◇魔王降臨 Ⅳ
「み、ミレア様……」
ゆっくりと階段を下りて来るミレアに、アークティの住民達は皆一様に恐れと焦りの色を浮かべ、まるで光に照らされ闇が退くように一歩また一歩とじりじり後退し始めた。令嬢はそんな住民達を一瞥し、落ち着きを払った声で語りかける。
「相手が誰であろうと、この方々は私の客人。何か御用があるのならば、先に私を通すのが筋というものではありませんか? そして、その客人を侮辱するということは、私を侮辱するも同じこと」
青の瞳が周囲を見回し、違いますかと問えば、その視線から逃れるようにアークティの住人達は顔を伏せる。ミレアは小さな吐息を漏らし、シンに向き合うと深々と頭を下げた。シンは一瞬だけリリス達の方に鋭い視線向けると剣の柄から手を離し、ミレアと向き合う。
「この者達の非礼、深くお詫び申し上げます」
「……あぁ、別に構わねぇよ。こいつ等がいきり立つのも仕方のねぇことだ。気にすんな」
「ありがとうございます。貴方の尊大なお心に感謝しますわ。応接室には私が案内します。ヘレン、あなたはお茶の用意を」
「は、はいぃっ……!」
ミレアの呼びかけにヘレンは水を得た魚のように背筋をぴんと伸ばして厨房へと駆けていく。
「それでは皆様、失礼致します。……良い午後を」
ミレアはドレスの裾を持ち上げ、優雅に一礼すると、怖じ気づく住民達を背に颯爽と広間を後にした。
階段をすり抜けた先にあるドアを開けば、その先は通路になっており、壁に掛けられた燭台の蝋燭にひとりでに灯りが点る。ミレアは三番目のドアを開けると、フィリップ達を先に通した。
応接室に入ると、ぼんやりと室内が明るくなった。それでも何処か仄暗く感じるのは、応接室全体の色合いが暗色で纏められているからだろうか。
葡萄酒色の絨毯、光沢のある焦茶色の本棚に机、黒のソファー。玄関ホールとは違い、華やかさよりも仄暗い上品さがこの部屋には満ちていた。
シンは無言でドア近くの壁にもたれかかり、リリス、フラン、ルーナの三人は手前のソファーに座る。フィリップとサシャが向かい側の一人掛けソファーに腰掛けたのを見届けると、ミレアはドアの向かい側に移動した。そして銀の指輪をかざし、二人が座っているのと同じ一人掛けソファーを出現させてそこに座る。
「その、私の別荘ではないので応接室となると少々お堅くなってしまいますけど、気になさらないで。初めまして……ではありませんよね? ミレア・スィロンと申します。その、色々と不快な思いをさせてしまったこと、改めてお詫びしますわ。本当にごめんなさい」
「いえ、ミレア様が場を収めてくれたおかげで助かりました。私たちは何も出来ませんでしたし……。申し遅れました、私はリリス・ローズマリア。こちらがフランで、その隣にいるのがルーナ。皆、本当にただのお友達、というか旅仲間ですから安心して下さい」
苦笑いを浮かべながら弁解し始めるリリスを、ミレアはきょとんとしながら不思議そうに見ていたが、やがてアークティの市街での一件を思い出したようだった。みるみるうちに顔を真っ赤にして「ごめんなさい……」と消え入りそうな声で謝った。
「ミレア、アークティの街があの有様になった原因について、何か知ってるか?」
床に視線を落としたままシンが問うと、ミレアはこほんと咳払いを一つして、いいえと首を横に振る。
「フィリップ様がタバランを発たれたという情報を聞いて私も一週間前に此処に来ましたが、その時は既にあの有様で……。住民の皆様方に聞いても原因に心当たりは無いと。私の方でも何か手掛かりはないかと探ってはみましたが、特にこれといった収穫はありませんでしたわ。ただ一つ言えることは、アークティの街の中では水魔法は使えないということくらいかしら」
