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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第83話



 暗くて細い通路は時折右や左に蛇行しながら奥に続いている。そうして10分程歩いていくと右に大きく曲がっている通路の先から光が見えてきた。曲がる手前で立ち止まる2人。


「この先に大きな気配がある。ランクSS以上だ」


 ダンの言葉に頷くデイブ。2人とも隠し通路に入った時から既に抜刀していて両手に片手剣を持っている。


「相手が誰でもやり方は同じだ。そうだろ?」


「その通り」


 デイブの言葉に返事をすると2人で顔を見合わせてからその曲がり角を曲がっていった。


「ベヒーモスか」


「でかいな」


 通路を曲がった先はすぐに広場になっていてその中央にベヒーモスと呼ばれるライオンの姿をした大きな魔獣が四つ足で立っていて2人を睨みつけていた。


 全長は10メートル程の大型の魔獣、頭の上にには角が2本ありそこから雷撃を飛ばしてくるランクSS以上の魔獣だ。


「足を切るぞ!」


 ダンはそう言うと広場にかけ出していった。すぐにデイブも続いて広場に入ると左右に分かれる2人。


 ベヒーモスは最初に広場に入ってきたダンの方に体を向ける。その間にデイブがダンと反対側のベヒーモスの尻尾側に位置どりした。いつもの2人のポジションだ。


 ベヒーモスが雄叫びを上げて戦闘が開始された。ダンはすぐにベヒーモスに突っ込んでいくとその左前足に両手で持っている片手剣を一閃する。足の太もも部分が切られてそこがぱっくりと開いた。ベヒーモスが足を上げてダンを蹴り飛ばそうとしてくるが素早い身のこなしでその攻撃を避ける。その間にデイブが背後からベヒーモスの後ろ右足に剣を振るうとその場で今度はダンからデイブの方に体を向けるNM。


 そうして交互にタゲを取りながらひたすら同じ場所を剣で切り裂いていく2人。そうしているとベヒーモスの身体が震え出した。すぐにその場から後ろに下がると2つの角から雷撃が飛び出して少し前までダンがいた場所に雷撃が落ちて大きな音を立てる。


「こいつは足蹴りと尻尾、あとは雷撃だけだ」


 反対側からデイブが叫んでくる。ダンはわかったと答えると離れた場所から剣で切りさている足に火の精霊魔法を撃ち、すぐにNMに近づいていき同じ箇所を剣で攻めていく。

ベヒーモスがデイブの方に向くと今度はデイブが切っている場所と同じ場所に剣を振って傷を大きくし、魔法でその切り裂いている箇所を焼いていく。


 数度の雷撃も交わしていく2人。タゲはダンの方が多く持っているせいか雷撃は大抵ダンに向かって撃たれてくるがそれを全て交わして同じ箇所を責め続けているとベヒーモスの動きが最初の頃に比べて落ちてきているのが2人にもわかるくらいになってきた。


 その動きを見て2人がさらにギアを上げて前足と後ろ足の同じ箇所を切り裂いているとついにベヒーモスがその巨体を床の上にドスンと落とした。


 その瞬間を逃さずにダンがジャンプしてベヒーモスの首に片手剣を振り下ろす。同時にデイブの精霊魔法がダンが切り裂いた首に直撃した。


 大きな叫び声を上げるベヒーモス。さらにダンがもう一度剣を首筋に振り下ろすと首と胴体が綺麗に別れてその場で絶命した。


「ランクSS以上になるとやっぱり硬いよな」


 両手に持っている剣を鞘に戻しながらダンが言う。


「ああ。それにしても流石にダンだな。あの雷撃を全部避けてたじゃないかよ」


「雷撃を撃つ直前に目が合う。その瞬間に場所を移動すれば喰らわないからな」


 あっさりというダンだがその瞬間の見極めができるのはダンくらいだろうと聞きながらデイブは思っていた。普通ならそのタイミングで移動はできない。目が合った瞬間に雷撃が飛んでくるからだ。桁外れの身体能力があるダンだからこそできる技だ。


 ベヒーモスの巨体が広場から消えるとその場所に宝箱が現れた。デイブが箱を開けると中には腕輪と指輪、そして何かわからない水晶の様な大きな塊が入っていた。それらを魔法袋に収納すると他に何もないのを見てから戻るかと2人で再び通路を歩いて24層のダンジョンの広場と広場の間にある通路に戻ってきた。


 2人が通路に戻ると勝手にドアがスライドしてしっかりと閉まる。パッとみた感じではそこが隠し部屋の入り口だとは全く気がつかない。見事に隠蔽されている。


 そしてすぐに閉じた壁の向こうで壁が崩れ落ちる音が聞こえてきた。思わず壁の方を見る2人。


「一度きりのNM部屋だったのか」


 デイブが声を上げた。


 2人は通路にしゃがみこむと休息をとる。ダンが座って水を飲んでいるとデイブが袋から戦利品を取り出した。


「このガラスの様な塊は何だろうな」


 デイブが取り出して床の上に並べている戦利品に顔を近づけてダンが言う。


「わからないが俺も見たことが無い代物だ」


 そう言ったデイブはダンを見て


「ところでNMから出たこれらの戦利品はギルドには鑑定してもらわずにウィーナに見てもらおうと思う」


「ギルドじゃ鑑定しきれないって可能性があるってことだな」


 ダンの言葉に頷き、そして


「それもある。それよりもこれが出たのは隠し部屋のNMだ。ギルドに持っていくとどこで手に入れたのか聞かれる。隠し部屋からだとは言いたく無い」


 なるほどとダンは唸った。確かに持ち込めば入手先を聞かれるだろう。いくら守秘義務があるギルドとは言えどこに目や耳があるかもわからない。


「隠し部屋の存在を言わないってのは賛成だな。それにウィーナならギルドより詳しい鑑定ができるだろうしな。彼女に見みてもらうのがいいな」


 ダンの言葉を聞いて頷いたデイブ。


「じゃあこれ以外の品物をギルドには戦利品として出そう」


 そうしてデイブは再び戦利品を魔法袋に収納した。



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