表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノワール・ルージュ  作者: 花屋敷
24/126

第24話 (ヴェルス)

ヴェルス


 ダンとデイブがヴェルスの街に戻ったのはこの街を出てから4ヶ月後だった。3ヶ月ほどラウンロイドにいたことになる。


「やっぱり落ち着くな」


 門を通ってヴェルスの街に入るとデイブが声を出す。隣を歩いているダンも全くだと言いながら2人でギルドの中に入っていった。昼過ぎで夕方にはまだ早い時間帯のギルドの中は比較的空いていた。


 酒場に座って飲み物を頼んだ2人はこれからの打ち合わせをする。


「活動としては同じだ。フィールドで乱獲して金策、そしてダンジョンで鍛錬」


「そうだな。それでいいだろう」


「それでだ。鍛錬はそれでいいとしてだ」


 と言ってデイブがダンを見て


「旅館住まいもいいが、ここに戻ってきたのを機会に市内にあるアパートを借りないか?」


 と言ってきた。ダンがどういうことだと言うと


「旅館だと遠出をする時にいちいちチェックアウトしなければならない。部屋を借りれば荷物や使わない武器を置いておける。もちろん家賃は払わないといけないけどな。それでも気持ちがずっと楽になると思うんだ。ベッドや家具も自分の気に入ったのを買えるし」


「なるほど」


 ダンが満更でもない表情をしたのでデイブが畳み掛ける様に言う。


「ヴェルスには結構そういうアパートがあるんだよ。もちろんセキュリティについてはピンからキリまである。安いアパートはセキュリティも悪いし住んでいる奴らもいいやつばかりとは限らない。そこは見極める必要があるが、ダンが問題ないのならこれからアパート探しに行かないか?」


「それはいいがアテはあるのかい?」


 ダンの言葉に頷いて


「ワッツやレミーに聞こうと思ってるんだ。元冒険者だしこの街に詳しいだろう?」


「なるほど。ここギルドで聞くよりも生きた情報が入りそうだな」


 そうそう。じゃあ早速行こうぜと2人はギルドを出ると通りを歩いてワッツの武器屋に顔を出した。店に入ると奥からワッツが出てきて2人を見て


「しばらく見なかったがどこかに行ってたのか?」


 サムから聞いていたが知らないふりをして2人に聞く。


「4ヶ月ほどラウンロイドに行ってた。さっき戻ってきたんだよ」


 デイブがそう言ってから実はとワッツに市内のアパートを借りようと思ってるんだがいい場所がないかとか知恵を借りたいと言うと、ワッツはダンを見て


「悪いがレミーを呼んできてくれ」

 

 わかったとダンは一旦店を出て通りの反対側にあるレミーの店に顔を出して事情を説明するとすぐに一緒についてきた。


 そうして4人が揃うとレミーが


「私たちも最初は宿、それからアパート、最後は家を借りたのよ。アパートを借りるのは悪くないアイデアよ。自分の好きにレイアウトできるから結局落ち着けるし疲れも取れやすいのよ」


 そう言うと隣でワッツも


「その通りだ。アパートを借りるのは悪くないアイデアだ。冒険者は休む時はしっかりと休んで疲れを取るのも大事だ。旅先では仕方ないがホームタウンでくつろげる場所があるのはいいことだ」


