16 ボーナス報酬
「よし、準備完了っと」
翌日。
夢見ダンジョンにやってきた俺は、さっそく昨日編み出した方法でダンジョン攻略を開始した。
「ダンジョン内転移。ダンジョン内転移。ダンジョン内転移。ダンジョン内転移。ダンジョン内転移」
何度も、何度も、何度も。
繰り返しダンジョン内転移を発動し、超速でダンジョンをクリアしていく。
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
瞬く間のうちに11周を終える。
途中、一度だけハプニングがあり、他の冒険者パーティーと鉢合わせた。
すぐにその場から全力で逃げ出したため、正体を確かめられずには済んだが、かなり危なかった。
突然空中から落ちてくる男性冒険者……彼らはいったい、俺をどんな気持ちで眺めていたんだろう。
とても気になるところだが、聞くのが怖くもある。
ええい、忘れてしまおう!
まあなんにせよ、これから超速レベルアップをする時は、顔を隠せる服装で来た方がいいのかもしれないと思った。
「よし、まだまだいくぞ」
朝早くに来たこともあり、これだけ攻略を繰り返しても、まだ正午にもなっていない。
集中力が限界に達するまではもう少し余裕がある。
この調子ならば、軽く20周を目指せるであろうと思った矢先だった。
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
12周目。
ボスのハーピーを倒すと、いつものようにレベルアップを示すシステム音が脳内に鳴り響く。
想定していなかった現象が訪れたのは、この直後だった。
『貴方は本ダンジョンを規定回数攻略しました』
『ボーナス報酬 レベルが20アップしました』
『今後、貴方が本ダンジョンを攻略しても報酬は与えられません』
「……なんだ、これは?」
それは、今まで聞いたことがないようなシステム音だった。
規定回数? ボーナス報酬? いったい何の話だ?
色々と疑問が浮かび上がるが、そんなことを考えている間に、帰還用の転移魔法が発動し地上に追い出される。
そこで俺はいったん攻略を中断し、今の出来事が何であったかを考える。
「規定回数はともかく、ボーナス報酬ってのは聞き覚えがあるけど……」
通常とは違うシチュエーションでダンジョンボスを倒した場合に、ボーナス報酬は与えられる。
例えば、俺が愛用している夢見の短剣は、夢見ダンジョンを初回かつソロで攻略した際に与えられたボーナス報酬だ。
その他にも、通常のボスよりも強力なエクストラボスを倒した時や、崩壊しかけのダンジョンのラストボスを倒した場合など、様々なシチュエーションでボーナス報酬は与えられる。
だから、ボーナス報酬自体はそこまで特別な何かではないのだ。
「となると、むしろ気になるのはこっちだな」
俺が視線を向けた先にあるのは、『規定回数』という単語と、『今後、貴方が本ダンジョンを攻略しても報酬は与えられません』という文言だった。




