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電脳ハンターヒロユキと、感情自律型AIシリーズの、伝送路悪魔 討伐記  作者: 秋野PONO(ぽの)
終章 異変…そして。愛とは…

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第14話 異変

「c地区、半径100メートル内エンダー制圧済み。ほな、よろしくマスター」


 空きラックに増設装置を6台配置する。


 配線まで完了。かちり、と気持ちよい音がしたため配置は全完了だ。


 設定はすべてAutoのため、ヒロユキは起動ボタンを押すだけの簡単なお仕事だ。

 こういった任務では、どちらかといえばエンダーの方がやっかいだ。このあたりは日本のルート線に近いのでエンダーがずば抜けて多い。

「ラック紐ゆるみなし、配線、OK。んじゃいきまーす」


ポチ、とブルーの起動ボタンを押す。連動起動のため、次々と2台目、3代目が起動される。

イレーションが増設元の装置へ直接ログインして初期設定記録をリアルタイム確認する。


ん。おかしいな。回線が増えない。

「きゃぁぁぁ!!」

イレーションの悲鳴が響き渡る。

「どした。イレーション?!」

イレーションがホログラムで空間に映し出した設定画面には設定パラメータが秒速10行の速さで流れていくが、途中から真っ赤な数字の羅列だ。

「げげ。warning(警告)、error(エラー)、エラー、エラー、エラー!なんじゃこら!!」


「そ、それもだけどそれじゃない!!」

 イレーションが慌てて人間用に画面出力を切り替える。出力メッセージを重要な箇所だけにトリミングしてくれたようだ。

 近隣の設定ファイルを書き換えています。成功。成功。

 ……成功。

「マスターぁぁぁ!!緊急。近隣の隣接装置の設定ファイルが消失。どんどん書き換わってるぅぅ。

 装置の緊急停止を施行、……無理!受け付けてくれへんねん!遠隔ログイン拒否ビット立てられてるみたいっ。

 既存解読パターン、全部通用しません……!」


「……イレーション、緊急事態だ。電脳緊急事態条項8条、同意求む。

 多分だけど間違いなく、サイバーテロだ。2人だけで対処は厳しい。

 海外型への専門家が必要。政府専用回線4002番ベラケレス、もしくは電脳ハンター統括エイコへ通信つないで。早くつながった方でいいので、つないで」


 イレーションが半泣きの瞳でうなずき回線起動する。


 ほどなく、眠たそうな声のベラケレスが応答する。


ーなんですかぁ。今日わたし休みなんですけど。

 なんですかヒロユキそこの小さいのは。あ?ウェスト最新型Ab102「イレーション」じゃないですか。コリンダーどうしたんですか?


「ベラケレス!!伝送路K地区。サーバーテロだ。設定書き換え型。

 近隣の隣接装置の設定ファイルが消失。

 解除施行したが適合パターン無し!」


――承知しました。まだ眠いんですが非常事態なんですね。電脳回路をたたき起こしてみましょう……。マスターを本部へ呼びます。このまま回線を開きながら本部へ移動しますので説明しなさい。

 一番重要なことを聞きますよ。K地区のみですか?見解を述べてください。


さすがベラケレス。海外型は同時多発ケースが多いのでしかるべき確認だ。


「そこなんだよな…。それがわかんね……いや……、あると思う!

 流れるエラーメッセージの中に、遠隔ログイン、っていっぱい出てたから、多分絶対別地点でも発生している!物理線干渉メッセージも出てた!」


――わかりました。こら、そこの小さいの。私が物理線領域のスキャニングをしますので伝送路仮想側をスキャンしなさい。

――む……無理やぁ!一人じゃ無理やわ!こっちの電磁波妨害風が強すぎて電磁スキャニングが西日本の5分の1もでぇへんのよ…!


