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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第79話


 2人はヴェルス周辺の未クリアダンジョンについてギルドから情報を得ると早速そのうちの1つのダンジョンに潜っていった。ギルドによるとこの街の周辺では2ヶ所、未クリアのダンジョンがあるらしい。


 ヴェルスの街から丸1日掛けて歩いたところにある近郊の村、そこから徒歩で2時間程の場所にあるダンジョン。ギルドの情報では10層まではクリアされているが11層からランクSが出てきているということだ。


 ダンとデイブは結局10日間でこのダンジョンをクリアする。最後のボスはランクSとSSの間程度の強さで大したことはなくドロップも今更欲しいものではなかった。そして各フロアにも宝箱は無くクリアしたものの2人にとってはハズレのダンジョンだった。


 そしてそれから1週間後、2人はもう1つの未クリアのダンジョンに挑戦していた。ここも各フロアをくまなく探しながら現在12層まで降りてきているがまだランクSクラスの魔獣が出てこない。


「このダンジョンは深いかもしれないな」


「となるとちょっとは期待できるかもな」


 そんな話をしながらダンジョンを攻略しているが同時に金策もしておりいつもの3勤1休みのローテーションを守って活動している。


 この日は休養日で休んでいるとアパートにレミーがやってきた。なんでも今のローブとズボンより性能が良いのが入荷したらしい。


 2人が早速レミーと一緒に店に出向くとレミーが店の奥からローブを2着持って来た。

今までと同じ様に赤と黒のローブにズボンだ。


「素早さと魔法の威力が今のよりも上だってサムが言ってるの」


 サムという名前を聞いて思わず顔を見合わせる2人。


「レミーはサムの店からも仕入れてるのかい?」


「そうよ。ちょうど昨日店に来たの。ダンとデイブ用に良いのが手に入ったと言ってね」


「サムは今ヴェルスにいるのか?」


「いるわよ。今日は他のお客さんのところに行くって言ってたから」


 そう言ってからレミーも気がついた。


「サムにアイテムボックスのことを聞こうとしてたの?」


「そうなんだ。ラウンロイドに行こうってダンと話をしていたところ」


「なるほど。でもまずは新しいローブとズボンに着替えたら?」


 言われて2人ともそうだったと。サムがこのヴェルスにいると聞いて周りが見えてなかったなとと苦笑しながら新しいローブとズボンに着替えた。見た感じは今までのとほとんど同じだがローブは生地がやや薄くなって身体が動かしやすくなっている。


「生地は薄くなった分軽いけど効果は上がってるわよ」


 装備は僅かな効果の積み重ねが効いてくる。そして優秀な冒険者程その僅かな効果のアップのために大金を払うのを厭わない。


 2人は1年以上ヴェルスの外に出ていてその間ほとんど金を使っておらず、一方で魔獣討伐の代金が貯まっていたので金は相当持っている。この新しい装備もかなりの値段だがその場で現金でレミーに支払った。


 代金を払い終えると再びサムの話になった。


「サムは定期的にこの街に来ているの。彼には私が昨日頼んでおいたわよ。そして彼以外でもこのお店に商品を卸してくれている商人には声をかけるつもり。ワッツも自分の武器屋に出入りしている商人に話すると言ってたわ」


 レミーの言葉を聞いて頭を下げる2人。


「色々とすまない」


「これくらい平気よ。お二人は普段から贔屓にしてもらってるし、その上ランクSになったんだしね」


「贔屓ったってそれほど買ってないけどな」


 そう言うと3人で笑う。


「サムはおそらくもう1回位この店に顔を出すと思うの。その時に声をかけてあげる。だからしばらくは街から出ないでね」


 わかったと言った2人はレミーの店を出るとそのままワッツの武器屋に顔を出し、出入りしている商人にアイテムボックスについて聞いてくれるとレミーから聞いたと言って礼を言う。


「これくらいお安い御用さ。出入りしている業者に聞くだけだからな」

 

