調査結果報告とレジェク殿下の立場 ~マリアSide~
オリビアたちと別れて一人で城内を歩いていると、そこかしこにビシエラ山の岩肌が見えていて、ここは山を削りながら建てられた城なんだなと実感する。
ふと目の前にある大きな柱に手を添えてみた。
やっぱり……この柱は人が造ったものだから、触っていてもビシエラ山のエネルギーは感じない。
それならばと、城内にちらほら見える岩肌のような部分に両手を添えてみた。
するとビシエラ山の物凄いエネルギーが襲ってきて、途端に冷や汗でいっぱいになり、膝をついてしまうのだった。
「はぁ……ッ、はぁ…………何よ、このエネルギー量は……こんなのいつ噴火するか時間の問題じゃない……!」
もはやあまり時間が残されていない気がする。
私は危機感から、すぐにでもエネルギーを散らせなくてはと思い、立ち上がって岩肌に手を添えたのだった。
誰が見ているかも分からないけれど、緊急事態だから仕方ない。
『…………このままじゃ苦しいよね。私が力を散らしてあげるから』
いつものように聖力を高めていくと体が光り始め、山に語りかけながら自分の聖力を山に注ぎ込んでいく。
エネルギーが溜まりに溜まって苦しくなると、噴火という形で暴発してしまうから……エネルギーを聖力で包み込み、霧散させてしまいたい。
雨雲を呼び寄せる時も物凄いエネルギーを使ったけれど、大きな活火山のエネルギーを包み込むのも膨大なエネルギーを消費する。
でもあの頃より聖力も増しいているし、今の私なら大丈夫……私が力を注ぎ込んでいる最中も微動が発生し、まるでビシエラ山がこのエネルギー過多に苦しんでいるように感じてしまう。
『もう少しだからね』
――――ゴゴゴゴゴゴゴォォォ…………――――
徐々に微動がおさまっていき、私の聖力で山全体のエネルギーを全て包み込むと、すっかり微動がしなくなった。
「よし、上手くいったわ。この力をどうしようかな~~全部散らしてしまった方がいいんだろうけど、いっぺんには無理ね」
少しその場で考えて、いい事を思いついてしまう。
そうだ、そうしよう。
私はウキウキと岩肌に手を添えると、また聖力を使い始めた。
体全体が光り出す――――この時の私は、自分が天才的な閃きをした事に浮かれていたので、自分の行動を誰かに見られているかもしれない事をすっかり失念していたのだった。
~・~・~・~・~
ビシエラ山で聖力を大量に使った私は、くたくただったので部屋で少し休んでいると、気付いたら夕方になっていた。
もうオリビアたちが帰ってきているかもしれないと彼女の部屋を訪ねると、ちょうど帰ってきたところで皆が部屋に集まっていた。
「マリア、ただいま!」
「オリビア!おかえりなさい!帰ってきていて良かった~~ちょうど話したい事があったの。ビシエラ山の事で」
「何か分かったのか?」
私がオリビアと話しているところに、ヴィルが興味深々で間に入ってくる。
「何よ~~私が聖女として優秀だって、認めてくれるなら話してもいいわよ」
「なんだそれは……別に、もともと優秀だとは思っている」
「え、そうなの?!」
あまりに素直な言葉に、つい驚いて大きな声が出てしまう。
王太子って素直に生きられない生き物なのかな。
そういえばレジェク殿下も王太子だけど、腕相撲大会の時に怪我をしたみたいだから聖力を使って治癒してあげた時に、そんな感じだったなとあの時を回想する。
私がレジェク殿下のもとへ駆けて行くと、腕をサッと隠すので、私はハッキリと怪我について伝える。
「今の試合で怪我したでしょう?治すから腕を見せてちょうだい」
「な、なんの事やら……」
「はいはい、ちょっと失礼」
「なっ……!」
私が半ば強引に腕を引き、裾をめくると、案の定手首付近が赤くなってきていた。
「痛い?」
「い……っ、たくはありません……!」
幹部を少し強く押すと、殿下は痛いはずなのに痛くないと強がる。
痛い時は痛いって言えばいいのに。
「オリビアにいいところを見せたかったんだろうけど、あんな屈強なメンバー相手に危険よ」
「あなたに言われる筋合いは――――」
私はレジェク殿下の話を遮るように聖力を使い、腕を治療してあげるとみるみる赤みは消え、綺麗な状態に戻っていく。
「そんな事をしなくても、オリビアはちゃんとその人自身を見てくれるわよ。ありのままの殿下を見せればいいじゃない」
「ありのまま……」
「はい、治療終わり!」
きれいさっぱり治った自身の腕を見て、殿下は酷く感動している様子だった。
「本当に治りましたね……感謝いたします、聖女様」
「どういたしまして!そうやって素直に言える方がいいと思う。あと、私の事はマリアでいいので」
「マリア……ありがとうございます」
物凄く照れながらお礼を言っていたっけ。
人間、素直が一番よね!
