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ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
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第48話


 ゴードンが続ける。


「長老からは報告を受けてはいたが念のためにとレーゲンスのユーリーにも頼んで二人について調べてもらった。もちろんユーリー経由での調査をすることも長老も知っていた。そして上がってきた報告を見てびっくりしたよ。その内容は長老の報告以上だった。スラムを治めているユーリーが書いていた。絶対に敵に回してはいけない二人だとな。そうしてそれほどの強者の冒険者でかつ他の街の出身、口の固いのは保証すると書いてある。まさに我々が探していた人物そのものだった。我々は長老に頼んで今回のミッションを是非お二人にお願いしたいと頼んだのだ」


「なるほど、状況は理解した。ウィーナにはレーゲンスで世話になっているし困っている人がいるのなら助けてあげるのは当たり前だと俺もダンも思っている。ウィーナから聞いても今回俺達がやる仕事は犯罪行為や犯罪の手助けになる行為じゃない。だからダンと相談して受けることにしたんだ」


 説明を聞いたデイブが口を開くとそれを聞いていた3人が大きく頷いて礼を言う。


 ゴードンはずっと黙っているダンに顔を向けてダンもそれで構わないのかい?と聞いてきた。


 この場では言っていないがユーリーの報告書によるとこの2人組は桁違いに強いが中でも暗黒剣士のダンの剣の強さは突き抜けていると書いてある。赤魔道士のデイブは魔法の威力に優れており剣も相当に強くて勝てる奴はいないだろうがダンの剣については勝てる勝てない以前に勝負にならないほどの力の差があると。魔法についてもデイブほどではないが他の冒険者よりはずっと優れている。その報告を見ていたゴードンはこの部屋に入ってからダンを見ていた。


 静かにじっと座ってやりとりを聞いている黒いローブ姿の男。そのダンが口を開いた。


「今デイブが言った通りだ。犯罪行為でなければ問題ない。このオウルの街の人たちが安心に暮らしていくために必要だろうからな。それと」


「それと?」


 途中で言葉を切ったダンにゴードンが何かなという表情で聞いてきた。ダンははにかんだ様な表情になると


「それと強い敵とやると自分が強くなる。鍛錬の相手は多い方がいい。まぁ人の為と言いながら半分は強い敵と対峙してみたいという自分のエゴもあるんだ」


 なるほど、こいつは本物の戦士だと聞いているゴードンは思った。普通ならまず報酬の話しが出る。ただここにいる2人はは報酬よりも強い敵とやってみたいという自分達の思いを隠さずに言う。


「いざ対戦してみたら2人にとったら雑魚かもしれないぞ?」


「その時はそれで全く問題ない。新しい敵と対戦できたというだけで満足さ」


「わかった。それで報酬だが」


 ゴードンと言って具体的な金額を言うとデイブが報酬についてはレーゲンスのユーリーから聞いている金額と同じだ。問題ないよと言う。


「今日はこの街にある宿でゆっくりしてくれ。坑道には明日朝から行ってもらいたい。ここにいるヤコブが案内をする」


 わかったと頷く2人。ウィーナも今日はゆっくりして街でも見ておいでよという。


「俺達が街の中をウロついてもいいのか?」


「構わない。2人がくるのは住民には説明済みだ。好きに動いてもらっても大丈夫だ。もっとも武器屋や防具屋と言った冒険者御用達の店はないがな」


 ゴードンが言い2人は立ち上がると部屋の外から入ってきた女性が2人を案内する。私はちょっとここに残って話ししていくからというウィーナの言葉にわかったと言うと2人は案内されるままに屋敷を出て外の通りを歩き出した。


 綺麗に区画整理がされており、行き交う人々の服装も他の街の人とほとんど変わらない。街を進んでいくと山裾には果樹園があり山から流れてきている水が川になって街の中を流れているのが見えてきた。遠くには畑らしいものも見えている。


「綺麗な街だな」


 デイブが呟くと前を歩いていた女性が振り返ってにっこりと笑い、


「ありがとうございます。住んでいる街を褒めていただけると嬉しいです」


「この街には何人くらいの人が住んでいるんだい?」


「そうですね。1万人程でしょうか」


 そんなやりとりをしながら通りを歩いていると結構な数の住民とすれ違うが皆他の街の住民と同じ様な服装で表情も穏やかだ。噂で聞いていた犯罪者の街というイメージが全くない。


「あの山の向こう側に鉱山があります」


 立ち止まって前方にある山を指す女性の指の先を見ると峡谷の街は途中で両側の山が近づいてきて狭くなっているがその奥はまた広がっている様だ。


「食べ物は自給自足ですか?」


「そうですね。ほとんどの食料はこの街で手当できます。調味料とか一部の食材は商人から買い付けている様ですけど」


 そうして屋敷を出て10分も歩かないうちに二人は宿に着いた。なんでも商人やレーゲンスからくる客人を止める為に作ったらしい。2階建てのこじんまりとした建物だが看板も何もない。


 女性が扉を開けて先に中に入るとそのままフロントの様な受付に進んでいく。そこにいた女性がダンとデイブを見ていらっしゃいませ。領主様から伺っておりますと言って二人に部屋の鍵を渡してくれた。


「部屋にはお風呂もありますのでごゆっくりしてください。それでは失礼します」


 案内をしてくれた女性が去っていくと二人はとりあえず部屋に入る。2階には8部屋ありダンとデイブは続きの部屋を用意されていた。


「とりあえず身体を洗おう。そうだな1時間後に旅館の1階でどうだ?」


「そうしよう」


 そう言ってそれぞれの部屋に入る。部屋は広くて清潔だった。ダンは部屋に入るとまずは風呂場で旅の垢を落としそれから部屋の窓から外を見てみる。


 犯罪者の街と言われているが全くそんな感じがしない。緑が多くゆったりとした造りの街を見ているとこちらまで気分がリラックスしてくる感じだ。


 1時間後に1階に降りた二人は宿の食堂で昼食を取る。二人とも水浴びをしたこともありスッキリしていた。


「美味いな」


 食堂で出される料理を口にしてデイブが言う。ダンも頷いている。野菜と肉とスープ。野菜はこの街で取れるんだろう。肉もどこからか手当をしているのか街の奥の方に狩場があるのか、いずれにしても新鮮で美味い。


「午後から鉱山の近くまで行ってみたい。一応付近の様子は見ておいた方がいいとおもうんだ」


 ダンが言うと


「街の住民は皆人に言えない過去があるんだろう。その住民を刺激したくはないよな」


「そう言うことだ。俺達は完全に部外者だからな。だから市内をあまりうろつかない様にしようぜ」



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