第126話:なぜかめちゃくちゃ感謝されたんだが②
目を丸くしている二人をよそに、トコトコとアリスが近づいてくる。
「アレリアもミーシャもリアリティないって言ったけど、ちゃんといた」
と言いながらなぜか俺を指差すアリス。
なんのことを言っているんだ?
と思っていると、なぜか二人とも頷いていた。
「魔物も魔族も簡単に倒して、女の子にも偉い人にもモテモテな主人公。ここにいる!」
ここまで言われて、アリスが描いていた漫画の主人公を思い出した。
現実離れしたキャラクター造形のように感じていたが、言われてみれば俺にも当てはまる部分は多いかもしれない。
しかし、こう言われて俺はどういう反応をすればいいんだ……?
「アリス姉さん、ごめんなさい」
「まさか実在するなんてね……私も、ごめんね」
俺がボケっとしている間に、会話が進行していく。
「べつに、怒ってない。だけど……いいよ。っていうか私も本当にこんな人いると思わなかったし……」
後半はボソボソと小声だったので上手く聞き取れなかったが、仲直りできたようで良かった。
「ユーキを部屋に入れたのは、会えば何か作品の参考になるかもって思ったから。だから、変な勘違いしないで」
なるほど、そういうことだったのか。
いくら噂を聞いて気になっていたと言っても、何年も引きこもっている人にとって他人と話すだけで苦痛。
それを乗り越えて行動に移すとなると、それなりの理由が必要になる。
まったく、何が『俺を部屋に連れてきたのは気まぐれ』だよ。
やれやれと嘆息する。
「ユーキのおかげで作品の解像度が上がった。ありがと」
「役に立ったなら良かったよ」
「じゃあ、またね」
そんなやりとりをした後、アリスはそそくさと部屋に戻ってしまった。
この数年、家族ともろくに話していなかったアリスにとっては大きな一歩。
かなりアリスなりに頑張ったことは伝わってきた。
「まさか、アリスがちゃんと部屋を出てこられるようになるとはな……」
一連の流れを後ろで見ていたユリウスさんが驚嘆の声を漏らす。
「ユーキ君のおかげで国が救われたばかりか、アリスの状態も良くなるとは……」
そう言いながら、ユリウスさんは俺の手をギュッと握ってきた。
少し涙ぐんでいるようにも見える。
「ありがとう……本当に、ありがとう……」
この様子を見ると、俺の想像以上にユリウスさんなりに父親として色々とアリスのことについて考えていたのだろう。
「ど、どういたしまして……」





