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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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魔神がやってくるようです ④



「ところで魔神ってどこに現れるんですか?」

「この国の北に山があるでしょう。そこの山頂に現れるらしいです」

「この国に現れるんですねー」

「他国にも限られた方には連携していますが、どうして魔王といい、揃いも揃ってこの国に来るのでしょうか……。神託では確か……あ」

「どうしたんですかー?」

「ええっと、少し言いにくいのですが魔神はトリツィアさん目当てに来ているかもしれません。魔神にとってみても力の強い巫女というのは天敵です。早めにどうにかしたいと思うのも当然でしょう。魔神は貴方の力を感じ取った上でこの国に降り立とうとしているのかもしれません」



 巫女姫、アドレンダは言いにくそうにそんな言葉を口にする。


 揃いも揃って、トリツィアの居るムッタイア王国になぜそういう存在が集まるのか……それを考えた時、強い力にひかれておりたとうとしているのではないかとそんな風に考えたようだ。



「そうなんですねぇ。私をどうにかして好き勝手したいって感じですかね?」

「そうかもしれませんね。強い力を持つ存在をどうにかすれば、その分、動きやすくなるでしょうから」

「ところでその魔神って邪神と何か違うんですか?」

「多分、大体一緒ですね。呼び方が違うだけでやろうとしていることもあまり変わりませんし。とはいえ、本来ならそれが一つ生まれただけで世界は大変な事態になるものです。それが何の因果か、色々重なっています。邪神に関してはトリツィアさんが再封印してくださってますし、魔王に関してもペットにしてくださってますが……そこにきて魔神ですからね」



 

 巫女姫は正直、頭を抱えたくて仕方がない。



(トリツィアさんが居るからこそ、現状問題はないけれど……もしトリツィアさんが居なかったらと考えるとなんと恐ろしいことか。もしかしてトリツィアさんという力を持つ存在が居るタイミングでそういうことが重なるように調整されている? それともそういう時期だからこそ、トリツィアさんのような存在が産まれた? ただの偶然でトリツィアさんのような方が今の時代にいるとしたら凄い偶然だけど……どちらにせよ、トリツィアさんが居てくださって良かった)



 巫女姫一人の手では、全てを対応しきることは出来ないだろう。

 幾ら巫女姫と呼ばれて、神殿を取りまとめているとはいえ、自身に邪神、魔王、魔神という全てをどうにかする力がないことを自覚している。


 だからこそ……、トリツィアの存在に感謝してならなかった。



 

「なんだか、巫女姫様疲れてます?」

「そう、ですね。これだけのことが続くと流石に対応に追われてしまいますから……」


 巫女姫はそんな風に口にして小さくため息を吐く。


 これまでの歴代の巫女姫の中でも、此処まで色んなことが重なった巫女姫というものはいない。

 アドレンダはたまたまそういう時代に生まれてしまい、そういうことへの対応に追われていた。



 疲れた様子の巫女姫を見て、何を思ったのかトリツィアはその頭に手を伸ばす。そしてその頭を撫で始めた。



「えっと、トリツィアさん、急にどうしたんですか?」

「巫女姫様は頑張ってるなーって、えらいえらいって思って! 私とそんなに年が変わらないのに大神殿で巫女姫をやっていて凄いなって」

「いえ、トリツィアさんの方が凄いと思いますが」

「私は巫女姫様より強いだけですよ? 私はこういう窮屈な場所で、巫女姫なんて絶対したくないもん。下級巫女の方が楽だし。でも巫女姫様は、ちゃんとその責務を全うしていて、そういうところが凄いなーって。私じゃ出来なさそうです」

「……トリツィアさんならやろうと思えば出来そうですが」

「私の場合だと力で従える感じになっちゃうと思います。巫女姫様はそういうのじゃなくて、ちゃんとまっとうにやって、周りから慕われているので頑張っていると思います!」

「ふふっ、ありがとうございます。こんな風に頭を撫でられるのは初めてかもしれません」



 巫女姫はトリツィアと会話をかわし、そんな風にいって笑う。


 巫女姫というのは神殿の権力者である。年若い少女とはいえ、その権力も威光もすさまじいものだ。そんな巫女姫の頭を撫でるなどという存在は今までいなかった。

 幼い頃から神殿に入り、その力を見出され巫女姫になった彼女はそういう立場であり続けていたのだ。


「そうなんですか? 巫女姫様は凄く頑張っていると思うので、こうやって頭を撫でられるのも当然の権利だと思いますよ。女神様も頑張った人は沢山褒めた方がいいっていってましたし」

「こうやって頭を撫でられるのも悪くないですね……」

「なら沢山、撫でてもらいましょう」

「……私の頭を撫でようとする人なんていません。もしよければトリツィアさんが私の頭を撫でて褒めてくれませんか?」

「私が?」

「ええ。トリツィアさんみたいに凄い力を持つ方に褒められると嬉しいですし、頑張ろうって思いますから」

「そうなんですねー。じゃあ、そうします!」



 トリツィアは巫女姫からの提案に、特に問題もないので元気よくそう答えるのであった。




 ――そしてそんな会話をして少し後、トリツィアたちは魔神が現れる場所に向かうことになる。




 

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