第153話:夕食に来たんだが①
◇
「なんとか部屋が取れて良かった……」
今日泊まる宿のロビーを出てすぐ、ミーシャはホッと息を吐いた。
チェックインの手続きはミーシャが率先してやってくれた。細々としたこともこれまでは俺が引き受けていたので、非常に助かる。
リオン村は、シーゲル帝国の辺境ということもあり冒険者の行き来が少ない。そのため、普通ならこの時間でも多少の空きがあることが多い。
だが、俺たちは温泉がある宿に泊まりたかったため、選択肢が狭かった。
リオン村は温泉が有名。どうせなら名物の温泉を楽しみたかったのだ。
いくつか宿を周ったが、既に満室。最後に立ち寄った小さな宿で五人用の広い部屋が急遽空いてしまったらしく、運よく滑り込むことができた。
「じゃあ、早速温泉に……」
「あ、それなんだけど!」
右手に部屋の鍵をぶら下げたミーシャは、慌てた様子で俺を静止した。
「ちょっと清掃するから二時間後に来てって宿の人が言ってたよ」
「そうなのか? じゃあ仕方ないな。先に飯にするか」
普通、浴場の清掃は深夜にするものだと思っていた。まあでも、異世界では日本の常識が必ずしも正しいわけではない。そういうこともあるのだろう。
この時間からの素泊まりだと夕食の提供はない。俺たちは夕食を食べられる場所を求めて村をブラつくことにした。
リオン村は、村という名前を冠しているものの、温泉街ということでそれなりに賑わいがある。夕食を食べられそうな場所はすぐに見つかった。
「ユーキ、あそこにしましょう!」
アレリアが指を指すのは、冒険者がよく使っているであろう大衆食堂。いつもながらお姫様とは思えない庶民っぷりである。
こんなところでいいのか?
と思っていたのだが——
新たにパーティに加わったミーシャとアリスの反応は悪くなく、むしろ瞳をときめかせていた。
「うんうんいいね! こういうところ行って見たかったんだ〜!」
「お城以外の食べもの……いい!」
何がそんなに魅力的に映るのかよくわからないが……二人にとっては庶民的な食事というのはある意味新鮮なのかもしれない。
と、それはともかく。
みんなが賛成なのであれば、俺が反対する理由もない。
「じゃ、ここにしよう」
そう言い、俺たちは食堂に入った。





