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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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食べ歩きに勤しみます ⑧



 レッティは女神様の出現に、すぐさま顔色を変え、頭を垂れた。

 トリツィアの姿であろうとも、その神気を浴びればそれが女神本人であることが上級巫女のレッティには理解できた。

 それと同時にしゃべれるだけではなく、こうして降ろすことも出来るのかとレッティはトリツィアの常識のなさに驚く。




「あら、レッティ。そのようにかしこまらなくていいわよ。今回は公式の場でもないし」

「そ、そうはいっても」

「私がいいといっているからいいのです」



 トリツィアの姿のままそう言い切る女神様。

 しかしそんな風に言われても、いざ、女神様を前にして信仰深いレッティはどうしたらいいかわからなかった。



「女神様、レッティ様は突然そう言われたら困っちゃいますよー」

「あら? トリツィアは割と最初から私に普通じゃなかった?」

「私は私です! あ、でも私はちゃーんと、女神様への崇拝の気持ちもありますからね。お友達ですけど」

「わかっているわよ。トリツィア。それにしても身体を借りちゃってごめんね」

「全然いいですよー。女神様とレッティ様がおしゃべりしているの楽しいですし」



 ……この会話は同じ身体でされているので、さながら独り言を言っているようである。どうやら女神様を身体に降ろしていようともトリツィアは自由に動けるらしい。

 そもそもの話、女神を身体に降ろすことができるという時点でトリツィアが色々おかしいのだが。



 そんな仲が大変良い会話を聞いていると、レッティも緊張がほぐれてきたらしい。



「ふふ、女神様とトリツィアさんは仲が良いのですね」

「ええ。私とトリツィアはお友達なの。トリツィアはとても力が強いから、おしゃべりし放題だもの」

「おしゃべりし放題? 女神様の声をトリツィアさんが聞けることはこの前知りましたが、いつもなのですか……?」

「ええ。トリツィアの祈りの時間はいつも私とのおしゃべりの時間だわ。あとはほかの時も時々話しているの」


 そんなことを簡単に女神様の口からきいてしまったレッティは頭を抱えたくなってしまった。



 女神の声を聴けるというだけでも一大事なのに、思ったよりもずっとトリツィアが女神様と会話を交わしていたから……。

 


「……トリツィアさんは、女神様とそれだけ親しいことがわかればいくらでも成り上がれそうですよね」

「いやですよ。下級巫女のままのほうがいいですもん。レッティ様みたいにこの大神殿の代表って感じで頑張るの無理です。あと色々よって来られるのもいやですし。そもそも私にとって女神様と仲良しなのは当たり前のことなので、それで色々騒がしくなるのもなんか面倒じゃないです?」

「まぁ、そうですわね。もしあなたがこれだけ女神と親しくしていることを知れば、周りは放っておかない可能性が高いです。ただこの大神殿の者たちはあなたがどういう存在か知ってますから余計なことはしないでしょう。……トリツィアさんはここが居心地悪くなったら飛び出しますよね?」

「はい」



 トリツィアは躊躇いもしない。

 そもそも信仰心をささげるだけならどこでも出来る。そして例えばトリツィアが大神殿から飛び出したとしてもこの調子であるならば女神様との友達関係がなくならないだろう。



「と、こういう難しい話はなしにしましょう。今日は三人でお祭りなのです!」

「この量を食べれますの? かなりあるようですけれど」

「余ったら私が神界に持ち帰るから問題ないわ」



 レッティはこの部屋のものが神界に持ち込まれることに戦慄した。



(トリツィアさんはあまりにも規格外すぎる。どれだけの聖職者が、神との対話を望んできただろうか。そういうのをあざ笑うかのように、ただトリツィアさんはそれだけの力を持っている。本当にねたむとかそういう気持ちもわいてこないわね)



 レッティはそんなことを思いながら小さく笑った。

 トリツィアはこれからもきっと規格外のことを当たり前のようになし続け、もしかしたらその規格外さを隠せなくなったら色々ともっとやらかすのかもしれない。規格外の存在だからこそ、トリツィアが何をやらかすのかレッティにはわからない。


 だけどただこうしてトリツィアの力の一端を知れることはレッティにとっては嬉しいことだった。




「とりあえず、食べて飲むのは今は私の身体なんで女神様ちょっと我慢してくださいねー」

「全然いいわよ」

「あとで二人で女子会ですからね。お酒も沢山準備してますし」


 ころころとトリツィアの顔が変わる。

 トリツィア本人と女神様は同じ口から会話を交わしている。



「レッティ様は乾杯は何飲みます?」


 トリツィアに聞かれて、レッティはおかれている飲み物に目を移す。なんだか見たことがないものもいくつかあった。



「トリツィアさん、女神様、これは?」

「精霊からもらいました。おいしいですよ」

「このジュース、私も好きだわ。とってもおいしいわよね」



 何気なく聞いたジュースが、精霊からもらったもので女神も飲んでいるなどと知りレッティはまた衝撃を受けた。


 結局怖いもの見たさでその貴重であろうジュースをレッティはもらうことにした。




 ――そしてトリツィア、女神様、レッティによる女子会が始まった。





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