47:重装令嬢と呪われた王子の決断(+おまけ小話)
新たに戦略を立てるのではなく、元々たてられていたオルドの計画に魔女二人と魔女殺しを加える……というのが、オルドが出した提案であった。そして提案とは言いつつ彼の口調は断定的で、頑なに譲るまいとする姿勢が窺える。
指揮を取るのはオルドであり、魔女も魔女殺しも、そして第一王子であるアレクシスでさえも客将扱いというわけだ。たとえ魔女を味方にしようが変わらぬ業の深さに、モアネットは肩を竦めて素直に頷くことにした。
オルドからしてみれば、今回の一件はあくまで王族ラウドル家の王位争い。そこに魔女と魔女殺しが割り込んできたにすぎないのだろう。
それは分かる。かといって、全てオルドに任せるわけにはいかない。
なにせ現王のそばにはローデルが居り、彼の隣にはエミリアがいるのだ。
迂闊に近付けばオルドといえど魔女の魔術に当てられるだろう。彼は現王もローデルも引きずり下ろそうとしている、つまりエミリアの『キラキラしたお姫様』の地位をも揺るがそうとしているのだ。彼女の魔術がオルドに牙をむかないわけがない。
それに警戒すべきは魔女の魔術だけではない。
一国の玉座だけありそこを守る警備は国中で最も手厚く、何かあればすぐさま騎士が剣を抜く。とりわけオルドは幾度と王の寝首を掻こうとした前科がある――それも山のようにある――。彼の姿を見ただけで王宮中が警戒態勢を取るだろう。
そうオルドが地図と王宮内の見取り図を見比べながら話せば、パーシヴァルが落ち着き払った声で「騎士の動きなら……」と話しだした。
「騎士の動きなら把握しています。緊急時に取るべき行動も、配置も、全て」
パーシヴァルは元々国を守る騎士だった。
ゆえに緊急時の、それこそたとえば『国を乗っ取ろうとする反逆者』が攻め込んできた時の取るべき行動も全て頭に叩き込まれている。きっといざという時のためにと数えきれぬ程の訓練を重ね、己が剣となり盾となり国を守ろうと仲間と話し合ったことだろう。
有事の際にどう情報が伝達されるのか、どれだけの人数がどこに配置されるのか、王や王子を守るために騎士がどう動くのか……。
パーシヴァルはそれら全てを把握しており、そして全てをオルドに話すつもりなのだろう。
それはつまり、国に対しての、そしてかつて仲間であった騎士達への裏切り行為だ。
王宮内の見取り図を指示しながら話すパーシヴァルに、モアネットはジッと彼を見上げて……一度だけ彼の服の袖を引っ張った。
碧色の瞳が丸くなり、次いでこちらを向く。だがその瞳に対してモアネットは何と言っていいのか分からず、彼の視線が自分に向けられるのと入れ替わるように地図へと視線をやった。
「モアネット嬢?」
「……別に、なんでもありません。話を続けてください」
「そうか、それなら良いんだが……。心配してくれてありがとうな、俺は大丈夫だ」
「だから別になんでもありません。パーシヴァルさんの袖に虫がついてたから取ってあげただけです」
「それなら捕まえた虫はロバートソンにあげてくれ」
「彼は自ら狩った獲物しか口にしない生粋の狩蜘蛛です」
「たくましい」
この場の空気に似合わぬ会話にパーシヴァルが一度小さく笑い、そうして再び王宮内の見取り図へと視線を向けた。
その表情には国を裏切ることへの罪悪感も、そして仲間を裏切ることの後悔もない。決意だけが碧色の瞳に宿っており、それを見てモアネットが杞憂だったかと兜の中で小さく息を吐いた。
彼もまた決意をしたのだ。いや、アレクシスを王宮から連れだした時から既に決意していたのだから、誰より先になるかもしれない。少なくとも、自分よりは……。
