57 有川ダンジョン瞬殺記
朝食を取り、華を見送った後、俺は有川ダンジョンにやってきていた。
Eランクダンジョン【有川ダンジョン】。
ダンジョン攻略報酬は2レベルアップ。
俺は過去に2度クリアしたことがある。
道中に出てくる魔物はウルフが最も多く、普通の狼と戦闘力はそう変わらない。
冒険者として少し経験を積んだ者なら、誰でも倒せるような敵だ。
「紫音ダンジョンもそうだけど、まさかまたEランクダンジョンを攻略することになるとはな。ま、ダンジョン踏破数を増やすためだ。頑張るとするか」
それから、俺はダンジョン踏破数の他に、一つ目標を立てていた。
他のダンジョンに行く前に、手に入れておきたいスキルがあるのだ。
「そのスキルを手に入れるためにも最低100レベルアップを目指して――よし、いくか!」
そんなこんなで、俺は有川ダンジョンの攻略を開始した。
道中に出てきたウルフたちは当然ながら敵ではないため、たまに戦う機会があるときはデコピンで倒していった。
このあたりにいるザコ敵を幾ら倒したところで、レベルが上がることはもうないため、無名の剣豪の称号効果を気にする必要はない。
ボス戦の時にだけアイテムボックスから無名剣を取り出し、一刀のもとにぶっ倒していく。
『ダンジョン攻略報酬 レベルが2アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが2アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが2アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 …………
「これはこれで割とめんどくさいな」
30周目を超えたころ、無名剣を出し入れするのが面倒なことに気付いた。
こんなに早く気付くとは、やはり俺は天才だったのかもしれない。
そんなわけで、俺は無名剣は片手に持ち、近付いてきた魔物は蹴りだったり、無名剣でちょんっと突いたりして倒すようにした。
なんならボスすら突いて倒せた。
ぐんぐんと周回速度が上がっていく。
その結果、今回は2日目にして踏破することができた。
『ダンジョン攻略報酬 レベルが2アップしました』
『貴方は本ダンジョンを規定回数攻略しました』
『ボーナス報酬 レベルが5アップしました』
『今後、貴方が本ダンジョンを攻略しても報酬は与えられません』
「一瞬だったな……」
たった2日で148周もしてしまった。
まあ、階層が少なかったのもあるけどな。
なんにせよ、俺は2レベル×148周+ボーナス報酬5レベルの、計301レベルアップした。
……あれだけギリギリの戦いを繰り広げた末に勝利したオークジェネラル戦の報酬とそう変わらないことに対し、少しだけため息をつきたくなった。
気を取り直して、現状を把握する。
「これでレベルは3357に、SPは7010になったな。うん、文句なしだ!」
俺はステータス画面を開き、新規スキル欄からとあるスキルを探し出す。
そして見つけた。
「あった……隠蔽」
取得に必要なSPは5000。
これまでのスキルとは明らかに数値が異なっている。
それだけ大量のSPを必要とするこのスキルにできることは、たった一つ。
――ステータス情報の書き換え。
その能力こそ、俺が今最も欲しているものだった。




