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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女と、女神の寵愛を得ているという少女の話 ⑩




「悲しませた記憶は特にないですねー」


 トリツィアがそう答えると、彼女を囲う巫女達はそれはもう恐ろしい形相になった。

 そんな顔を向けられても、トリツィアはいつも通りである。



 ……そういうのほほんとしすぎているトリツィアに、彼女たちは余計にいら立ちを感じているようであった。




「嘘をおっしゃい!! ジュダディ様は泣いていらしたのよ!」

「ソーニミア神の寵愛を受けている特別な方を悲しませるなんて……」


 そんなことを言われてもトリツィアは不思議でしかない。

 だってあの少女は、ソーニミアの寵愛を持ち合わせていない。それにその少女が大人しく泣くようにはトリツィアには全く見えなかった。







「ジュダディさんが泣いてた? 嘘? だってあの子、簡単に泣くようには見えなかったですよー?」



 寧ろどちらかと言えばトリツィアに対して怒りを示していた。悲しむというより怒っていたのではないかとトリツィアは思う。




「それに女神様の寵愛は持ってないですよー。逆に寵愛を受けていないのに、女神様に寵愛されているっていう方が問題です! だから私は寵愛を受けているっていう嘘はつかない方がいいですよって言っただけですから」


 はっきりとトリツィアは、そう言い切る。

 彼女からしてみれば、女神様本人から話しかけたこともないし、寵愛も受けたことはないと言われているのだ。

 




「なっ……何の根拠があって!!」

「ジュダディ様は素晴らしい力を持ち合わせているのよ。なんて無礼な!!」

「んー。確かに普通とは違う力を持ち合わせてますけどー。それが寵愛だって言うのはジュダディさんが思い込んでいるだけなのですよー。だから女神様の寵愛を受けていないのに勝手に寵愛を受けているなんて言い放つのは問題ですよね?」



 トリツィアは怒り狂った様子の巫女達を前にしてもいつも通りである。

 巫女達がどれだけ怒りを見せていてもトリツィアにとってはどうでもいいのだろう。




「ソーニミア神の寵愛を受けていないのに寵愛を語っているのならば確かに問題だけど、ジュダディ様は事実として寵愛を受けているのよ」

「その根拠って、ジュダディさんが言っているだけって認識であってますかー? ジュダディさんが勝手にそういう風に言っているだけなので、あんまり真に受けてこういうことしない方がいいですよ? あなたたちが女神様を心から信仰しているというのならばこういう行動は女神様の品格を貶めることになりかねませんからねー」



 トリツィアは自分と同じく女神様を信仰しているであろう巫女たちがこのような真似をするのは何とも言えない気持ちになる。信者がこういう行動を行うことは、少なからず女神様の名を貶める事につながってしまうのだ。



 こうやって忠告をすることで、行動を改めてくれればと思ってならないトリツィアである。





「本当にあなたは世間知らずね。ただの下級巫女だから仕方ない話でしょうけれど」

「ジュダディ様がソーニミア神の寵愛を受けているというのは、神官たちも神託で聞いたことなのよ!」

「ふぅん?」




 トリツィアは巫女達の言葉に不思議そうな声をあげる。




(女神様ー。そんな神託したんですかー? というか、女神様の神託ってそんなに誰か一人のために卸されるものではないですよね?)

『私はそんなことはしていないわ。私の寵愛を受けたと勝手に言っている子と、神託を偽装しているような悪い神官が居るみたいね? そういう方がそれなりに高位の神官の地位についているのは問題じゃないかしら』

(私もそう思います! 私たちは神様への信仰を正しく持っているべきです。信仰心の差は人によっては少なからずあるだろうし、実際に神様のことを信じていない人も神官や巫女にはいるかもしれないですけれど、でもそうだったとしても神様の言葉を偽装するのはやっては駄目ですよね)



 彼女は待っていてくれている女神様に話しかけ、真偽を確かめる。

 信仰心の強い彼女としては、神の言葉を偽装する行為には色々と思う所があるらしい。




「本当にその信託がなされたのか、ちゃんと確認した方がいいですよ! 女神様の声を正しく聞けるような高位の神官様に改めて確認してから、ジュダディさんとどういう風に接するか考えるといいと思いますー」

『私の方でジュダディという少女は私は寵愛を与えていない。虚偽の申告であるというのを神託として与えるわね。もう、本当にこんなしょうもないことを神託として下すことになるなんて面倒だわ』



 トリツィアがにこにこと笑いながら巫女達へと言葉をかける中、その脳内には呆れたような女神様の声が響いている。




「なっ……」

「神官たちが嘘を言っているとでもいうの!?」



 巫女達はトリツィアの言葉を聞いても、全く大人しくならない。それどころか、さらに激高しているようにさえ思える。



「私が言えることはそれだけですから、じゃあ、さようなら」



 トリツィアは面倒そうにそう言ったかと思えば、結界を展開させて無理やり巫女達を追い出した。そして中に入ってこれないようにする。外で騒いでいるが放置である。




 その後、彼女は女神様と仲良くお喋りをしていた。そしてそれからしばらくして、女神様の神託が高位の神官へと下った。






 

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神々が何らかの方法で干渉する世界なのに馬鹿ですねーw
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