そこまで考えモアネットがはたと顔を上げた。ジーナが考えこむように見取図に視線をやり、そしてオルドに彼が抱える戦力について訪ねている。
「エミリアの魔術は私とモアネットが弾くけど、広範囲に広がられると難しいわ。極力バラけないように、出来るだけ少人数に押さえた方が良いわね」
どこか一箇所から全員でお邪魔しましょう、そう告げてジーナが抱きかかえていたコンチェッタを撫でる。その際に「もてなしは今回も期待できそうにないわね」という言葉はなんとも場違いではないか。
だがジーナの言う通り、大人数で攻め込んでも魔術を弾けなければ意味がない。それどころか、モアネットやジーナから離れすぎたせいでオルドの部下さえもエミリアの魔術に当てられ寝返り……なんてこともあり得るのだ。
だからこそ、魔術を弾くために魔女の近くにいる必要がある。となれば、行動は制限される。t
「だがあまり固まってるといざって時に逃げられる可能性がある。王宮には逃げ道が…それこそ臣下にもそれどころか俺さえも知らない逃げ道があるからな」
「逃げ道なら、僕も父さんから教わってる。少なくとも十はある……いや、多分その倍はあるはずだ」
王宮に設けられた逃げ道はいざという時の為のものであり、ゆえに現王は息子であるアレクシスにさえも全ては教えていないという。良き王子であり良き息子であった彼の反乱さえも視野に入れ、そして今際の際にでも全て教えるつもりだったのだろう。
かといって現王が猜疑心に駆られているわけでもなく、アレクシスが反乱の気配を漂わせたわけでもない。これがラウドル家の、そして一国を統べる王族の考え方なのだ。
「有事の際に備えて身内すら疑えってことだ。多分、ローデルもアレクシスとは違う『逃げ道』を教わってるだろうな」
「うん。だから、何かあればローデルは僕の知らない道から逃げるはず」
どこにあるかさえ分からない逃げ道、となればこちらは王宮を囲むしかない。
だがそうすれば必然的にモアネットやジーナと距離の出る者達が現れ、仮にそちらにエミリアが現れたら……。
それを危惧しているのだろう、オルドが溜息混じりに「厄介なもんだ」と呟いた。王宮内は数多の逃げ道があり、それでいて取り囲むことはできない。無理に数で押そうものなら逆に魔術に絡め取られる。これほど厄介な話があるだろうか。
「それに、出来れば生きたまま捕らえたい」
「おじさん?」
「言っておくが、もちろん情なんて甘ったるいもんじゃないからな。だが出来ることなら全員殺さずに捕らえたい。そっちの方が俺には都合が良いんだ。……ただ」
言いかけ、チラとオルドが見取図から視線を上げた。
次いで彼の深い茶色の瞳が向かうのはモアネットとアレクシス。
「兄貴は勿論だが、ローデルもエミリアも生きて捕らえておきたい。そうなった場合、お前達はどうする?」
あまりに直球すぎるオルドらしい問いかけに、モアネットが兜の中で小さく息を飲んだ。
事前に「情なんて甘ったるいものじゃない」とあえて己の意思表示をするあたり、彼はモアネットとアレクシスが土壇場で家族への情に負けるかもしれないと危惧しているのだろう。
モアネットは魔女だ、いざとなればオルドを押しのけてエミリアを庇うことが出来る。アレクシス自体は魔術も使えず戦力も無いが、彼の背後にはジーナとパーヴァルが控えている。
『やっぱり家族に酷いことは出来ない。今まで通り王が国を納めて、平和な国に戻したい!』
なんてことを言い出したら、今度こそオルドは手も足も出せなくなるのだ。
それを自覚しているのだろう。隠すことなく警戒を顕に、そして嘘偽りも誤魔化しも許すまいと鋭く見据えてくるオルドに、モアネットは兜の中で小さく息を吐き……、
「私は……私の手で、エミリアを裁きます」