――ち。未熟者め。こういうときは電磁波じゃなくて元電圧を使うのですよ。


 ……いいです。こちらでトリアージします。

 全回線のサンプル抽出。電脳緊急事態条項12条広範囲スキャン条項に同意します。


 ……広範囲における目視での確認は困難のため、全域に微弱電圧を荷電、抵抗値から被疑箇所測定します。


 緊急度1番目:災害用緊急回線用伝送路8080番、コリンダーの回線。C地区、K地区、O地区。


 パケットへの偽装データ付加箇所、10か所発見。

 この数値から推測して、この3領域だけで20万は偽データが存在しますね。

 たった数分でよくここまで広がったものだ。

 イレーション。C地区、K地区、O地区のスキャンおよび封鎖をお願いします。

 本部に到着しました。マイマスター・エイコ。伝送路仮想側スキャンの、イレーションへの指示、引継ぎお願いします。私は物理線領域のスキャニングに入りますので。


 ベラケレスの怒涛の指示に、イレーションが目を回している。

「電圧スキャニングとかまじいう?扱い間違えたら私消し飛んでしまうやん…。

 なんでそんなに扱えるん。バケモンか。」


「はぁい。バケモンの相棒のエイコです。イレーションね。あれね。コツがあるの。電圧を最小単位に固定して。……そう。おっけ。

 ヒロユキ。もう大丈夫だから安心して。

 現存データはスピード優先でudpに変更。

 今あるデータを迂回路を通して流せるだけ流してから閉じます。

 一帯のハンターには、こちらから避難指示します」


「助かる!よし。んじゃあとは俺らが避難路から逃げれば……」


 ……言いかけたとき、ヒロユキとイレーションの空間が奇妙にねじれた。


「ヒロユキ!やばいのある上!退避!」


 エイコに言われた瞬間、嫌な風を感じたような気がして、ヒロユキはイレーションを担いで走った。

 担がれたイレーションがバランスを崩したらしくヒロユキにしがみついて近距離スキャンを起動させる。


「なにあれぇぇ!?」

 頭上に竜巻のような固まりが浮いている。


「ベラケレス?!」

 叫ぶエイコ。

 ベラケレスがエイコの手からモニタを奪い取る。


――これは……伝送路ワームホール……!まさか?!

 よほど焦ったのだろう。

 説明が人間向けでない。ほとんど独り言だ。

――理論上は実現可能だが?発生を確認したケースは1件もなし。


 これは……そこの狂った回線装置が真正乱数発生器の役割を果たしていますね。

 通常は均等値で乱数を発生させていきますが、統計的なばらつきの範囲を超えて1発生が集中しています。

 乱数位相が身近にいる強力な感情型AIの電位に引きずられており、位相の虚数反転により……。


「……ごめんベラケレス!俺にもわかるように説明して!!」


 通信越しのヒロユキが怒鳴る。ベラケレスは我に返ったようだ。


――承知。猿でもわかるように話しましょう。でっかい穴が開いてパケットが吸い込まれてます。

 圧が強すぎて修復不可能。

 やむなし。伝送路、緊急回線を除く全回線を、閉じます……

 回路を閉じてコリンダーに……

 ……コリンダーの電磁シールドなら……


本部からの音声が徐々に小さくなり、フェードアウトした。

「クソッ!ホール吸収圧が強すぎて空間が狂ってきてる」


 イレーション経由の通信も無反応、通信サークレットも周波数が狂っていることを確認し、ヒロユキはサークレットを床に叩きつけた。

「さあて。逃げるぞイレーション!」

 イレーションを担いだままワームホールとは反対側に走りかけるヒロユキ。

 そこに声をかけたものがいる。

「ヒロユキさん!」

 走ってきたのだろう、息を切らした長身の青年である。


「アンバー!助かる!緊急避難経路作成手伝ってくれ!!」

「はい!先ほど偶然緊急通信ハックして事情は理解しました!イレーションをこちらに!」

 おう、と答えてアンバーに近づく。


 ……ふとした、違和感。


 念のためアンバーの認証パターンを検証する。合致。

 気のせいか?


 さらに念のため。通信サークレットの記録機能ONにする。

 イレーションをアンバーに引き渡し……。

 イレーション?!

「……アンバー。一つ聞きたいんだが、さっき通信ハックしたって言ったな?


 イレーションの通信秘匿キーは、ウェスト側の機密情報だ。イーストの人間がどうやってハックするんだ…?」


 アンバーの表情が変わる。ヒロユキはイレーションを抱えなおし、アンバーの細い体を蹴り上げた。


「おまえ。アンバーじゃないな?」


「……なんとまぁこんなにすぐばれるなんて……」

 声は後ろから来た。同時にヒロユキは頭に重い打撃を受けて、その場に倒れ伏していた。

よろしければ評価、イイネボタン、感想などいただけるととても嬉しいです。感想は、1話読んだだけだったとしても、喜びます。

次、ちょっと閑話入ります。


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