26 かつての
翌日。
俺は早朝から剣崎ダンジョンにやってきていた。
そして、人の賑わいぶりに驚くこととなった。
「本格的にダンジョン攻略を生業にしている人の中では、Cランク冒険者が一番多いって話は聞くけど……本当だったんだな」
それに、EランクやDランクの冒険者とは違い、Cランクともなれば装備もしっかりしている。
敵の攻撃から身を守る鎧に身を包んだり、魔力伝達を上昇させてくれる杖を持ったりと様々だ。
俺のように、軽装に短剣一振りの者は非常に少ない。
あと気付いた点として、俺以外にはソロで挑戦しようとしている奴はいなさそうだ。
それもそうだろう。ランクが上がるほど何が起きるのかが分からなくなるのがダンジョンだし、それに対応するためには人員が必要だ。
ダンジョン攻略を目標とするなら、人がどれだけ増えてもレベルアップには問題ないしな。
そんなことを考えながら、ダンジョンに入るための列に並んだ、その時だった。
ざわざわと、周囲の冒険者たちが騒ぎ始める。
「お、おい見ろよあれ。最近噂になっているパーティーじゃないか?」
「知ってるぞ。確か所属するメンバー全員がユニークスキル持ちで、冒険者デビューからたった一年で2000レベルに到達した怪物だろ?」
「ああ、様々な有名ギルドから勧誘されても、なぜか全部断っているらしい。けどなんでそんな奴らが剣崎ダンジョンにいるんだ?」
「さあ、分からん。普通だったらもっと上のレベルのダンジョンに挑んでいるはずだが……」
その会話を聞き、俺は思わず振り返った。
遠くから、5人の冒険者が固まってこちらに向かってくる。
俺はそいつらの顔を見て目を見開いた。
「あいつらは、まさか……」
そこにいたのは、見知った相手だった。
じっと見ていたせいだろうか。先頭にいる金髪の男が俺の存在に気付き、少しだけ驚いたような表情を浮かべた後、こちらに近付いてくる。
「やあ、天音くんじゃないか! 奇遇だね、こんなところで会うなんて!」
そして、薄っぺらい笑顔を浮かべながらそう話しかけてくる。
よくそんなふうに接することができるなと、心の中で悪態をつく。
けれど、それを表に出すほど俺は子供じゃない。
「ああ……俺も驚いてるよ、風見」
冷静さを保ちながら、返答する。
その裏で思い出されるのは、一年前の記憶。
この男の名前は風見 信。
俺と同じタイミングで冒険者になり、ユニークスキルに目覚め、共にパーティーを組んだかつての仲間。
そして、俺が無能と蔑まれるようになったきっかけの人物だった。




