62 魔狼ダンジョン②
ファイアウルフの体内から魔石を取り出す。
その魔石が透明であることを確認した俺は、小さく肩を落とした。
「やっぱり1体目からレア魔石は出ないよな……」
このダンジョンに出てくるウルフ系の魔物からは、通常と違うレア魔石が取れることがある。
例えばこのファイアウルフならば、火属性の魔力を吸収した赤色の魔石といったふうに。
魔狼ダンジョンのボーナス報酬が欲しければ、
・ファイアウルフ
・ウォーターウルフ
・ウィンドウルフ
・アースウルフ
・ライトウルフ
・ダークウルフ
・ポイズンウルフ
・パラライズウルフ
・スリープウルフ
これらの魔物、通称魔狼から計9種類を手に入れなければならない。
「入手確率は1つにつきだいたい50分の1って言ってたっけ? 先はかなり長そうだな」
合計で500体近くのウルフを倒さなければならないことを面倒に思いつつも、俺は先に進み続けるのだった。
「これで――100体目!」
ザシュッと、無名剣がここまで100体目となる魔狼の首を刎ねた。
ちなみにファイアウルフの赤魔石は40体目で入手でき、いま倒したのはアースウルフだ。
取り出した魔石は透明ではなく茶色だった。
「よし、当たりだ!」
これでようやく2つ目をゲットした。
ただ、ここまで約一時間半もの時間を消費している。
このペースだと9つ集めるのに6時間以上かかりそうだ。
「まあ、本来ならパーティーで分散して集めるはずの作業だからな。何時間以内にクリアしないといけないみたいな条件はないにしろ、長時間ダンジョンに潜り続けるのもあれだし、急ぐしかないな」
今までは手当たり次第、魔物を討伐し続けていたが、ここからはファイアウルフやアースウルフと戦う時間が無駄になる。
もっと効率的に行くべきだろう。
「まずは索敵っと」
広範囲に索敵を使用すると、ここから2つ下の階層にウォーターウルフが5体集まっているのが分かった。
同時に5体相手にするのは面倒だが、そうも言っていられない。
「ダンジョン内転移」
その場所まで数十秒で転移し、さっそく襲撃を仕掛ける。
突然現れた俺に反応が遅れている隙に、素早く2体の首を落とす。
「バウッ!?」
「ガルゥ!」
ここでようやく2体のウォーターウルフが水のレーザーを放ってくる。
だが、無駄だ。
「遅い!」
苦し紛れの反撃をかわすのは簡単だ。
俺は攻撃をかいくぐって2体に接近し、右手で持った無名剣でそれぞれの腹と首を斬った。
「グルァアアア!」
残る1体が、隙だらけな俺の左側から大きく口を開けて迫ってくる。
しかし――
「かかったな」
――アイテムボックスから霧久地の短剣を左手に取り出し、下から上に振り上げた。
無名剣に比べたら攻撃力が劣るとはいえ、それはステータスの値でカバーできる。
刃はいとも容易く、ウォーターウルフの顎を断ち切った。
「グゥ!?」
突然のダメージにうろたえる敵に対して、そのまま無名剣を振るう。
それがトドメとなり、5体全ての討伐に成功した。
その後、5体から魔石を取り出すと1つだけ青色に輝いていた。
「おっ、マジか! たった5体で入手できたのは大きいぞ」
これで倒さなければならない数はかなり減るはずだ。
まあ、その分他のところで苦戦する可能性はあるが。
なんにせよ同時に5体と戦えたこともあり、時間をかなり節約することができた。
「広範囲の索敵とダンジョン内転移の使用でそれなりにMPは消費するけど、その分の効果はあるな。普通の探索と適度に切り替えながら行こう」
そう呟き、俺は再び索敵を使用するのだった。