そう、彼の瞳をジット見つめて返した。
その返答を聞き、アレクシスがゆっくりと瞳を閉じて続く。、
「僕は彼等を裁けない。……もしも父さんやローデルを生きて捕らえたら、その時は全て叔父さんに任せるよ」
片や己の手で蹴りをつけ、片や全てを叔父の手に託す。両極端な二人の返答に、ジーナは安堵を交えたような苦笑を浮かべてモアネットを見つめ、オルドは眉を潜めて肩を竦めると共にアレクシスに視線をやった。
これもまた両極端な反応ではないか。ただパーシヴァルだけは複雑な表情を浮かべ、ただ黙ってモアネットとアレクシスの様子を交互に窺っていた。
「良かった、モアネットはもう大丈夫ね。ちゃんと決心出来たみたい」
「アレクシスは駄目だな、まだ吹っ切れてねぇ」
とは、モアネットとアレクシスが部屋を出ていって直後、話し終えて一段落といった空気でワインに口をつけたジーナとオルドの言葉である。――ちなみにモアネットはロバートソンの餌探しに付き合い彼と共に外へと散歩に出掛け、アレクシスはコンチェッタにせがまれて浴室へと向かった――
もちろん二人の言葉が先程の両極端な返事によるものなのは言うまでもない。
モアネットは自らエミリアを裁くと告げ、対してアレクシスはそれが出来ないからオルドに託すと告げたのだ。決意の度合いはモアネットの方が高い……と、そう考えてのことである。誰だって、あの時の二人の返答を聞けばそう感じるだろう。
だがこれに対し、パーシヴァルだけが考えを巡らせるように視線をそらし、そしてポツリと、
「俺は、逆だと思います」
と告げた。
「逆って……アレクシスは自分で裁けないから俺に任せるって言ったんだぞ」
「はい」
「兄貴やローデルに対して情が残ってるんだろ。だから」
「……いえ、きっと、もう情も残っていないからこそ、オルド様に託すのかと思います」
王位継承権を失ったからこそ王位争いには無関係だと、そして無関係だからこそ自ら裁くこともせずかといって救済もしない。
オルドに全てを託すのだ。なにせオルドは己が玉座に座るためならば実兄の寝首をも掻こうとする男だ。生きて捕らえ必要とあらば生かし、不要とあらばすぐに処分する。そしてオルドが采配する処罰や処遇は、きっと王族という温室で育ったアレクシスよりも非道に違いない。
それを踏まえての決断ならば、『自ら裁かず全てをオルドに託す』という決断に情など一切あるわけがない。
「なるほど。確かに、俺に押し付けた方が奴らに救いはないな。アレクシスのやつ、完璧に兄貴達を見限ったか……」
パーシヴァルの話を聞き、オルドがクツクツと笑う。
きっとアレクシスの決断は彼が予想していた以上に彼好みだったのだろう。歪んだ瞳はなんとも薄気味悪く、それでいて酷く楽しそうである。
それに対して、先程まで安堵さえ浮かべていたジーナが表情を曇らせる。
モアネットはエミリアやアイディラ家への未練を断ち切り、だからこそ魔女としてエミリアを裁こうと決めたはずでは……。そう訴えるジーナに、パーシヴァルが僅かに表情を曇らせた。
「……モアネット嬢が住んでいた古城に、一枚の絵がありました」
「絵?」
「はい。……エミリア嬢と幼い頃に描いたという絵です」
子供が描いた『キラキラしたお姫様』の絵。線も真っすぐに引けず色もはみ出した、お世辞にも上手いとは言えない代物だ。
そんな絵を、モアネットはわざわざアイディラ家から古城に持ち込んだ。当時の彼女は王宮からも家族からも逃げるように古城へと住処を移したのだ、運べるものなど僅かだっただろう。
最低限に必要なものと、魔女と魔術に関する書物。それだけでいっぱいだったはずなのに、彼女はわざわざあの絵を古城に持ち込んだのだ。
