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部屋でのあれそれと神の鼓動


 「ただいま!」


 

 私が意気揚々と扉を開くと、部屋の中にはマリアやイザベル、マリーにソフィアなど皆が各々くつろぎながらゆっくり過ごしていた。


 ソフィアの近くにはラスがいて、どうやらソフィアの遊び相手をしてくれていたように見える。



 ソフィアが私の姿を見て顔を輝かせた後、窓際にあるテーブルセットの椅子からおりてこちらに走ってきた。


 走り方がまた可愛いのなんの…………一緒に来て良かった。



 あんな国王夫妻と会った後だから、なおさら癒される気持ちだわ。



 

 「オリビア様、おかえりなさい!」


 「ただいま、ソフィア!ラスと遊んでいたの?」



 ソフィアを抱き上げながら帰りの挨拶を交わす。


 お肌がモチモチね……小さな子供の肌って、本当にきめ細かくてお餅よりモチモチしてるわね。



 「うん。一緒にカードで遊んでくれたの」


 「カードで?それは楽しそうね!」

 

 「オリビア様、彼女はルールの飲み込みも早いですし天才ですね!」



 ラスが満面の笑顔でソフィアを褒めてくれるのを見て、私にはこの部屋に天使が2人いたのか、と勘違いしてしまいそうになる。



 「そうなのよ、ソフィアって天才なの。それにしても、あそこで撃沈しているのは……」


 「あ、マリア様です……」



 ラスが言いにくそうに教えてくれる。マリアも一緒にカードゲームをしていたらしく、一度も勝てなくて撃沈しているらしい。



 「そ、それはご愁傷さまね」


 「ご……?」


 「あ、残念ねってこと!」



 つい日本での言葉が出てきてしまいそうになるから、気を付けなければ。


 ラスが不思議に思って聞き返してきたけれど、何とか笑ってやり過ごしたのだった。そこへヴィルが突然私とラスの間に入ってくる。



 「ラス、なぜこの部屋に君がいる?今は通訳は必要ないはずだ」


 「宰相様にいつ呼ばれてもいいように待機していなさいと言われておりますので」


 「部屋の中にいる必要はない」


 「ちょ、ちょっとヴィル。ソフィアの相手もしてくれていたんだから……」



 ヴィルとラスを交互に見ながら、様子のおかしいヴィルをジッと見つめた。


 ここに来てからラスをとても警戒しているのには気付いていたけれど……何の理由もなしにこんな態度を取るとも思えないし、ひとまずそれ以上は言わない事にしておこう。



 ラスの方はヴィルに何を言われてもどこ吹く風と言った表情で、相変わらずニコニコしている。


 我が国の王太子に凄まれても動じないって……それだけでも只者ではない感じもするけども。



 「ふふっ、王太子殿下。若い男の子に嫉妬しないでくださいね~」


 「私だってまだ若い!!」



 ラスにそう言われてヴィルは顔が真っ赤になっていた。


 これは何の戦いが始まっているのかしら。心配して損をしたような気がするわ。


 ラスとヴィルが終わりなき戦いが繰り広げているところへ、マリアがフラフラとやってきて、私に泣きついてくる。



 「オリビア…………私って、小さい子にもカードゲームで勝てないの……」


 「そ、そうなの。残念だったわね」

 


 本当に一度も勝てなかったのね。相当ショックを受けている様子が可哀想になり、マリアの頭を撫でてあげた時だった。


 ふいに扉がノックされ、ゆっくりと開いていくと、そこにはレジェク殿下が一人で立っていて、「やあ、皆さん。寛いでいるところ失礼いたします」と笑顔を張り付けて挨拶をしてきたのだった。



 「先ほど父上と母上に挨拶をされたとか」


 「ええ、つい先ほどでしたけど。国王陛下は健康を気にしていらっしゃいましたので、差し出がましいと思いながらもご教授させていただきましたの」


 

 私がそう告げると、レジェク殿下は目を丸くし、大きな声で笑い出す。


 

 「ふ、ふふっ、アハハッ!父上に健康を?フフフッ、あなたは本当に面白いお方だ」



 そんなに笑うような事をしたかしら……すると私に泣きついていたマリアが体を起こし、笑っているレジェク殿下をまじまじと見つめている。



 「あなたって、笑う事もあるのねぇ。蛇のようにねちっこく見えたんだけど」


 「し、失礼な方ですね……!そういうあなたは何なのです?!」


 「ふふん、驚かないでよ。私は……むがッ」



 私は自身の正体を明かそうとするマリアの口を咄嗟に塞いだ。



 (ダメよ……!神の信仰が深い国で聖女なんて言ってしまったら危険よ!)


 

 彼女の耳元でそう囁くと、私の言葉に納得したのか頷いたのでホッと胸を撫でおろし、彼女を解放したのだった。



 「彼女はマリアって言うの。私の従妹なのよ。ね!」



 私の提案に首を縦にブンブンと振り、話を合わせてくれたので、何とかレジェク殿下も納得したようで話題を変えてくる。



 「まぁいいでしょう。私がここに来たのは、皆様に温泉に入らないかと勧めに来たのです」

 

 「この国にも温泉があるの?!」

 

 「はい、知っての通り、我が国には火の神が宿っているビシエラ山があります。この山の恩恵により温かい湯が湧き出ているのです。とても気持ち良く疲れも取れるかと……」


 「火山性温泉ね。それは疲れも取れそうだし、お肌にも良さそう!」



 私の言葉に女性陣からは喜びの声があがる。


 そんな話をしている最中に、城が微かに揺れ始めた。本当に微かな揺れだけれど、地鳴りのような振動にソフィアが私の服をギュッと握る。



 「この揺れは?」


 「これはいつもの事ですよ。火の神ゴンドゥーラの鼓動です。我々ドルレアンの民はいつも神と共に在ると感じる事が出来る。そして我が城は一番近くで神の鼓動を感じられるので、とても幸せな事なのです」



 レジェク殿下がうっとりとしながら祈りを捧げる姿を見て、この国の信仰心が非常に厚い事がヒシヒシと伝わってくる。


 だからお城が山の麓に建てられているのね。



 王族が一番神に近い場所に在る為に……でもこの揺れって、神というか普通に山によるものよね?



 神が宿っているものだと信じられているから、この揺れすらも神の鼓動だと思われているとは……だからと言って、私がそんな事を言おうものなら「神を冒涜するのですか?」と激昂されそうなので黙っておく事にしよう。


 

 ひとまずうっとりとしているレジェク殿下をスルーしながら、私たちは意気揚々と温泉へ行く事にしたのだった。



 

こちらWeb版になります!


もし続きが気になったり、気に入って下されば、ブクマ、★応援、いいねなど頂けましたら励みになります(*´ω`*)

皆さまのお目に留まる機会が増えれば嬉しいです^^


オリビアとヴィルヘルムや登場キャラクターが成長していく姿をじっくり書いていきたいと思っております。

彼らが歩む道を見守っていただければ幸いです。

何卒宜しくお願い致します<(_ _)>

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