「やはり、水魔法は此処では使えないのですね。では、何故フィリップだけは魔法が使えたのでしょうか?」
「いや、それについては大体見当がついてる。問題は水が無くなった原因だ」
壁にもたれかかったまま、シンは重いため息を吐く。激しい運動をした訳でもないのに息は弾んで、額からは玉のような汗が絨毯に滴り落ちている。立っているのもやっとのようだ。ここまでくると体調が悪いのは誰の目に見ても明らかである。
「シン、部屋で少し休んではどうですか? サシャさんもいますし、とりあえずは安全だと思います」
「……そうだな、先に休んでるわ。町民C、」
「アークティについての全資料に目を通しておけ、でしょ? 任せて。あと、無理させてごめん」
「んなの今に始まったことじゃねぇだろ。んじゃ後は任せた。後で聞きに行く」
「お茶をお持ちしま……ひゃあっ!」
シンは疲れ切った顔で薄い笑みを浮かべドアを開けると、丁度ヘレンがお茶を運んで来たところだった。ヘレンはシンの顔を見るなり小さな悲鳴を上げて顔を逸らす。
「あぁ、わりぃ。大丈夫か?」
「は、はい……。こ、こちらこそ、申し訳ございません」
壁を伝いながら何処かへと去って行くシンをヘレンは不思議そうに見ていたが、ミレアの咳払いに我に返って慌てて部屋に入る。
「すごい、全く気配感じなかった」
「オレも。多分、シンも気付いてなかったよね。凄いなぁ」
「す、すみません……。そんなつもりはなかったのですが……」
サシャとフラン的には全く悪気はなくて寧ろ褒めているつもりなのだろうが、ヘレンはぺこぺこと何度も頭を下げていた。褒められていたとしてもそれはそれで複雑な心境だろう。
ヘレンは銀のカートから甘い香り漂う焼きたてのクッキーがこんもりと盛られた大皿をルーナの近くに置き、人数分の白磁のカップに紅茶を注ぐと震える手つきでそれぞれの前に置くとそそくさとミレアの側に控える。
「ほ、本日は、ミレアお嬢様の手作りクッキーと、お紅茶です。 ちゃ、茶葉は……え、えーと、何でしたっけ……。はうぅ……、ご、ごめんなさい、忘れました……」
「茶葉はアッサムですわ。ミルクティーがオススメですわよ」
「へぇ~。しっかし、こんな可愛くて器量のいい子がフィリップの婚約者だなんて勿体ない」
出されたクッキーを頬張りながらフランは冗談とも本気とも取れない口調で言うと、フィリップは困ったように頭を掻き、目を伏せる。
「親が決めたことだし、そう言われてもね……」
「まぁ。どの方々もそうおっしゃいますが、私は心からフィリップ様をお慕い申し上げております。この気持ちに嘘偽りはございませんわ」
フィリップの返答に一瞬ミレアの表情が曇ったが、すぐさま挑発的な笑みを浮かべてカップを手に取った。サシャは何か言い足そうな表情でミレアを見ていたが、リリスと目が合うなり、いつものように笑顔を浮かべてやんわりと視線を外す。
「それはそうと、皆様は帝国へ向かわれるのでしょう? いつ此処を発つおつもりで? その、もし急ぎでないようでしたら、是非とも明日開く舞踏会に出てほしいのですが……」
「そ、そんなの聞いてませんよぉ~」
「無論、言ってませんから当然ですわ。けれど、前々から開きたいと考えておりましたの。アークティの住民達も大分参っているようですし、少しは気分転換になると思うのですが……。衣装の心配でしたら問題ありませんわ。こちらで用意します」
「そういうことならこちらとしても断る理由はないよ。その代わり、というのもおこがましいんだけど、数日間此処に滞在させてもらっていいかな? シンも具合悪いみたいだし、少し休ませてあげないと。シンは」
「フィリップ、本当に心配してます?」
