第87話:魔法書が見つかったんだが②
入室を許可すると、役人が入ってきた。
「こちらご確認いただきたい書類です」
「……相変わらずなかなかの量だな」
とはいえ、以前に比べればかなり俺の業務量は減っているように思う。
レグルスが単独で判断することも増えたし、役人のレベルも上がっている。
時間の問題でもっと圧縮されていくかもしれない。
「それと、本日はもう一つご報告が」
「ん、なんだ?」
定例の報告以外に役人から何か報告があるときは、大抵がかなり重要な案件であることが多い。
「実は、先日ユーキ様が持ち帰られた書物のことで分かったことがありまして」
「ああ、あれか」
謎の隕石の調査で見つけた古代遺跡と思しき場所。そこで見つけた五冊の本のことを言っているのだろう。
「実は、以前にも他国で似た書物が発見されていたそうです」
「……っ! それは本当なのか……⁉︎」
「そう聞いています。白い装丁の本とのことでした。学者も解読に失敗した模様です。特徴は一致するかと……」
俺が既に手に入れた魔法書は、火属性・水属性・風属性・地属性・闇属性の五冊。
もし六大属性全てにそれぞれ対応する魔法書が存在しているのだとすれば、残り一冊は聖属性の魔法書。
聖属性のイメージとして白は自然と受け入れられるし、可能性は高そうだ。
「それで、その魔法書は今どこにあるんだ?」
「ヴィラーズ帝国が保存しているようです」
「……そうか」
ヴィラーズ帝国というのは、オズワルド王国の隣国であり、アレリアの故郷。
旧王国時代は、王国側の亜人に対する扱いが問題化し、良好な関係とは言えなかったようだが、新王国になってからはある程度関係は良くなっている。
しかし、国が保管しているとなれば、入手は困難を極める。
魔法書らしき本が帝国内でどのような扱いになっているのかはわからないが、一度は研究対象になったのだ。
おいそれと簡単に渡せるものではないのだろう。
「帝国にあるなら、私がどうにかできるかもしれません」
諦めかけたその時、アレリアがそんなことを言った。
「父に頼み込めば多分どうにかなるかと……。それに、魔法書はユーキ以外には価値がないものだと思いますし」
「いや、でも……そんなの、いいのか?」
「私はユーキのお役に立ちたいです。でも……一つだけ条件を聞いてくれますか?」
「条件?」
その条件にもよるのだが、俺にできることならやることに抵抗はない。
魔法書に固執する必要はないのだが、残り一冊ならできれば集めたい。





