第99話:頼まれたんだが①
◇
「ほう……旧王国ではそんなことがあったのか。アレリアを人質に帝国に揺すりをかけようなどと……万死に値することだな」
帝城についてからは、ユリウス皇帝・リリス皇后・ミーシャ第二皇女を含めた六人で食事を囲むことになった。
恐縮してしまうが、歓迎されていることはわかる。
素直に嬉しい。
食事会では、これまでの経緯を尋ねられたので、順を追って説明した。
ユリウス皇帝は、当然の如くかなり怒っているようだった。
「そこでユーキ君がセルベールを討ち、革命を起こしたわけだ」
「そういうことです」
「なるほど……色々と噂には聞いていたが、今やっと繋がったぞ」
各国には、勇者を追放する際に表面的な説明はしていた。
例えば、ここ帝国には盾の勇者カタン・アクジールを送る際に説明をしていた。
とはいえ、帝国にもアレリアの件のような個別の事例については伝わっていない。
隠しているわけではなく、単純に量が多すぎる。
それだけ前国王のやらかしは大きかったのだ。
「本当に、娘が世話になったな」
「いえいえ」
このような感じだったので、和やかに食事会を終えられるかと思われた。
爆弾が投げ込まれる前までは——
「ユーキ君とアレリアとアイナって冒険者をしてたのよね?」
「ええ、まあそうです」
「王都ではどんな風に暮らしてたの?」
「それはもう一般的な冒険者と同じで——」
「それはですね——」
俺が説明を始めたと同時に、アレリアが嬉々として話し始めた。
言葉が被ったしまった形なので、アレリアに説明を任せようと思ったのだが、これが失敗だった。
「三人で一緒に生活してたんですけど、すごく楽しかったんですよ〜! 一緒にお料理したり、買い物に行ったり、寝る前にベッドでお話ししたり……。あっ、もちろん冒険にも行きましたよ!」
「ふむ、まるで同じ部屋に泊まっていたかのような言い方だな?」
ユリウス皇帝の瞳が、キランと光った。
ま、まずいな……。
アレリア、なんとか誤魔化してくれよ?
「そうなんですよ! あ、でも何もなかったですよ、本当です!」
あちゃー……。
「な、な、なんだと……⁉︎」
そりゃこういう反応になるよな……。
などと思っていたのだが——
「でも、そうか……アレリアもそういう年頃だよな……仕方のないことなのかもしれんな」
「そうです! さすがはお父様ですっ……!」
なぜそうなる⁉︎
親子揃ってちょっと感覚ズレてるんじゃないか……?
いや、怒られるよりは全然良いのだが……。
まあ確かに、本当に何もなかったのだから、咎められることもない……のか?
ユリウス皇帝は席を立つと、俺の元に歩み寄ってきた。
そして、握手を求められた。
どんな意図があるのかわからないのだが、とりあえず手を取ることにする。
「ユーキ君」
「は、はい!」
「娘をよろしく頼んだ」





