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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第三章 危機――原因はなんなのか

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24/90

クズ王子は、真実を語る

 私もカイも、夕食を食べていなかった。寮の召使いに軽食を用意してもらうよう頼む。

 食堂は夕方三時間しか空いていない。以降は、個人個人に軽食が提供される。

 食べ盛りの男子生徒の中には、夕食のあと軽食も食べる者もいるらしい。

 私はどちらかと言えば小食なので、きちんと食べていたらおかしな時間に腹が空くことはないのだ。


 十五分後、部屋に運ばれてきた。

 パンに肉団子と野菜が挟まったものに、ニンジンのポタージュ、揚げたジャガイモにチーズがかけられたもの、 茹でたソーセージ、以上。

 どこが軽食なのかと言いたくなるようなボリュームだ。特に、揚げたジャガイモに溶かしたチーズをかけたものは意味がわからない。きちんと栄養価を考えて作っているのか、問い合わせをしたくなる。なんでも男子生徒に人気らしい。私には到底理解できない食べ物だったが、しぶしぶ食べて見たらとんでもなくおいしいのだ。国王陛下の前では絶対に好んでいるとは口にできないような、ジャンクな一品である。

 私室にある円卓にカイの分と並べ、ふたりで食べ始めた。

 会話はなかったものの、不思議と居心地がいい。

 珍しく腹が減っていたようで、軽食とは思えないラインナップをペロリと食べてしまった。


 カイが淹れてくれたミルクたっぷりの紅茶を飲み、ひと息つく。


 話があるのは私のほうだったが、なぜか先にカイのほうから話しかけてくる。


「クリストハルト殿下、少しだけ、お話ししてもよろしいでしょうか?」

「ああ、構わない」


 まっすぐ私を見つめるカイの表情は、とても辛そうだった。言いたくても言えないことを伝えようとしているのか。

 無理はしないでほしいが、カイの決意を揺るがすことを口にしてはならないだろう。


「私はクリストハルト殿下に、出会ったときから内緒にしていたことがあります」


 カイの隠し事、それは性別に関することだろう。

 これまでの終わってしまった世界で、カイが打ち明けた覚えは一度もない。私はずっと、カイが男の中の男であると信じて疑わなかったのだ。

 カイが女性だと知り、態度に出るのではないか。そんな不安もあったものの、今日までなんとか知らぬ振りを決め込んできた。

 今後は、どうなるかわからない。

 たぶん、カイが女性であると告げられても、これまでと変わらないように付き合っていく自信だけはある。


「私は、父であるモンペリアル伯爵と、伯爵夫人の間に生まれた子どもではありません。兄達とは、腹違いなんです」


 腹違い――つまりカイは、モンペリアル伯爵と愛人の間に生まれた子ども、ということになる。それに関しては、知らなかった。


「生まれた時から私は、他の子どもよりも身体が大きく、力も強い。そのため、扱いに困っていたそうです」


 同じ年頃の子どもと遊ぶとケガをさせるので、ひとりでいるようにと命じられていた、なんて話は幼少期に耳にしていた。


 規格外の身体の大きさとありあまる力を隠すために、性別を偽っていたのかもしれない。


「大変申し訳ないのですが、まだ、クリストハルト殿下にお話しする勇気がないのです。きっと話してしまったら、二度と一緒にいられなくなるので……。本当に申し訳ありません」


