第164話:魔人と戦うことになったんだが④
まだ予測に過ぎないが、魔人の『硬化』は一回の使用で同一の攻撃を何度でも防げるんじゃないか? 逆に、複数種類の攻撃を同時に防ぐことはできない——そう考えると、アイナの攻撃だけが通っていた事実と辻褄が合う。
じゃあ、アイナに先に攻撃をしてもらって、『硬化』を無効化したところで俺の攻撃を当てれば……いや、これじゃダメだ。
魔人も『硬化』で無効化する対象を選べるはずだ。俺とアイナの攻撃、どちらを優先して防ぐか考えれば結果は自ずと分かる。
となると、俺が複数種類の魔法を同時に当てることができればいいが……これも無理だな。今の俺では、まだ別種類の魔法の並行使用はできない。
現実的に可能なプランとしては——
「こうするしかなさそうだな」
アイテムスロットから魔剣ベルセルクと聖剣エクスカリバーを取り出す。
そして、『メテオスコール』の発動準備を始めた。
メテオスコールは六属性の魔力弾が入り乱れた雨を降らせる俺のオリジナル魔法である。オークキング戦で既に有効性は確認済みである。
魔法の並行使用ができないなら、魔法と剣で同時に攻撃すれば良い。
最高峰の剣技と、最高峰の魔法を同時に使える存在である『賢者』だからこそできるパワープレイ。
結界魔法の傘で俺自身に攻撃が当たらないようにだけ注意し、剣か魔法、どちらかで魔人を仕留める。
「これで終わりだ」
俺は、自分にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟く。
そして、魔人の懐に飛び込んだ。
「ユーキ、そっち違う!」
後方からアリスの声が聞こえた。
ん、何が違うんだ……?
よくわからないが、今は目の前のことに集中だ。
色とりどりの魔力弾の雨が降る中、俺は二本の剣で魔人を攻撃!
だが——
「魔人が消えた……!?」
俺が剣を振った瞬間、魔人の姿が霧のように消えてしまい、少し離れた場所にワープしてしまった。
いや、違う。
魔人は元からあの場所にいた。間違いない。
俺が魔人のいる場所を見失っていたことが直感的に分かった。
これが二つ目のスキル『撹乱』の効果なのか……?
「くっ……」
一旦俺は魔人と距離を取り、プランを練り直すことにした。
そういえば、アリスは俺が魔人に攻撃する前に注意してくれていた。どうして分かったんだ?
アレリアとアイナの二人も俺が攻撃を空振りしたときは驚いた様子だった。となると……アリスと俺たちで見えている景色が違うことになる。
「アリス、もしかして魔人の正確な位置が見えてるのか?」
「うん。こういうの得意」
どういう理屈で……ってのがすごく気になるが、とりあえず後回しだな。とりあえずこの場を切り抜けるのが優先だ。
「魔人のところまで誘導してもらうことってできるか? 自分の目が信用できないんだ」
「それは……ちょっと難しい。素早いから……」
確かにな……。
目まぐるしく動き回るリアルな戦闘では、口頭で位置を伝えてもらった時には既に遅い。
「じゃあ、スイがご主人様の目になる〜!」
「え?」
目になる……ってどういうことだ?
さっぱり見当がつかない。
「アリス、スイを抱いて〜」
「こう?」
アリスはスイに言われるがまま、小さな胸にスイを抱いた。
その瞬間だった。
「なっ……何だこれ!?」
俺の目から見える視界と、アリス視点の視界の両方が俺の脳内に流れ込んできた。二つの視界が混在する奇妙な世界。だが、不思議と混乱はせず、俺の脳は別々の情報をしっかり処理できていた。