 ぶっきらぼうな口調で言うワッツだがその気持ちは2人にも伝わっていた。


「それよりも。仮にアイテムボックスが手に入るとなってもその金額は半端なく高くなるだろう。俺も想像できないが白金貨10枚じゃきかないかもしれない」


 金貨1,000枚で白金貨1枚だ。白金貨10枚ということは金貨10,000枚になる。


「生半可な金額じゃないってことは俺達もわかってる。もちろん金策は続けてやっていくし、未クリアのダンジョンにも挑戦するつもりだ」


 2人は今まさに未クリアのダンジョンに挑戦中だ。


「ダンジョンでも探すべきは宝箱だろうな。ボスは倒しても時間と共に復活する。もちろん毎回同じ戦利品が出る訳ではないからアイテムボックスが出る時があるかもしれん。だが宝箱は1度開けるともう2度と取れない。レア度は宝箱の方がずっと高い。そちらを探しながらダンジョンを攻略した方が良いだろう」


 デイブの言葉にワッツが言った。ダンは聞いていてその通りだと思っていた。1度きりのチャンスしかない宝箱の方がレアなアイテムは出易いだろう。ただ宝箱自体がレアな存在になっている。


 礼を言ってワッツの店を出た2人はそのまま市内のレストランに入るとこれからの活動について打ち合わせをする。


 とりあえずサムと会うまでは街から出ないことにして、


「アイテムボックスについては商人筋からの情報収集と同時に今やってる様な未クリアダンジョンの探索で進めていくのが良さそうだな」


 デイブが言うと、


「あとはレーゲンスのウィーナのルートだ。彼女だけがアイテムボックスの保有を認めている。どうやって手に入れたか聞いてみたい」


 ダンの言葉に大きく頷くデイブ。そして、


「レーゲンスにはいずれ出向いた方が良いだろう。未クリアダンジョンはあの街の周辺にもありそうだしな。サムと話をして今のダンジョンをクリアした後に行ってみるか」


 方針が決まった。


 ダンとデイブがレストランで話をした2日後、レミーの使いという者がアパートにやってきた。サムがちょうど店に顔を出したという。直ぐに二人でアパートを出てレミーの店に顔を出すとそこにはレミーとサム、そしてワッツもいた。


 ダンとデイブの二人を見て座っていた椅子から立ち上がったサム。


「これはお久しぶりです。ランクS昇格おめでとうございます」


 と言って手を出してきた。二人が握手をするとレミーに勧められてテーブルに腰掛けるダンとデイブ。


「今レミーとワッツさんから話を聞いていたところです。アイテムボックスをお探しになってるとか」


「そうなんだよ。長期で街がない場所に行くことを考えていてね。それにはどうしてもアイテムボックスが必要なんだよ」


 デイブの説明に大きく頷くサム。テーブルの上にあるお茶を一口飲むと口を開いた。


「アイテムボックスについては商人の中でも時々話題にのぼるアイテムです。それがあれば我々も馬車に荷物を積んで移動しなくても良いですからな」

 

「なるほど」


「だからこそ商人もアイテムボックスについては情報を集めています。もちろんあるとなったら取り合いになるでしょう」


 聞きながら納得した表情になるダンとデイブ。サムの言う通りでアイテムボックスの恩恵を受けるのは冒険者だけじゃない。むしろ商人の方がその利用価値は想像できないほど大きいだろう。


「となると商人筋からの情報は俺達冒険者には流れてこないってことかい?」


「デイブさんのおっしゃる通りです」


 とあっさり肯定するサム。


「そして、売り手の立場に立つと余程金に困っているとか何か特別な理由がないとアイテムボックスを手放すことはないでしょうな。そして困っている人が最初に頼るのは大抵の場合は我々商人です」


 つまりまず普通な方法だと情報すら入手できなということになる。


「商人がアイテムボックスを手に入れるにはどういう伝手があるんだ?そこら辺に落ちてるってアイテムじゃないぞ?」


 聞いていたダンが言った。


「一番は冒険者から買い取るという事です。聞いた話だと白金貨20枚とか30枚出して買い取ったという噂を聞いたこともあります。引退する冒険者が商人に話を持ちかけてきたそうです」


「そりゃ相当な価値だな」


 思わず声を出したデイブ。


「サムは商人だが儲け第一の商人じゃない。そこを俺もレミーも評価している。今彼は厳しいことを言っているがそれが現実だとお前さん二人に理解させようとしているんだ」


 サムの話を聞いていたワッツが言った。


「ワッツさんの言った通り今までの説明はそれほどまでにアイテムボックスは簡単に手に入らないレアなアイテムであり取り合いになっていると言うことを言いたかったのです」


 ダンもデイブもサムの話を聞いて人任せにしていたらいつまで経っても手に入らないほどのアイテムであると再認識する。



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