56 家族の朝食
「ん~、よく寝た!」
剣崎ダンジョンにて迷宮崩壊が発生した翌日。
疲労が溜まっていたため、昨日はいつもより早くベッドに入った。
おかげで今はすっきりだ。
リビングに行くと、華が既に朝食を食べ始めていた。
「あ、おはようお兄ちゃん」
「ああ、おはよう」
席につきテレビを見ると、朝のニュース番組がやっていた。
ちょうど今はダンジョン特集だ。
今日も今日とて、色々な事件について伝えている。
他県にて新しいダンジョンが出現したため、初挑戦に参加する5000レベル以上の冒険者を募集中だとか。
それなりに近場のBランクダンジョンで、魔物を使役できるユニークスキルを持つ優秀なテイマーが不審な死を遂げただとか。
中でも世界ランク300位以内、すなわちレベル10万超えの中に日本人が新たに加わったというニュースは、ことさら大きく報道されていた。
しかし、俺が何よりも注目したのは、剣崎ダンジョンにおける迷宮崩壊についてのニュースだった。
……そりゃ、取り上げられるよな。
最近、ラストボスに挑んで敗北するなんてことは起きてなかったし。
まあ、そもそも迷宮崩壊自体がめったに起きないんだけどな。
基本的にほとんどのダンジョンは崩壊を起こさず自然消滅するし。
報道の中では、独断でラストボスに挑んだ風見たちを非難する声もあれば、自己犠牲の精神を称賛する声もある。
ただどちらかといえば、唯一生き残った冒険者――ニュースで名前は出ていないが、零に関する話題が多かった。
目の前で起きている死闘を何もせずにただ見届けていた恥知らずだと、その場にいなかった奴らが好き勝手言っていた。
……零には悪いことをしたな。
俺の嘘に付き合わず本当のことを話していれば、もう少し風当たりがよくなったはずだ。
今度、何かしらの形で謝罪しておこう。
一応、連絡先は交換したからな。
そんなことを考えている俺の前で、華も興味深そうにニュースを見ていた。
「剣崎ダンジョンって、都心にあるダンジョンだよね。そんな近いところでこんな出来事があったなんて怖いね、お兄ちゃん」
「ん? ああ、そうだな。華も巻き込まれないように気を付けるんだぞ」
「任せて、逃げ足だけは速いんだから! あ、でもでも、それよりもお兄ちゃんがラストボスを倒せるくらい強くなって、私を守ってよ。隣町の朝倉さんとこのお子さんは、お兄ちゃんと同い年なのにもうAランクダンジョンに挑戦してるって言ってたよ? お兄ちゃんも頑張ってね!」
いや、だから誰だよ朝倉さんって。
……と、言ってやりたいところだが、
俺は不敵に笑ってみせる。
「ああ、任せろ。華の身に何かあった時、俺を呼べば必ず助けてやる」
「あ、あれ? まさかのお兄ちゃんらしくない反応? ふ、ふーん、まあそれならいいんだけどね。にしても即答だなんて、まったく、お兄ちゃんは重度のシスコンなんだから。あー、困っちゃうなー」
おい華。
事実でも言っていいことと悪いことがあるって学ばなかったのか?
まあ、そんな冗談(事実)はさておくとして。
俺と華の朝食の時間は、そのまま楽しく続いていくのだった。
次からレベリング回です!