「してるよ! ……それはそうと、舞踏会はいつ開催予定?」
「ありがとうございます。舞踏会は今宵準備が整い次第開催予定ですわ。まぁ、まだ何の準備もしていないので後三時間から五時間はかかるでしょう。女性専用の衣装室は東棟二階の二番目の部屋。男性は西棟二階の三番目の部屋です。衣装も装飾品もどれもお好きなものを選んでいただいて構いませんわ。ただ、一品ものばかりですので、早くしないと好みの物が選べないかもしれませんわね」
「じゃあ、今のうちに選びに行っていい?」
「えぇ、構いませんわ」
「うっし! リリスとルーナは? 一緒に行く?」
フランはガッツポーズを決めながら勢いよく立ち上がり、リリスとルーナを見た。ルーナはフランとクッキーを交互に見ながらしょんぼりと肩を落とす。
「行きたいけど、クッキー……」
「それなら、食べ終わるまで待つよ?」
「ぼーくんに、あげる。疲れた時はあまいものを食べるといいって聞いた」
「あら、それでしたら袋に入れて差し上げますわ。……はい、どうぞ」
ミレアは銀のカートから小さな水玉柄のガス袋を取り出すと、クッキーを数枚入れてリボンで口を閉じ、ルーナに手渡した。ルーナは嬉しそうにそれを受け取って「ありがとう」と小さく呟く。フランは大事そうに袋を抱きしめるルーナの頭を撫でながら、再びリリスを見た。
「リリスはどうする?」
「……すみません、今は遠慮しておきます」
フランには申し訳ないけれども、フィリップの先程の発言の真意を聞かなければ気が済まない。
「分かった。気が向いたらおいでよ。いつでも付き合うからさ」
一瞬だけ気遣わしげな視線を送ると、すぐにいつもの太陽のような眩い笑顔を浮かべてウィンクした。そしてルーナの手を引いて部屋を後にする。その背中を見送りながらリリスは心の中でごめんなさいと両手を合わせた。
「相変わらずモテますこと。忌々しい……。そういえば、シン・キリタニは案内もなしに部屋が分かるのかしら?」
「……ミレア、そういうのは先に言ってあげて」
「そうですわね、以後気を付けますわ。ヘレン、案内を頼みます」
「か、かしこまりました……。では、失礼します」
ぱたん、と控えめにドアが閉まる。それをちらりと横目で確認して、フィリップは控えめにリリスを見た。フランといいフィリップといい、そんなにも自分はやつれた表情をしているのだろうかとリリスは小首を傾げる。
「本当に行かなくて良かったの?」
「え、えぇ……。今はまだ……。もう少し気を静めてから行きます。フランだって気分転換のつもりで誘ってくれたのですから。それに、私だってドレスを着たりおめかししたいですもの。……フィリップはこれからどうしますか?」
「シンに言われた通り、アークティについての資料を読もうかな。資料室って何処だっけ?」
「資料室はありませんけど、地下に書庫が。アークティの歴史から何までまとめたものがありますから、ロヴェンに持ってこさせますわ。他に手伝えることがあれば何なりとお申し付け下さい。すぐに用意します」
「でも、皆舞踏会の用意とかで忙しいんじゃ……? ミレアだって、色々とやることがあるよね?」
「ご心配なく。私だってフィリップ様のお役に立ちたいですし。その……迷惑でなければ、ですけど……」
フィリップはもじもじしながら人差し指同士を打ちつけ赤面するミレアを不思議そうに見ていたが、ややあってありがとうと微笑んだ。それを見たミレアも花が咲いたごとく愛らしく美しい笑みを浮かべ返事をする。
「シン、大分消耗しているようだけど」
それまで黙っていたサシャがおもむろに口を開く。その声色には純粋にシンの体調を案じているというより嫉妬のような感情が混ざっているような気がした。
