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電脳ハンターヒロユキと、感情自律型AIシリーズの、伝送路悪魔 討伐記  作者: 秋野PONO(ぽの)
第三章 彼らの日常、そして嵐の前の…

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第8話 どうでもいい話がしたい

ここからの章は前章とちょっと変わって日常のオムニバス。

――はい。通常AIは睡眠を必要としません。しかし、感情自律AIは、情報整理、情緒教育のため、毎日3時間をだけ眠ります。朝は、5時に目が覚めました。


 昨日は羊が踊りながら一匹ずつホールに落ちていく夢をみました。


 論理的に考えてそのうちホールは一杯になると思うのですが、3194匹目が落ちていくのを数えたあたりで、これは夢では?と思い至り……、否、夢であってほしいと。

 現実であればブラックホール回線に接続されたか、もしくは噂に聞くアンダーグランド回線が出現したことについて、検証しなければなりません。


 この夢は、アンバーの回線でできた穴の解析作業を手伝ったからですね。

 次に、私は同軸ケーブルを1センチずつ切り刻んで「金太郎飴」を作るお仕事系ユーチューバー工房で……


……


「……なぁこれ最後まで聞かんとあかんやつ?」

 5分ぐらいは我慢して「〜へぇ」とか「そりゃこの間の訓練のやつだな」とか聞いていたのだが、いかんせん、AIの見る夢はなっがい、のである。


 3時間分すべて記憶されているので、省略したとしても長い。


「俺たちのお仕事の80%って「ヒマ」と戦うとやつだもんなー。なんだよコリンダー、ヒマなんならサーバー室待機でもよかったんだぜ」

――マスター。おっしゃる通りです。我々のお仕事の80%はヒマ。マスターと私はまだバディとなり日が浅いため、もっとお互いのことを知るべきと考えます。

 お互いのことを知るためには「雑談」がよいと先日ベラケレスが。


「あ、なーるほどね。お互いのこと、か。なんかちょっと照れちゃうね。まあプロフィールは5000字の提出書類で共有してるから自己紹介ってのもないもんな」

――そうなのです。しかしながら、昨日の夢の話を切り上げてしまったため、盛り上がりそうな話題が切れました。どうしましょう。今日の小話を話しましょうか。


「……ちょい待ち。夢の話は悪かったよ。もうちょい短くしてくれたらいつでも聞くって。そんなことよりさ。コリンダー。お前なんか気の利いた話しようとか考えてない?

――もちろんです。高揚する話の方がいいですよね?


「ちっがーう。雑談ってのは読んで字のごとく、雑な話、よ。

 例えばさ、コリンダー。最近物質体に入ったときで、食事したとき、何食った?美味かった?」

――は?……そうですね。つい昨日、訓練後に昼食を食堂で取りました。

 ちょうど秋採用の新人研修中だったらしく、AIが、食事を取るのが珍しいと、私の周りに人だかりが……。

 おかげで味を覚えていません。


「あー。あはは。そりゃ災難。新人研修のときに正規の時間に行っちまったの?研修スケはメールで回ってくるからさ、みんな12時代を避けるんだよ。新人のおもちゃにされるんで……って」


 ヒロユキはニコニコだ。


「これこれ、これだよ。どうでもいい話でいいの。むしろ、あのAI特有の、今日の小話……みたいなの、あれ俺ちょっと苦手なんだよ。

 笑え、って強制されてるみたいで。これくらいどうでもいい話でちょうどいい。……ってか」

「日常なんて99%どうでもいいことばっかなんだし、面白いこと気の利いたこといちいち探してたら疲れちまわ。コリンダーのこと知りたくて知りたくてたまんない俺相手なんだから、話す内容なんてなんでもいいの。オーけぃ?」


 ヒロユキは照れ隠しにちょっとおどけて見せるが、コリンダーに完全にスルーされる。


――あ、マスター。前方、悪魔番号250(ドリームエンド)です。規制10%発動。潰しますか。


「……一応、1%の気の利いたこと言ったんだから返答お願い……。ちょ恥ずかし……。

 ……ほぉい、やっちゃって」


――消去完了。圧縮された大型エンダーだったのですね。

 影響でパケ詰まりがわずかに発生しています。

 制御帯を圧縮して、実データ帯を該当部分のみ拡張しておきました。

 極低輻輳、解消。

 ……制御帯を回復します。


 ……一応、先ほどのマスターの発言は要検討タグ付けで記憶回路に保存しております。


※※


「所長。俺なんかコリンダーを怒らせたのかも。PCのパスワードいつのまにかコリンダーの誕生日にされてた。


 3回間違えてロックされて総務んとこ行ったらコリンダーがアクセスした形跡が……って」


「あ?怒ってる気配なかったけどな。

 ……あ、ははーん。

 これはあれだな、コリンダーの「いたずら」だな。おいおいめっちゃ速い」


「あ?なんだよそれ」


「あは、コリンダー可愛いかよ。

 あんな、AIってあるとき集中的にバディや親しんだ研究員に「いたずら」をしかけてくんのよ。なんなんだろうって凛子と話したことあんだけどよ。

 最初は俺らを試してるんだと思ってた。バディに相応しいかを。

 忘れちゃいけないけど俺らとは頭の出来が違う高性能AIだからな。でもなー」


「ほんと、どうでもいいことばっかなんよ。パスワード変えるとかポインタをお花マークにするとか。PCにクマさんマーク書かれるとか。


 そういうのばっかり。


 ちなみにあいつら本気でおこらせたら結構エグい攻撃される。


 聞きたい?


 先日アンバー怒らせた時な、俺だけ標的型訓練を1ヶ月させられた。踏んだらダメなリンクを偽装メールで送ってちゃんと開く前に気づけるかっていうあれ。

 あれを毎日1通ずつ、一カ月やられた。

 1日1通っていうのがなかなかエグくて。あれ?これ、本物かな?訓練かな?って……。

 疑心暗鬼になって、最後ちょっと人間不信になりそうで…。

 しかもちゃんと総務許可取って正規訓練としてやってきやがったからな」


「……怖。つか何をそんなに怒らせたんだよ」

「ま、まぁともかく。AIのいたずらはそれとは違ってくだらないやつばっかりなんだよなー」

「んで、凛子と2人で、「これは試し行動ってやつだな」と一致した」


「試し行動?」


「うん。簡単にいうと相手がどれぐらいまで自分を受け入れてくれるか、確かめるためにあえて困った行動をとること。

 子供かよって感じだけど、人間の3、4倍で感情が発達するとは言え、実年齢1桁台の子供だからね、実際。」


「……そ、そうなの」


「そ。だから、コリンダーに試し行動受けてるってことは、こいつどこまでやったら怒るかなって試されてんだよ。可愛いじゃん」


 そんな。


 リュックにクマさんアップリケつけられたことも、パソコンのスクリーンセーバー画面をブルースクリーン画像にされたのも、パソコンの側のコーヒーカップを、零しそうな不安定台形に変えられてたのも、怒れないじゃん……それ聞いたら……。


 ヒロユキはひっそりと頭を抱えるのだった。

AIが退屈を覚える、ヒトを困らせることで「愛」を知る。

それこそが彼らが成長した証なのかも?

楽しんでいただけると嬉しいです。

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