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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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面倒な話が舞い込んできたようです ⑧




「トリツィアちゃん、今日はオノファノと手を繋いでいるんだね? もしかして恋人にでもなった?」

「ううん。告白はされたけど、今保留中なのですよー」



 トリツィアは、現状を隠しはしない。

 ただでさえ普段とは違う恰好で、トリツィアとオノファノが手を繋いで歩いていれば目立つ。


 にこにこと笑って告げるトリツィアに、顔見知りの街の住民は笑顔になる。



「そうかい」



 そういいながらその年配の女性は、嬉しそうにしている。

 トリツィアの様子を見る限り、オノファノのことを嫌がっていないことが分かるからというのもあるだろう。



 話しかけてきたその女性は、雑貨屋の店主だったのでついでとばかりにパン屋に向かう前にそのお店による二人。





 トリツィアは店内をぶらぶらと歩いている。手を離そうとしていたのだが、それはオノファノが拒絶した。

 彼女としてみれば、手を離したほうが店内を見て回りやすいのでは? と思っていたわけだが……まぁ、オノファノがそのままでいいならそれでいいかと思っているのでそのままである。





(手ってずっと繋いでいたいものなのかなー? 私、あんまり誰かと手を繋いだりはしないかも。はぐれないようにってオノファノと手を繋いだりはしてたけど……そう考えると私って最近オノファノとしか手つないでないかも?)


 トリツィアはそんなことを考えながら雑貨屋内をぶらぶらしている。



(それにしてもオノファノはそのまま手を握っていたいって、私のことが好きだからってことかなー? うん、ちょっと深く考えると少し照れるかもしれない。だっていつも一緒に居たオノファノがそういう感情抱いているとか思ってもなかったしなぁ)



 トリツィアはそんなことを考える。




 こうして彼女が幼なじみの気持ちをきちんと受け止めて考えようとしているだけでも、まだオノファノには望みがあると言える。

 なぜならトリツィアは誰かに告白された際に、その人のことを本当に考えられないと思っていたらすぐに断るのである。それはもうばっさりと。


 嫌だと思ったり、ないなと直感的に思えばそうするものである。

 オノファノの言葉を聞いて、考えようと思ったのは……彼が傍からいなくなるのはつまらないという感情が少なからずあったからに他ならない。




 それにトリツィアは、オノファノと一緒に遊ぶことがとても楽しいと思っている。自分についてこれる唯一の存在で、昔から一緒に遊んできた大切な幼なじみ。



 ある意味、トリツィアにとってはオノファノは特別な存在ではある。

 恋愛感情を抱いているということを告白することは、その関係性を壊すことに他ならない。――きっと様々なことを考えただろうに、それでもトリツィアに彼は告白したのである。



(だから、ちゃんと考えはしたいな。その方がいいもんね。でも私は恋とか正直分からないからなぁ)




 だからこそ、彼女はちゃんと考えようと思っているのである。



 さて、そんな風に考え込んでいるトリツィアはオノファノと手を繋いでない方の手でアクセサリーを見ている。

 トリツィア自身はそこまでアクセサリーを身に着けたりはしないが、そういうものを綺麗だと思う心は当然ある。






「トリツィア、それ欲しいのか?」

「んー。綺麗だなって。でも戦うのに邪魔かもだから、あんまり身に着けないかもだけど」

「まぁ、そうだな。トリツィアは基本、拳で殴ったりとかばかりだもんな。じゃあ……こういうのはどうだ? 部屋に置いとくようだけど」

「確かにいいかもー。こういうおしゃれな小さな鏡はあり」

「じゃあ俺が買う」

「んー? 私、自分で買えるよ?」

「俺がトリツィアに買いたいんだよ」

「そうなの?」

「ああ。駄目か?」

「んー?」


 トリツィアはなんでそうやって自分に何かを買おうとするのかよく分からない。ただオノファノがそれを望んでいるというのは、表情を見ていれば分かる。



「いいよ」



 トリツィアがそう口にすると、オノファノは嬉しそうに笑った。

 そのままその鏡を手に取り、会計を進める。







(私に何かを買いたいってこと? あ、でも確かに女神様がデートだとこういうことはあるって言ってたかも? オノファノ、凄くにこにこだけどそんなに私とのデートが嬉しいのかな? こういうときはそのまま受け入れる方がいいのかな? どうなんだろう??)



 当然のことだが、トリツィアにとってこういうデートと呼ばれるものは初めてである。よく分からないなということが満載だ。


 ただオノファノが嬉しそうにしていることは良いことだなと思っている。それでいてこれだけ喜んでくれるのは嬉しいとも感じているので、トリツィアも笑顔である。




 さて、雑貨屋で買い物が終わった後は本来の目的地であるパン屋へと向かう。




「パン屋さん、混んでるかなー?」

「どうだろうな? 美味しいって噂ならそれなりに混んではいるかも」

「そっかー。ちょっと待ってもいい?」

「ああ」



 そういう会話を交わしながら、そのまま彼らはパン屋に到着する。

 向かいながら話していたように、そのお店は混んでいたのでしばらく並ぶことになった。





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