「この前、魔族を退けるのに結構力使ったから、その反動だよ」
「シンはお前の従者だからお前がどう扱おうと口を出すつもりはないけど、あまり無理はさせないでくれよ」
「そんなの、言われなくたって分かってる」
いつもなら真っ先に折れるフィリップもこの時ばかりは玩具を取り上げられた子供のように不機嫌な表情を浮かべ、ぶっきらぼうに返す。
「だったら何であんな状態になる?万が一役目に支障が出たら全て終わりだ。……本当に分かってるのか?」
「口を出さないんじゃなかったの? 言葉を返すようだけど、どう扱おうと僕の勝手だよ」
胸が疼く。塞がった傷が開いたような張り裂けそうな悲しみをリリスは目を瞑って必死に耐えた。
――剣に選ばれさえすれば例え子供だろうが罪人だろうが、それこそ魔力無しだろうと関係ないわよ。
――魔族に勝る人でなしだな。
「いい加減にして下さいっ!」
辺りの景色が白くぼやける。握りしめた拳に透明な雫が落ちて弾けた。気付けば声を上げていた。胸が締め付けられるように痛い。
「シンは……、シンは、物じゃありません! どう扱うだとか、心配しているのは分かりますけど、シンがいないからって、いくら何でもそんな言い方……アークティの人達より、酷いです…」
サシャとフリップ驚きと困惑の入り混じった表情でリリスを凝視する。そしてリリスと視線が合うなり、弾かれるように、目をそむけた。
ミレアは口元まで運んでいたカップを静かに机に置くと静かに立ち上がる。そのまま焦りと戸惑いの色を浮かべながらも固まったままの二人の後ろを通り過ぎ、応接室のドアの手前まで来るとドアを開けて二人の方を振り返った。
「女を泣かせるなんて男として最低ですわよ。……二人共、どうぞ退出を」
「で、でも……」
尚もこの場に居続ける二人に侮蔑の視線を送り、足早にミレアは二人の前に立つ。乾いた音が二度続けざまに響いた。
「恥を知りなさい」
怒りに燃える青の瞳に射竦められ、フィリップはその視線から逃れるように俯きながら小さく「ごめん」と呟き、足早に応接室を後にする。サシャも小さく頭を下げて無言で応接室を出て行った。
閉まったドアを見つめ、ミレアは「全く、どいつもこいつも困ったものですわね」と令嬢らしくない口調でため息を吐きながらリリスの隣に座り、レースのハンカチを差し出す。
「ごめんなさい、もう少し早く止めるべきでしたわ。しかし、二人にはいい薬……それも、とびっきりの特効薬になりましたわ。無意識で、悪気はないのでしょうが、私も長い付き合いですから慣れてしまって。とはいえ、やはり勘弁していただきたいものですわね。淑女の前で声を荒げるなどご法度ですわ。そう思いませんこと? この件は後でシン・キリタニに告げ口しに行くとしましょう。淑女を泣かせた罪の重さ、とくと知らしめてやりますわ。そして、その後で元凶である奴を私がシメます」
嬉々とした表情を浮かべ、子供のようにはしゃぐミレアに、仲良しですねと内心呟きながらリリスは呆れと羨望の混じった眼差しを向ける。
「皆、シンが大好きですね」
「そうですわね。貴女も含めて、皆物好きですわ。私には分かりませんけれど」
そうは言っていても、ミレアの口調からは悪意は感じない。シンもミレア様もひねくれ者ですねと心の中で呟きながらリリスは口を開いた。
「ミレア様がシンを嫌うのって、シンがフィリップの護衛を任されたからですか?」
「あぁ、確かにそれも許し難いことですけれども、まだ許せる方ですわ。私がシン・キリタニを嫌う理由は一言じゃ説明できませんわね。でも、敢えて言うのならば……」
物憂げな表情で天を仰ぐミレアを不思議そうに見つめながらリリスは自身の頭の中で鳴っている警鐘に内心小首を傾げる。
「奴がいると皆盗られてしまうんですもの」