そして飾るでもなく捨てるでもなく保管していた。
見るたびに、絵を描いた当時抱いていた『キラキラしたお姫様』への憧れを思い出し、そして鉄の鎧を纏う今の己の姿の落差を思い知らされただろう。それどころか、アレクシスのあの言葉すらも思い出し胸を痛めたに違いない。
それでもモアネットは妹との思い出を手元に置いたのだ。
これを未練と言わずに何と言う。
そしてなにより、全てがエミリアの魔術のせいだと分かった今もなおモアネットは鎧を纏い、脱げずにいる。
全てを断ち切り身内の処分さえもオルドに託すと決めたアレクシスと違い、モアネットはまだ枷に囚われている。
「……だからモアネット嬢は、自ら負うようにエミリア嬢を裁くと決めたのではないかと思います。同じアイディラ家の魔女として、そして姉として、彼女はまだ情を断てていない」
「なるほどな。吹っ切らす必要があるのはモアネットの方だったか」
「そうね、ここで全て断ち切らせないと、あの子はずっと鎧の中から出られないわ」
深刻な表情で話し終えるパーシヴァルに、オルドとジーナが顔を見合わせる。
そうしてオルドが小さく「一度話をさせるか」と呟くのとほぼ同時に、室内にノックの音が響いた。
「……何がどうなってるのか分からない」
とは、ノックの後に部屋に戻ってきたアレクシス。
さすがオルドの屋敷と言えるほど広い浴室をスイスイと泳ぐコンチェッタを見守り、濡れた体をタオルで包みながら部屋に戻ってきたところ……なぜかオルドの膝の上に座らされ今に至る。
そのうえ、この厄介な叔父は先程からしきりにアレクシスの頭を撫でてくるのだ。これには思わずアレクシスも端整な顔を不快で歪め、声もどこか低く唸るような色を見せている。
「叔父さん、何がしたいの」
「いやぁ、お前は俺が思ってる以上に成長したなと思ってな。身内にこんなに情が沸いたのは俺の人生で初めてだ」
「……そりゃよかったね」
「なんだそっけない。昔みたいに『オルド叔父様』って呼んでくれても良いんだぞ。まぁお前が俺を呼んだ翌日に俺が王宮から追放されたけどな」
「やめろ、おっさん、離せ」
と、思わず彼らしくなく暴言を吐いてしまう。
だがそんな暴言もオルドにとっては『良い子ちゃんで優等生なアレクシスが!』と好意的に取ったのだろう、おっさんと呼ばれてもなお上機嫌である。
そんな叔父と甥に対し、ほぼ時を同じくして部屋に戻ってきたモアネットと言えば……、
「モアネット嬢、俺は何があろうと必ず貴女のそばにいるからな」
と、いつの間にか寝ぼけて抱きしめてくるパーシヴァルと、
「ちょっとなによ、私がモアネットを抱きしめて癒すのよ! 魔女殺しはさっさと寝なさいよ!」
と、パーシヴァルを押しのけようとするジーナに挟まれてうんざりしていた。
20000p超えました。ありがとうございます。
お礼がわりに小話をどうぞ。
『重装令嬢モアネット〜投下するタイミングを逃した小ネタの載せ方 その3〜』
「コンチェッタはね、昔ガリガリに痩せていたのよ」
とは、膝に乗るコンチェッタを撫でながらジーナが発した言葉。過去を思い出すかのようなその穏やかな声に、それを聞いたアレクシスは目を丸くさせ言葉もないと口を開くだけだ。
なにせ今のコンチェッタはガリガリとは程遠い、むしろ随分と太ましいくらいなのだ。もちろん健康を害するような太り方ではないが、ふかふかの毛にドッシリとした体つきからは「ガリガリ」なんて表現は想像も出来ない。……と、そこまで考えたところでコンチェッタがおもむろにジーナの膝の上から退き、ノスノスと歩いて一度アレクシスの足を踏んだ。これは抗議だろうか。
「コンチェッタと最初に会ったのは森の中。街へ行く途中に見つけたんだけど、声を掛けても草の中に隠れて出てこなかったの。ガリガリに痩せて怯えて、か弱く鳴いていたわ」