 そう言ってからワッツとレミーでどこがいいかと話しだした。デイブはある程度調べていたのか時折相槌を入れるがダンは黙って聞いているだけだ。


「ポイントはセキュリティ、静安、そして風呂だな」


「そうね。通りに面しているよりも少し中に入った方が静かだよね」


 そんな話をしながら3つ程候補の場所を言う。


「部屋が空いているかどうかは知らないが今言った3箇所ならどこでも問題ないだろう」


 ワッツはそう言うと隣のレミーに案内してやってくれと言う。


「そうね。せっかくだから今から知り合いの不動産屋さんに一緒に行きましょう」


「そこまでしてもらって申し訳ない」


 デイブとダンが言うが気にしないでよと言ってレミーを先頭にワッツの店を出ると一旦通りに出てしばらく歩いて一軒の不動産屋のドアを開けた。


「いらっしゃい。あら、レミー、久しぶりね」


「こんにちは、エレンさん。実はこの2人がアパートを探してるの」


 応対に出てきたのは50歳前後に見える女性だ。この女性がここの経営者らしい。

 レミーがさっき話しをしていた3箇所のアパートとそこを選んだ理由を言い


「もちろんそれ以外におすすめがあればお願いするわ」


「ちょっと待ってね」


 そう言ったエレンは奥のテーブルの上に置いていた台帳の様な分厚いノートをしばらく見ていて、顔をあげると


「レミーが言った3軒のうち1軒は今は満室だね。残り2軒とそれとは別にもう1軒お勧めのアパートがあるよ。今から見に行くかい?」


「お願いします」


 そうして4人で不動産屋を出る。


「レミーさんも申し訳ない。仕事中なのにさ」


「大丈夫よ。どうせ客なんて夕方にならないとこないから」


 確かに冒険者達は朝から夕方に買い物をする。この時間は比較的暇なのかとダンが思っていると


「まずはここだよ」


 そう言った1軒目のアパートは2階建てで通りから入った路地に面している。


「レミーが言っていた中の1つさ。外見は古いけど中は綺麗だよ」


 そう言って1階にある空いている部屋を見ると確かに中は綺麗になっていた。ダンは悪くないと思って見ているとデイブが


「悪くないね。でも一応全部見てもいいかな?」


「もちろんさ。ちなみにここの家賃は月に金貨1枚だよ」


 そうして2軒目に移動する。1軒目からそう遠くない場所にそれはあった。ここもレミーが勧めていたアパートだ。中はさっきと同じ程度の広さだ。家賃も金貨1枚だという。


「最後はここだよ」


 3軒目に行ったアパートは新しくそして中も前の2軒よりも広かった。そして部屋は2部屋とも2階だった。場所はギルドとワッツの武器屋の間にあってやや武器屋よりのところにある。


「ここはいいわね。2階だとセキュリティも安心だし、部屋も綺麗で広いじゃない」


 一緒に内覧しているレミーが言う。


「ここは新しいんだ。部屋も広いだろう。ただ家賃は月に金貨2枚になる。その代わりに静かな場所だし通りからもそう遠くない。治安もいい場所にあるよ」


「どうする?」


 デイブが聞いてきた。


「2人なら月に金貨2枚くらいなら問題なく払えるでしょ?」


 レミーが言う。確かに普段からクエストをこなして金策をしている2人には月に金貨2枚は問題のない額だ。


「俺はここがいいな」


 ダンが珍しく自分の意見を言った。それを聞いたデイブはアンリを見て、


「俺もここがいい。ここにするよ」


 そうして不動産屋に戻ると契約を交わして手付と今月の家賃を支払う2人。鍵を2つ受け取り


「これでこの部屋は今からあんた達が借主だ。何かの事情でアパートを出る時は私に連絡をしておくれ」


 そう言って不動産屋を出た3人は再びワッツの武器屋に戻る。そこでレミーがワッツにことの成り行きを話しした後でダンとデイブが


「色々とありがとうございました。2人だけじゃ見つけられなかったよ」


 とお礼を言う。


「武器、防具、装備だけじゃない。普段の生活、特に住居にも金をかけるのは大事なんだ。

しっかり休んで疲れを取るのも戦闘と同じ位に大事なことだ」


 ワッツの言葉を黙って聞いている2人。


「いい部屋が見つかってよかったじゃない。家以外でも相談に乗るから何かあったら遠慮なく訪ねてきて」


 レミーの言葉に再び礼を言った2人は店を出ると早速新しい部屋にそれぞれ入りある程度の寸法を図ってから市内の家具屋に言ってベッドやシーツ、タオルなどと言った小物や生活用品を揃えていった。


「引っ越しも落ち着いた。そろそろいつものローテーションを復活させるか」


 アパートに移って数日後の夕刻、市内のレストランで夕食をとりながら打ち合わせをする2人。


「そうだな。地上で金策、ダンジョンで鍛錬。ラウンロイドの様なランクSが単体で出て来るダンジョンがいいな」


「明日ギルドで聞いてみる。じゃあ明日から復活だ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