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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第89話


 ウィーナはテーブルに置かれた3つのアイテムを見てから顔をあげると、


「まず片手剣、腕輪と指輪から見ようかね。この塊はゆっくり鑑定する必要がありそうだから」


 そう言って片手剣を手に持ってじっと見つけるウィーナ。しばらくすると顔を上げて


「これはダンジョンのボスから出たのかい?」


 と聞いてきた。頷く2人。


「この片手剣は優れものだけど今2人が持っている剣ほどじゃないね。性能が落ちるよ。いらないなら買い取ってあげるよ?ランクAクラスの冒険者にとっちゃあ良い剣だからね」


 片手剣はウィーナの店売りにする2人。そうして次に腕輪と指輪を手に取ると


「これもダンジョンボスからかい?」


 その言葉には首を横に振る2人。


「これらとその塊はボスからじゃないんだよ」


 デイブがダンジョンにあった隠し通路を見つけてその奥でボスよりも強いNMと対戦して倒したら出てきたアイテムだと言った。


「なるほど。この装備品とこの塊はボスじゃなくて隠し部屋にいたボスより強い敵が落としたのか、それで納得だよ」


 ウィーナはそう言ってから指輪と腕輪について鑑定の結果を言う。


「腕輪は腕力の腕輪、指輪は片手剣の効果アップだね。腕輪の方は今ダンが身につけているのと同じ効果があるね」


「じゃあこれはデイブだな。指輪も持っておけよ。俺は二刀流効果アップの装備を持っているから」


「じゃあそうしよう」


 デイブが腕輪と指輪を装備する。それを見ていたウィーナはちゃんと効果は出てるよと言ってから、テーブルの上にある大きな塊に視線を向けた。


「これはちょいと時間がかかるかもしれないよ。パッと見た時にひょっとしてと思うところはあったけどここまで大きのは見たことがないからね。じっくりと確認したいのさ」


 そう言って大事そうに両手で塊を持つとそれに視線を向けたまま


「時間がかかるから飯でも食っておいで」


 ダンとデイブはゆっくり鑑定してくれよと言って店を出て市内のレストランに入っていった。そこには2人の様な冒険者も数名いて彼らが店に入って来ると


「ノワール・ルージュだ」


「迫力があるな」


 等と2人を見て話をしている。2人はレストランの窓際の席に座ると料理を注文してから


「ウィーナでも鑑定に時間がかかるってことは相当なレア品かもしれないな」


 ダンが言った。


「おそらくそうだろう。ワッツが言っていたクリスタルの結晶体かもしれない。まぁ俺達は見る目がないから彼女に任そうぜ」


 デイブの言葉にそうだな、ウィーナなら間違いはないしなと言ってその話は終わった。


「それで明日からだがこの昼食が済んでウィーナの店に寄ってからギルドで未クリアの場所を聞いてみようか」


 デイブの提案に頷くダン。

 

 昼食を終えると2人は再びウィーナの店に顔を出した。



「ついさっきやっと鑑定が終わったよ」


「そんなに時間が掛かったのかい?」


 いつもはあっと言う間に鑑定をするウィーナがそれほど時間が掛かったと聞いてデイブがびっくりして言った。


「いや、物が物だからね何度も鑑定をやり直していたのさ」


 そうしてテーブルの上に置いてある塊を指差しながら2人を見る。


「これはクリスタルの結晶体だよ、それも極めて純度が高い」


「やっぱりそうだったのか」


「やっぱりって?」


 デイブに顔を向けたウィーナ


「いや、俺達が住んでるヴェルスでランクCの時から世話になっている元冒険者で今は武器屋をやっている人がいてさ。二刀流もその人に教わったんだけど。その人とその奥さんは俺達が師匠と呼んでいる人でその人にこれを見せたんだよ。そしたらひょっとしたらクリスタルの結晶体かも知れないって言ってたからさ」


 デイブがそう言うとダンが続けた。


「でもこれほどの大きさのは見たことがないとも言っていた。だから間違ってるかも知れないとも言ってたな」


「なるほどね。確かにこれほどの大きさのクリスタルの結晶体はおそらく誰も見たことがないだろう。それほどに大きな物だよ。そして純度がまた極めて高い。こんなのがこの世に存在しているなんて私も初めて知ったよ」


 そう言ってからこのクリスタルの結晶体の使い道は知ってるかい?と聞いてきた。デイブが通信用のオーブだろうというと


「その通り。ただし今この世に存在している通信用のオーブはここまで純度が高いクリスタルの結晶体を使ってないね」


「純度が低ってこと?低いとどうなるんだい?」


「純度が高い程遠距離での通信が可能になる。そしてオーブに映る相手の顔や声が鮮明になる。そして寿命が伸びる」


「オーブに寿命なんてあるんだ」


 ダンが言った。ウィーナはそうなんだよと言ってから


「オーブは使う度に少しずつクリスタルが消費されていくんだよ。元々オーブを持っている人は多くないが大商人の中に持っている人がいるってのは知っている。見せてもらったことがあるがここまで純度の高いクリスタルは使ってなかったね。聞いたら彼が持っていたオーブは使用頻度にもよるけど3年持てば良い方だと言っていたよ。本店と支店との間の通信に使っているらしいよ」


 ウィーナの話を黙って聞いている2人。彼女が続けた。


「ただしね、クリスタルの結晶体のままだとほぼ永久に持つんだよ。寿命は関係ないね」


「つまりオーブに加工しなければずっと良い状態のままだってことか」


「ダンの言う通りだね。そしてこれほどの塊ならそうだね、オーブに加工するなら最低でも20個は作れる。そして純度も今あるのよりずっと高い。2個で1セットとしてもこの結晶体は最低でも50年分のオーブの原料にはなるね」


 ウィーナはこの塊を見た時にもしやと思い、2人が出て言ったあとさまざまな角度から鑑定を行った。そしてこれが極めて純度が高いクリスタルの結晶体であると確認すると今度はこれからいくつオーブを作ることができてその寿命がどうなるかを結晶体を鑑定しながら試算していたのだ。


 ダンとデイブには50年分とは言ったがこれはかなり低く見積もってその年数だ。おそらく実際には70年、いや80年は使えるだけの結晶体だろうと見ていた。


 (全くとんでもない物を持ち込んでくれたよ)



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