 護衛騎士は常に傍にいなければならない。そのため、異性から選ばれることはない。

 騎士だけでなく、召使いや侍従、近侍に秘書と、周囲にいる者はもれなく全員男だ。

 カイだけ特別扱いはできないだろう。


「わかった。話すのは今でなくてもいい。いつか、打ち明けてくれ」

「はい」


 カイの話は以上だという。

 ひとまず彼女との関係はこのまま続きそうで、ホッと胸をなで下ろした。

 今度は私の番である。


「神獣ラクーンよ」

『ひゃい!!』


 カイが残した揚げジャガイモを食べおえた神獣ラクーンに声をかける。なぜ、いつもそのように食いしん坊かつ挙動不審なのか。

 まあ、いい。


「これから、カイにすべての事情を説明するつもりだ。念のため、先に言っておく」

『ええ。ご判断は、クリストハルト様にお任せします』


 カイは緊張の面持ちでいる。私がこれまで以上に、真剣な様子だからだろう。


「これを話すのは、おそらくお前だけだ」

「他の方は?」

「きっと信じない」


 カイもわからない。けれども、私が告げる突拍子もない話を信じてくれそうなのは、カイひとりしかいないように思えた。


「まず、紹介しよう。これは私の使い魔ではなく、神に仕えし神獣だ」

「神獣様、ですか?」

「そうだ」


 神獣ラクーンはカイに対し、後頭部を掻きながらペコペコ会釈している。神獣としての威厳は欠片も感じない様子である。


「言葉が交わせる使い魔だということで、妖精の中でも高位的な存在だと思っていました。まさか、神獣様だったとは……!」


 驚くのも無理はないだろう。聖女マナの傍にいたときは、もっとこう、厳かな空気を発していた。神獣ラクーン曰く、空腹で意識がおぼろげな状態だったらしい。

 いや、神獣ラクーンについてはどうでもいい。本題へと移る。


「ある日、眠る私のもとに、この神獣ラクーンがやってきて、過去の記憶を甦らせたのだ」


 過去の記憶というのは、滅びてしまった世界のもの。私は死んでは神に世界ごと再生させられ、王太子として受けた人生を歩んでいた。


「あまりにも世界が滅びるものだから、神は死した私の記憶を甦らせ、世界を存続させるよう命じてきたのだ」


 カイは目を丸くして、私の話を聞いている。疑っている様子はなかった。


「滅びた世界の私は、とてつもなく悪辣で、色恋にめっぽう弱く、自分勝手だった」


 婚約者がいる身でありながら――男爵令嬢ルイーズの色仕掛けにはまり、聖女マナの求愛をはね除けず、挙げ句アウグスタを婚約破棄した。


「死んだ記憶は、四つほどだ」

「わ、私が傍にいたのですよね?」

「いた」

「私は、クリストハルト殿下を守れなかったのですね」

「いいや、すべてお前は悪くなかった」


 カイは顔面蒼白となっていた。護衛する対象が何度も死んでいたと聞かされて、ショックを受けているのだろう。


「一度目は、アウグスタに婚約破棄と国外追放を言い渡したあと、国を守る結界が消失し、国中が魔物に攻め入られた。その責任を取って、絞首刑となった」

「な、なぜ、アウグスタに対して、そのようなことを……?」

「その当時の私は、ルイーズ男爵令嬢を盲目的に愛し、アウグスタを邪魔だと判断して遠ざけたのだ」

「クリストハルト殿下がそんなことをなさるはずはありません」

「しかし、事実なのだ」


 神獣ラクーンは何か薬を盛られたのではないかと話していた。けれども証拠はない。私がルイーズを選び、アウグスタを婚約破棄と国外追放させた世界は確かにあったのだ。


「二度目は、聖女マナが介入した世界だった。私は同じようにアウグスタに婚約破棄を言い渡し――彼女に思いを寄せていたブレス侯爵に殺された」

「そのとき、私はどうしていたのですか?」

「すでに死んでいた。そのときは、襲いくる邪竜から私を庇って……」

「そ、そんな!」


 どの人生でも、カイは自らの命を省みず、私のために戦って、庇って、散っていった。


「三回目は多くの愛人を傍に置いていたために、嫉妬に駆られたルイーズに毒を盛られ、四回目は妻達の持参金を横領して打ち首。情けない話ばかりだ」

「どの瞬間にも、私はすでにいなかったのですね」 

「ああ」


 邪竜に襲われ、底なし沼に呑み込まれ、そして――。


「亜人の襲撃を受け、亡くなったときもあった」

「その亜人というのは、もしや、オーガでしたか?」


 オーガについて話すつもりはなかったが、カイは言い当ててしまった。

 顔色を悪くするだけでなく、額に大粒の汗を掻いている。


「カイ、もうこの話は止めよう」

「いいえ。聞かせてください。私がオーガの襲撃を受け、どのように死んでいったかを」 

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