女神様の生誕祭 ③
「ふぅ、今日もきっちり仕事したー!」
「お疲れ様」
「あ、オノファノ、私これから女神様と女子会するよ!」
「……そうか。女神様によろしくな」
「うん! オノファノがおめでとうって言ってたよって言っておく」
当たり前みたいにトリツィアが女神様とこれから会うことを言うので、オノファノは本当にトリツィアは規格外だなと遠い目をしている。
夜の時間に突入し、トリツィアはオノファノと会話をした後、自室に戻る。
そしてその自室に結界を張り終えると、自分で用意したものや精霊たちからもらったものを並べてお祝いの準備をする。
準備を終えるとトリツィアは女神様のことを呼んだ。
「トリツィア」
そして女神様が降臨する。
神々しいオーラを纏った女神様は、その手に袋を持っている。
その袋の中にはビールやおつまみが入っている。これは女神様が異世界で人間だった頃に好きだったものらしい。
「女神様、おめでとうございます!!」
「トリツィアもおめでとう」
トリツィアがお祝いの言葉を口にすれば、女神様も笑う。
「乾杯しましょう、乾杯!」
「はい!」
女神様は今日もビールを、トリツィアは甘いジュースを手に掲げる。
乾杯をして、それぞれ口に含む。
「ふぅ、一仕事の後のビールは本当に美味しいわ」
「今日はやっぱり忙しかったんですか?」
「そうね。結構色んな神々が挨拶に来たから。仲が良い子ならともかく、そこまで親しくない神たちもお祝いに来るからちょっと疲れるのよね。お祝いしてもらえるのは嬉しいけれど」
「お疲れ様です!」
「その点、トリツィアとこうして女子会をするのは気が抜けて良いわ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。私も女神様との女子会はとても楽しいです」
トリツィアと女神様は、そんな風に楽しそうに会話を交わす。
(女神様がこうやって私といると気が抜けるっていってくれるの嬉しいなぁ。女神様は強い力を持つ神様だから、それだけ沢山の人に挨拶されるんだろうなぁ)
そんなことを考えながらトリツィアはじっと女神様を見る。
「トリツィア、じーっとこちらを見てどうしたの?」
「女神様は神様たちの世界でも愛されているんだろうなってそう思います! 私も女神様、大好きですし」
「ありがとう、トリツィア」
「それにしても女神様の生誕祭の今日って神様として生まれた日なんですか?」
「そうねぇ。ただの人間だったころは違う日が誕生日だったわ」
元々異世界の人間だった女神様は、神へと至った。
トリツィアは人が神になるというのはいまいちどういうものなのか分からない。そういう伝承があるのは知っているけれども、異世界の人間が神になるというのは中々レアケースであろう。
「女神様がこの世界で神様になってくれて私は凄く嬉しいなって思います。そうじゃなければこんなに楽しい時間過ごせませんでしたからね」
「私も女神になってよかったと思うわ。楽しい生活送れてるもの。トリツィアにも会えたし。トリツィアは出会った頃より背も伸びてきて少しずつ大人っぽくなっているわよね」
「そうですか?」
「そうね。トリツィアがどんなふうにこれから先の未来を歩むのか、それを想像するだけで楽しみで仕方ないわ」
「おばあちゃんになっても女神様と仲良くしたいです!」
「ふふ、貴方が死ぬまでずっと見守っていてあげるわよ。トリツィアはきっと、おばあさんになっても可愛いもの」
「女神様がずっと見守ってくれると思うと、私の人生は安泰ですねー」
「その頃にはトリツィアも結婚でもして神殿から出ているかしらね? それともずっと神殿で巫女をしているか」
「どうでしょう? 力がなくならなければずっといるかもですね」
「トリツィアの力はずっとなくならないと思うわ」
精霊からもらった果物や購入したお菓子などを食べながら、トリツィアと女神様はそうやって会話を交わす。
トリツィアは自分が年老いた時のことはあまり想像が出来ていない。どういう風に生きているのか、どんな人生を歩んでいるのか、先のことは分からないものである。
「何があったとしても、私はずっと女神様への信仰は失わないと思います。なのでずっと先も女神様とこうして女子会が出来れば一番いいですね!!」
「そうね。私もずっとトリツィアとは女子会したいわね」
楽しく話す女子会は、長時間続いた。
そして後半の方では、女神様はまた酔っぱらっていた。
「トリツィアの子供もきっと可愛いわよねぇ。いつか見たいわぁ」
などと、酔っぱらいながら女神様は楽しそうにしていた。
酔っぱらった女神様は、またいつものように旦那様であるクドンが迎えに来るのであった。
これからクドンは女神様とゆっくりと夫婦の時間を過ごすらしい。トリツィアは仲睦まじい様子が素敵だなと毎回思っているものである。
そうして、生誕祭は過ぎていくのであった。




