわ。まあ、力は誇示してしまったのかもしれないけれど」


 しかしまあ、これだけ筋骨隆々な男の言うことを聞かない生徒がいたとは。怖いもの知らずである。


「でも、ちょっと素振りしすぎちゃって、生徒から怖がられてしまったのよね。だから、女性的なやわらかさを取り入れるようになったのよ」

「極端な奴め……。それはそうとお前、生まれたときからそうではなかったのか?」

「いいえ。保健医になったのは十八のときで、それから二年後だったかしら。そう、今から十一年前よ。その時くらいに、クリストハルト君と初めて会ったのよね」 

「そういうわけだったのだな」


 ドロテーアに聞いてみても、神学校時代はごくごく普通の明るい男だったという。

 てっきり、生まれたときから今の状態だと、思い込んでいたが間違いだったらしい。


「武器もモーニングスターではなくて、こちらにしようかと思っていたの」


 再び、背中から杖状の何かが取り出される。

 それは先端がハートになった、持ち手が赤く、宝石などがちりばめられた派手な杖であった。


「〝プリンセス・ラブリー・ロッド〟っていうんだけれど、これを握っていたら校長先生から、〝別の意味で怖いからモーニングスターのほうにしてくれ〟って言われたのよね」

「たしかに怖すぎる」


 聖女マナのような少女が手にしていたらよく似合う杖だが、ゴッガルドのように無骨で荒々しい男が持ったら変質者か何かだと思ってしまう。


「これ、稀少レアな杖なのよ。攻撃魔法が付与されているの」

「なんだと!?」


 攻撃魔法が付与されているということは、長ったらしい詠唱などなく展開できるという意味である。


「たしか、〝メテオ・スター〟っていう、石つぶてを魔物に飛ばす上位魔法だったかしら?」

「上位魔法が付与されているだと!?」


 攻撃魔法が付与されているだけでも珍しいのに、さらに上位魔法が使えるようになると。

 回復魔法以外適性なしだったので、喉から手が出るほど欲しい杖だ。


「そうだわ! これ、クリストハルト君に貸してあげましょうか?」

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