そんな事を思い出しながら、ビシエラ山を見てきた感じと私の聖力で山のエネルギーを包み、少し散らせたのでしばらくは大丈夫だろうと皆に伝えたのだった。
「ありがとう、マリア!凄いわ!」
「ああ、さすがだな」
皆が喜んでくれて、今日一日の頑張りが報われた気分。
でも私は今日の事を全て話したわけではなくて、特にオリビアやソフィアたちにはいたずらに心配をかけるだけなので、ヴィルにだけビシエラ山の様子を伝える事にした。
「じゃあ、私は部屋に戻るね。ヴィルは私を送るべし」
「なっ、なぜ私が……!」
「ちょっと――か弱い女子を一人で歩かせるわけ?血も涙もないんだから!」
反論しようとするヴィルに腕を引きながら、こっそり”話がある”と伝えると、やはり優秀な王太子なのか察してくれて、渋々ついてきてくれたのだった。
――――パタンッ――――
扉が閉まる音と共に廊下に出て誰もいないのを確認し、さっそくヴィルにビシエラ山について話し始める。
「さっきは全部伝えなかったけど、ビシエラ山のエネルギーを全て散らせたわけじゃないから、危険な事には変わりないの。物凄い量のエネルギーだったから、本当に一部分だけ……多分私たちが滞在している間は問題ないとは思うけど」
「そうか……それはこの国の人にも伝えるのか?」
「うーん、でもきっと伝えても信じないわよね。レジェク殿下には伝えたいんだけど、あそこまで神の鼓動だと信じてるからなぁ。本当は火山のエネルギーが地中で動いてるだけなんだけど……それも回数が増してきたら危ないのにうっとりしてるくらいだし」
「何の話です?!」
私がビシエラ山の話に夢中になっていると、すぐそばにレジェク殿下が立っていたのだった。
全然気付かずに話していたわ……今の話、聞かれていた……よね?
「ビシエラ山が何だと言うのです」
「あ、いや、その…………」
私がまごまごしていると、ヴィルが何の躊躇もなく伝えてしまう。
「マリアが調べてくれたところによると、ビシエラ山はいつ噴火してもおかしくない状態らしいです。速やかに国として対策を練る事をお勧めしますが」
「……それは本当なのですか?マリア」
うっ…………そんな捨てられた子犬みないた目を向けないでほしい。
でもこれは国家としての一大事に繋がるのだから、伝えないわけにはいかないわよね。
「うん、本当なの。今日一日、調査してみて……私の聖力で少しは緩和出来たとは思うけど。この地震のような微動は神の鼓動ではなくて、ビシエラ山に溜まったエネルギーが動いているだけ。このまま神の鼓動で放っておいては民が――――」
「もし、あなたの言う事が本当だとして、どうしろと言うのです?!この国ではずっと、そう信じられていたものを……どう説明するのです。聖女がそう言ったからと言えば皆が信じるとでも?」
「それは……」
殿下があまりにも苦しそうに言うので、どう言えばいいのか言葉が見つからない。
私が言えば解決するような問題じゃないんだよね……私はこの国の人間でもないし、結局噴火が起きなければむしろ国を混乱させた聖女とされてしまう可能性も出てくる。
「レジェク殿下、マリアはこの国を心配して伝えただけだ。王族としてどうしていくかを決めるのはあなた方だ」
「言われなくとも考えます。あなた方にはこれ以上、我が国の事に口を出さないでいただきたいですね。失礼!」
殿下はそれだけ言い残して去っていってしまった。
もっとちゃんと伝えたかったんだけど、余計に混乱させてしまったのかもしれない、という気持ちでいっぱいになる。
「我々の出来る事は限られている、何かあれば彼らが対応するしかない」
落ち込む私にヴィルがそう言ってくれて、自分を納得させるしかなかった。
とにかく危険な状態である事は伝えたし、自分の出来る事をやるしかないのよね。
私はそのまま自室へと戻ったけれど、この時の廊下でのやり取りがオリビアたちに筒抜けだった事は、帰り際に知らされる事になるのだった。
~・~・~・~・~
次からオリビア視点に戻ります!突然の水遊びにお出かけ編です^^
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オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。
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