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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第82話


 ダンとデイブはワッツやレミーが言っていた通りに未クリアダンジョンに潜っていたが23層からランクSSが出てきたので攻略は一旦ストップしてここ1ヶ月ほど23層でランクSSを相手に鍛錬を続けていた。


 ダンジョンが変われば同じランクでも相手が変わる。さまざまな種類の敵を相手にしてその相手の特徴を掴みながら鍛錬を続ける2人。


 23層のフロアの隅々まで移動しながら鍛錬を続けた2人はこの日で23層の攻略を終えると24層に降りていった。


「ここも23層と同じでSSが複数体いるな」


 階段を降りてきてフロアを見ているデイブが言う。地下空間の様な広場にランクSSが複数体固まっているのが目に入っている。


「広場の奥に通路がありそうだ。その先はまた広場なんだろう。ここもフロアが広そうだ」


 ダンが階段に座って水を飲みながら言った。

 そうして目の前にある広場の攻略を開始した2人。ランクSS相手に魔法や剣を使っていろんなパターンで敵を倒して鍛錬を続ける。


 階段に座っているダンが一段上の階段に座っているデイブの方に顔を向けて言った。


「デイブのエンチャント、また強力になってるんじゃないか?」


「そうなんだよ。ここの前のダンジョンをクリアした頃からかな。追加のダメージが増えている」


 そう言っているデイブの片手剣は雷の精霊魔法を付与している為に紫がかった青いろの光を帯びている。


「常時エンチャントでも魔力が減る感覚は前から無かったんだけどエンチャントの追加ダメージはここにきてまた上がってるのはわかるんだ」


 デイブもダンに引っ張られる様にそのポテンシャルを伸ばしてきていた。ダンの凄さを毎日目の当たりにしていた彼はダンのお荷物にならない様に、そしてダンに追いついていきたいという思いで日々鍛錬を続けてきた結果自分自身の能力をさらに昇華させている。


 目の前に座っているダンの背中を見ながら、こいつがパートナーじゃ無かったら俺はここまで伸びなかった。こいつと組んで本当によかったと思っていた。

 

 それにしてもダンはまだまだ伸びしろがありそうだ。剣がまた一段と鋭くなっているし、身のこなし、身体能力も上がっている。そして当人は気づいていないだろうが魔法の威力も増しているし今や誰が見ても大陸一の実力者だろう。


 しばらく休んだ2人は立ち上がると24層の攻略を開始した。階段を降りたところの広場にいたランクSSの魔獣達が2人を見つけると3体ほど固まって襲いかかってくる。ダンとデイブが精霊魔法を撃って足止めをし、その間にダンが魔獣に近づくと2本の剣を目にも止まらぬ速さで払う様にしてあっという間に1体を倒す。そうして次の魔獣も同じ様に剣で切り裂いて倒している間にデイブが残り1対を倒していた。


そうして目の前の広場の敵を一掃すると広場を隅々まで調べていくがここには宝箱は無かった。2人はそのまま広場の先の通路に入る。幅3メートル、高さもそれくらいの暗い通路を抜けるとそこには再び広場ががり、同じ様にランクSSの魔獣が固まっているのが目に入ってきた。さっきの広場よりも魔獣の数が増えている。


「ここから見る限りは魔獣しか見えないな。宝箱はなさそうだ」


 そう言いながらデイブはエンチャントを雷から風に変える。風に変えると彼の剣は今度は薄緑がかった色合いになった。


「それも綺麗な色だな」


 風魔法をエンチャントした剣を見たダンが言う。


「色々と試してみたいからな。この風のエンチャントはほらっ、緑色の煙の様なのが出ている」


 ダンが近づいてみると確かに剣から煙というかモヤの様なものが湧き出ていた。


「追加効果が風だからか」


 剣を見ながらダンが言う。


「雷の時はパチパチという感じだったが。付与する魔法で見栄えも変わるな」


 そうしてデイブが魔力を強めると剣から溢れ出るモヤが大きくなった。これでいいぞというデイブの声を聞いてダンが広場に出ていく。そうして先ほどと同じ様に魔法で足止めをして剣で切り裂くというスタイルで広場の敵を綺麗に殲滅した2人は広場に何もないのを確認してから奥の通路に入っていった。


 前を歩くダンの背中を見ながら通路を歩いていたデイブが途中で声をあげる。


「おい、ちょっと待て」


 その声に振り返るダン。


「見ろ、剣から出ているモヤが変な流れをしている」


 デイブが剣を突き出すと確かに風のエンチャントをしている剣から出ているモヤが真上じゃなく左の方に流れている。


「隠し部屋かもしれない」


 流れるモヤを見ながらデイブが言う。


「隠し部屋?」


「ああ。ダンジョンにはごく稀に隠し部屋があってそこにはNMがいたり宝箱があったりするらしい。滅多に見つからないので都市伝説だと言う奴もいるけどな」


 そう言ってからデイブはモヤが流れる方向に身体を向けるとその通路の壁を調べ始めた。ダンも戻ってきて同じ様に通路の壁を調べ始める。


「これかな?」


 ダンが言うとデイブが顔を近づけてきた。そこは壁の一番下の部分でよく見ると周囲の壁と色合いが違っている。暗い通路で足元近くにあるとなればまず見つからないだろう。


 デイブがその色が違う壁を手の平で押すとその部分が凹み、壁の一部がスライドしていった。


「凄い。こんなカラクリになってたのか」


 壁の一部がスライドするとその先に通路が伸びているのが2人の目に入ってきた。


「俺が聞いた話だとこうして隠し部屋になっていてそこに宝箱がある場合とこんな風に通路が伸びていてその先にNMがいるという場合があるらしい。これはNMコースだな」


「NMか。強い敵がいるんだな。楽しそうじゃないか」


 デイブの言葉を聞いてダンがニヤリとしながら言った。そうしてダンが前に立って通路を奥に進んでいく。


「それにしても隠し部屋って本当に存在していたんだな」


 通路を歩きながら後ろからデイブが言った。


「これで都市伝説じゃないってことが証明されたな」


「まぁ隠し部屋を見つけた奴らは誰にも言わないからな」


 背後のデイブの声を聞きながら前方を警戒して進むダン。確かに隠し部屋はそれを発見した冒険者達が苦労して見つけたものだ。簡単に第三者に言うことはしないだろう。もちろん俺もだと思っていた。ダンジョンの攻略は教えるにしてもこれは別だなと。


 

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