「? 何をですか?」
「私が気に入った女の子全部ッ! 奴が片っ端から口説いて掻っ攫っていくものですから堪能する暇もなくて!」
距離を開けようとソファーの端に寄ろうとしたリリスの手をがっしりと掴まれる。ふふふ……と怪しげな笑みを浮かべ、ミレアは尚も後退ろうとするリリスを不思議そう見る。
「あら、美しいもの、愛らしいものを愛でるのはこの世に生を受けた生き物の性ですわよ?」
「女の子、好きなんですね……」
「きっと、嫌いな方などいませんわ。女の子というと一定の年齢だけという風に聞こえてしまいますから誤解のないよう宣言しますと、幼女も熟女も淑女も大好きですわ。他の男共に興味はありませんが、フィリップ様は愛しています。あっ、ローレッジ家の皆様は普通に好きですわよ」
当然と言わんばかりに、にっこりと微笑むミレアに最早何も言えなくなったリリスはただただミレアの顔をじっと見つめるしか出来なかった。ミレアはそんなリリスを見て「元気になったようで何よりですわ」と浮かべた笑みを更に深める。
「ということで、早く私達も聖地……こほん。衣装室へ向かいましょう」
「ミレア様……。舞踏会を開く本当の理由って…私欲の為、ですか?」
「まさか。アークティの皆様の気分転換になればというのは本心ですわ」
「本音を言うと?」
「まぁ、一石二鳥とは思いました」
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「チッ……。部屋どこか聞くの忘れた。かと言って今から戻んのもメンドーだしな」
屋敷の何処か。廊下であることはまず間違いない。部屋も分からないのに自分は何処へ向かおうというのか。そのことにようやく気付き、馬鹿らしく思って休憩がてら近くの壁にもたれ掛かる。
「き、キリタニ様ぁ~、お、お待ちくださぁい……!」
「ん? あぁ、メイドの嬢ちゃんか」
声がした方に首を傾ければ、メイドのヘレンが途中何度も転びそうになりながら必死に駆けて来る。ヘレンの息が整うまでの間、シンはその場にしゃがみ込んでヘレンの顔を下から覗き込んだ。
「火傷の跡じゃないみたいだな。痛むか?」
「こ、これはその……生まれつき、ですので……。痛みは、ありません……」
「そうか。ならいいんだ。気にしてんのに悪かったな」
「い、いえ……。気にしてくれて、ありがとうございます……。あの、お医者様、なのですか?」
「いや、まぁ医学の知識がほんのちょっとある程度だ。しかしよ、綺麗な顔してんのに俯いたままなのは勿体ねぇな」
「貴方も、お嬢様と同じことをおっしゃるのですね」
「ははっ、ミレアも俺も美人で可愛い奴大好きだからな。つか、無類の女好きだ」
返答に窮することを言われ、ヘレンは困ったようにじっとシンを見た。
「――シン・キリタニ殿」
「ひゃいっ!」
「…………。」
いつの間にそこに居たのか。ヘレンの後ろに黒子のような衣装を纏う二人組が立っていて深々と一礼する。
「あ、あの……。ど、どちら様でしょうか?」
「これは失礼。すぐに済みます」
聞かずとも顔に掛かる布に刺繍された帝国の紋章を見れば彼等が何者なのかは分かる。帝国の紋章を提示することが許されるのは王室関係者だけなのだから。
帝国の使者もそう思っているのか、名乗らずにヘレンの脇を通り過ぎる。無言でシンに同行を促すと、シンは盛大なため息を吐いてから青白い顔を歪めて笑った。
「チッ、ちょっくら行ってくっか。先に聞いとくけど、部屋って何処使えばいいんだ?」
「に、西棟の二階の、四番目の部屋をお使い下さい」
「そっか。……あぁ、町民Ç達には内緒な。もし俺のこと聞かれたら散策に行ったとでも言っておいてくれ」




