表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最速のレベルアップ ~無能スキル【ダンジョン内転移】が覚醒した結果、俺だけダンジョンのルールに縛られず最強になった~  作者: 八又ナガト
第一章 ダンジョン内転移の覚醒

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/225

34 VS無名の騎士 後

 勝ち目のない強敵を前にして、俺は自分がするべきことを決断した。

 ああ、そうだ。こうなってしまったからには、ダンジョン内転移で逃げるのが正しい選択なんだと。

 だから俺は――


「悪いな、時間稼ぎだ」


 アイテムボックスから入手したばかりの爆煙魔石(ばくえんませき)を取り出し、魔力を込めてから無名の騎士(ネームレス・ナイト)目掛けて投げた。


 その次の瞬間、爆煙魔石は激しい爆発音と共に、大量の煙を辺りに噴出した。

 これによって俺と無名の騎士はお互いの姿を目視できなくなる。


「――――!?」


 煙の奥で、無名の騎士が戸惑っているのが分かる。

 この煙は視界を奪うだけではなく、魔物が嫌がる成分がふんだんに含まれているため、本能的に忌避感があるのだろう。


 ただ、さすがは知能のある敵といったところか。

 無名の騎士は数秒も経たないうちに、剣を力強く振るうことで煙を払う。


 だけど無名の騎士が俺を目視できるようになったとき、既に()()を発動するための時間は稼ぎ終えていた。


 そして俺は、現状を打破する一手を口にする。




「ダンジョン内転移」――と。




 俺の保有するユニークスキル【ダンジョン内転移】が無能だという噂が広まった時、周囲の冒険者から口々にこう言われた。

 お前は冒険者に向いていない。

 冒険者を辞めて、普通の職業についた方がいい。

 この先、ダンジョン内転移が有用なスキルに覚醒すると信じるのは意味がないと。


 本当は俺も分かっていた。きっと、彼らの言葉の方が正しいと。

 ただ妄信的に自分を信じ、強くもなれない、稼げもしない冒険者を続けている自分の方が間違っているって。

 それでも俺はただひたすらに、前へと進み続けた。


 正しくなくても関係ない。

 どれだけ愚かでも構わない。 

 自分の信念を貫く方が、周りが言う正しい道とやらを歩むことよりよっぽど大切だったから。


 だから、今、この場所で。

 絶体絶命のこの状況で、ダンジョン内転移を発動して逃げることこそが正しい選択だったとしても。

 そんなもの――――心の底から、くそったれだと否定してやる!

 

 正しさの前にこうべを垂れるなら。

 絶望の前に膝を折るなら。

 実現困難な夢の前に足を止めるなら。


 きっと、俺は――――




「とっくの昔に、冒険者なんて辞めてるよ」




 そんな、俺の言葉を聞いて。


 ()()()()()()()()()()()()()は、驚愕したかのように急いで振り向こうとする。


 しかし、もう遅い。

 俺は夢見の短剣を両手で構えていた。


 先ほど、俺が爆煙魔石を投げた後、ダンジョン内転移を発動するまでにしていたことが2つある。

 1つは中級の体力回復薬を飲むこと。これによってHPを1315から2315まで回復させた。

 そしてもう一つは新たなスキルの選択だ。


 あの一瞬で、俺はステータス画面を操作してとあるスキルのLVを上げた。

 1100SPを使用し、攻撃力を上げてくれる剛力をLV4からLV6にへと。

 これによって攻撃力が+500から+1050に上がる。


 その後は説明するまでもない。

 ダンジョン内転移を発動した俺は部屋の外ではなく、無名の騎士の背後に転移した。

 全ては隙だらけの敵に致命的な一撃を浴びせるために。


 ダンジョン内転移は発動に時間がかかるため、戦闘中にそう何度も使うことはできない。

 これが最後の機会(チャンス)だと考えるべき。


 ――今こそ、反撃の瞬間(とき)だ!


