第107話:ゲームセンターがあるらしいんだが③
「あ、そういえばミーシャ、お金ってどのくらいかかるんだ? ちょっとしかお金持ってきてないんだけど」
王国硬貨は数えるのも面倒になるくらいの金額を持っているが、帝国に来る際にあまり大量には両替してこなかった。
両替に手数料が取られるのでちょっとバカらしいと思ってケチってしまった形だ。
まあ、わざわざ王国内で両替しなくても帝国の商業地区で両替してきても良いので、それほど気にしていなかったというのもある。
「一回で銅貨一枚とかそのくらいだけど……いくら持ってる? 足りないなら貸そうか?」
「うーん、とりあえず金貨百枚ほど」
「何年遊ぶつもり⁉︎ ……銅貨にはそこのカウンターで崩せるから行ってきたら?」
どうやら、金銭感覚がバグってしまっていたらしい。
確かに金貨一枚は一万円くらいの価値なんだから、約百万円か。
王国と帝国の硬貨レートはほぼ同じなので、手数料を無視すれば同じ感覚で使える。
というか、金貨とか銀貨とかっていうのが微妙に日本円と単位が違っていて、わからなくなる時があるんだよな。
ミーシャに言われた通り金貨一枚で銅貨百枚に崩して戻ってきた。
「準備できたね? ちょうど格闘ゲームの席が空いてるみたいだから、やってみようか」
格ゲーか。
MMORPG……それもクリックゲー以外はちゃんとやったことがないだけに、ちょっと新鮮だな。
ミーシャが指差す格ゲーの魔道具が置いてある場所の座席数は二つ。
「まずは覚えなきゃだから、ユーキとアイナが座って」
俺とアイナが向かい合うように座る。
目の前には、昔のパソコンモニターのように大きな魔道具の液晶に映るドット絵のキャラクター。
手元にはキャラクターを操作するのに使うであろうコントローラー。
コントローラーは左に十字キー、右に四つのボタン、LRボタンがある点に関しては共通しているが、一つ一つ手作りで作られたような、何となく異世界を感じるようなデザインになっていた。
「矢印キーでキャラを移動できるわ。攻撃はその右のボタンを押して、躱すのは左のボタンね。下のボタンでしゃがめるし、上のボタンでジャンプできるわ。うまく操作して、相手を倒したら勝ち」
「なるほど、ありがとう」
「難しいわ……やりながら覚えるしかないわね」
だいたい操作方法は理解した。
……というか、触っていればわかる範囲なので、あえて教えてもらう必要はなかったかもしれない。
とはいえアイナは初めて触るのだから、必要な説明ではあった。
「ユーキ、アイナ、頑張ってくださいね!」
アレリアも応援してくれている。頑張ろう。
こうして、ゲームが始まった。
相手のキャラクターが動き始めたので、俺もゲームの要領を掴むため少し動きを試しつつ、警戒する。
相手を攻撃、相手からの攻撃を防御。
ジャンプしたり、ダッシュしての移動。
一通りを試すことができた。
「ユーキって本当に初めて? すごく上手いんだね……!」
「まあな」
ミーシャから褒められてしまった。
これが初めてと言っていいのかわからないが、少なくともこのゲームをやるのは初めてだ。
何となく感覚で操作し、相手のHPを削り切る。
——試合終了。
ほっとしたその瞬間。
「あー! 負けちゃったみたいだわ。結構難しいのね……」
「アイナもちょうど終わったのか。でもそんなに難しかったか? ほとんど敵は意味不明な動きしてるだけだったぞ?」
「ええ⁉︎ そんなことないわよ。どうしたらこんな動きできるかってくらいキレッキレだったわよ……?」
うん……?
何だか話が噛み合わないな。
確率によって、あるいは席によって敵の強さが変わってしまうのだろうか。
それとも、単純に俺とアイナの力量の違いなのか?
いや、だとしても意味不明な動きをするのと、キレッキレの動きでは大分違うよな。
「あ、言い忘れた! 今はユーキとアイナで対戦してたんだよー」
「対戦……だと?」
近頃の魔道具はゲームができるようになったばかりじゃなく、対戦までできるようになっていたのか……!
「ってことは、俺の席とアイナの席で通信してるってことなんだよな……?」
「うん……そういうことになるね?」
ミーシャは、何を当たり前のことを——と言わんばかりの表情で答えた。
比較的近距離とはいえ、通信対戦までできるとは、驚いたな。
王都では戦闘用の魔道具だったり、魔力検査用の魔道具。
魔法兵器の魔道具くらいしかなかったのだが、帝国ではエンタメ方面に進化している。
帝国の魔道具の発展は凄まじい。
「その通信って、例えばゲームじゃなくて、音声とか文章を送れる魔道具もあったりするのか?」
「文章は送れないけど、音は送れるよ。私が持ってるこれとか?」
ミーシャがポーチから小さな石のような見た目の魔道具を取り出した。
「二つの魔道具にそれぞれ魔力を覚えさせておけば、離れてても音を送れるっていう便利アイテムよ」
「なるほど……それはいいな」
電話のようなものがあるのかと思いきや、そういうことではないのか。
だとしても、使い方によってはかなり便利になりそうだ。
「さ、そんなことよりゲームを続けましょ。今度はアイナと私で!」
「さっきのでだいたい動きは覚えたわ。受けて立つわ」
こうして順番に回して、数時間ほど楽しんだ。
かなり意外だったのだが、アイナはプレイを重ねるごとに上達していき、一番強くなってしまった。素質があったのだろう。