「ふぅん、今の姿からは想像でき……なんでもない、ジーナ続けて。コンチェッタ、尻尾で僕の足を叩かないで」
「最初は草の中を覗き込んでは威嚇されてたわ。でも何度も声を掛けていたら出てきてくれて、撫でさせてくれたの。でも酷くゴワゴワして、手触りなんて最悪よ」
「ゴワゴワねぇ……」
当時を思い出しているのだろうか、コンチェッタの毛並みを語るジーナの眉間に皺が寄っている。
ただでさえコンチェッタは長毛種なのだ。それもどうやら主に捨てられたらしく、突如投げ出された森の中では生きるだけで必死だっただろう。そんな環境で毛並みなど保てるわけがない。
ゴワゴワで毛が絡まり、そのうえ撫でた後には手が汚れていた……ジーナの話から考えるに、当時のコンチェッタの姿は悲惨の一言である。
「だから私、コンチェッタを屋敷に呼ぶことにしたの。ほら『猫はふかふかたれ』って言うでしょ」
「言うかな?」
「言うのよ。だから屋敷に招いてお風呂に入れて、綺麗に梳かしてあげたの。美味しいご飯をあげて、一緒に暮らして、時には一緒に街にも買い物をして。特に夜の散歩はよく出掛けたわ、コンチェッタが光ってくれるから歩きやすいし。……そうしてしばらくして、ふと気付いたの」
そういえば、この子光ってるわね。
……猫って光る生き物だったかしら。
「ジーナ、そこは光りだした時に疑問を抱くべきじゃないかな」
「三ヵ月くらい気付かなかったわね。それでコンチェッタが私の使い魔になってくれたことに気付いたのよ」
ねぇコンチェッタ、とジーナが呼べば、主の問いかけに対してコンチェッタがンナーと高い声をあげてその足元に擦り寄った。ふかふかの体を足に擦り付け、伸ばされる指先に鼻先を寄せる。
なんと心地よさそうな表情だろうか。そのうえぽわぽわと点滅しだすのだからよっぽどだ。
「ガリガリのゴワゴワで必死に鳴くコンチェッタを見ていたら、ふくふくのふかふかで幸せにしてあげたくなったのよ」
「それも魔女の気まぐれってやつなのかな」
「そうね、そうかもしれないわ」
コンチェッタの柔らかな毛を撫でながらジーナが笑う。そんな彼女を見つめ、次いでアレクシスがふと視線を一角に向けた。
そこにはモアネットとパーシヴァル、そしてロバートソンがいる。正確にいうのであれば、
「モアネット嬢、貴女はなんて良い魔女なんだ。俺が子守歌を歌うからぐっすり眠ってくれ」
と、モアネットに膝枕をしながら子守歌を奏でるパーシヴァルと、
「この体勢で何か飲めるかな……。でも兜の中で零すのは嫌だなぁ」
もはや抵抗する気にもならず飲み物を求めるモアネットと、そんなモアネットの兜の上でぽわぽわと点滅するロバートソンの姿があった。
何があったのかなど言うまでもない、数分前からパーシヴァルが寝ぼけだしたのだ。そんな光景にアレクシスが溜息を吐き、椅子から立ち上がった。
「モアネット、ストローがあるからこれで飲みなよ」
「それなら零しませんね。ありがとうございます」
「モアネット嬢、喉が渇いているのか。それなら俺が飲ませてやろう」
ほらお飲み、とパーシヴァルがストローを刺したコップをモアネットの前に差し出す。
これに対しては流石にモアネットも不満があるようで「顔面に噴きつけてやりたい」と兜から呻き声を漏らした。アレクシスが肩を竦め、せめて自分で飲ませてあげなよとパーシヴァルを説得にかかる。
その間もロバートソンは点滅をしており、モアネットの鎧の上をカサカサと動き回っている。
なんとも言えないその光景に、ジーナがコンチェッタを抱きかかえながら「これも魔女の気まぐれね」と肩を竦めて笑った。