「喰らえぇぇぇえええええ!」


 力強い踏み込みと共に、夢見の短剣の切っ先を、無名の騎士の無防備な背中目掛けて全力で突き刺す。

 限界まで高めた攻撃力のおかげか、これまではかすり傷を与えるのが精いっぱいだった鎧に大きなヒビが入る。


 しかし、あまりにも出力が高すぎたのだろうか。

 その代償に、短剣の刃が粉々に砕け散った。


 だが――


「まだだ!」


 アイテムボックスからオークの石斧を取り出し、再び振るう。

 使用感は短剣とかなり異なるが、鎧を破壊するという意味ではむしろこちらの方が適している!


 その予想は的中した。

 オークの石斧によって、無名の騎士の背中側の鎧が粉々に砕け散る。


「あと一撃――ッ⁉︎」


 しかし、このままやられてくれるほど無名の騎士は甘くなかった。

 恐るべき反応でその身を翻し、俺と真正面から向かい合う。


 ただ、それすらも俺の想定内だった。


「もう一本、もらうぞ!」


 無名の騎士が攻撃に移るよりも早く、石斧を奴の左肘目掛けて振り下ろす。

 そして、鎧ごと腕を叩き切った。

 左腕と剣が、勢いよく宙に舞う。


 両腕を失い、武器を扱うこともできず。

 普通ならば全てを諦めてしまうこの状況で、なお無名の騎士は抗う意思を見せる。


「ァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!」


 言葉にならない咆哮を上げ、鎧の奥の瞳が赤く光る。

 死ぬ直前になって、ようやく全てのリミッターが解除されたかのように。


 だけどもう、お前の番は回ってこないよ。


「今度こそ、終わりにしよう」


 石斧を投げ捨て、俺は空中を舞う剣を掴む。

 鑑定を使用する余裕がないため確認できないが、これだけの強敵が扱っていた剣だ。

 夢見の短剣やオークの石斧とは比べ物にならない性能なのだろう。


 無名の騎士が片手で持っていたその剣を両手で握り締め、上段に構える。

 理性を捨て本能のままに襲い掛かってくる無名の騎士の突進を、俺は真正面から迎え撃った。



「ガァァァァァアアアアアアアアアア!」

「うおぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」



 天地一閃。

 上段から真っ直ぐ振り下ろす、ただそれだけの単純な攻撃。

 単純だからこそ、最大火力の一撃となり得る。


 そしてその可能性は今、現実のものとなる。


 体を真っ二つに両断された無名の騎士が、その場に崩れ落ちていく。

 立っているのは、剣を振り終えた俺だけだった。


 俺は剣を杖のようにして崩れそうになる体を支えると、今はもう灯の消えた強敵に向けて、最期の言葉を投げかける。


「……間違いなく、俺が今まで出会った中で最強の敵だったよ――無名の騎士(ネームレス・ナイト)


 かくして、俺は無名の騎士に勝利するのだった。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


無名の騎士(ネームレス・ナイト)(つるぎ)

 ・無名の騎士が装備していた剣。

 ・装備推奨レベル:1000

 ・攻撃力+1000

 ・敵のレベル(討伐推奨レベル)が自分より高かった場合、HPとMPを除くステータスの全項目を+20%。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

決着。


【恐れ入りますが、下記をどうかお願いいたします】


今回の無名の騎士戦が面白かったと思っていただけたなら、ブクマや評価の方をしていただけると励みになります。

これからも、今回のように熱いバトルを書いていきたいと思うので、よかったぞ! という意見をお聞きしたいです。


評価は画面下の「☆☆☆☆☆」から入れることができます。


皆様の応援が、大きな力になっています!


何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
めちゃくちゃ良かったです! 応援しています。
背後を取ったくらいで攻撃力と耐久力特化の敵に勝てるものなのかな レベルアップが早いだけで持っているスキルが特別とか攻撃力特化でもない上に300レベルの差があるはずなのに 人よりSPの取得量が多く同じレ…
2回目読み直してるが、この回はやはり激熱ですな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