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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女は、周りの人々の度肝を抜く ⑥




「なんで、結構人多いの?」

「俺とトリツィアが変わった歌の練習をしているから、それで皆興味を持っているんだろう。聞きたい人には聞かせてもいいんじゃないか」

「んー、まぁ、そっか。下手に隠していると見せられないのかってなりそうだし。でも女神様や精霊たちが来るのは秘密かなぁ」

「そうした方がいい。その辺知られたらすごい騒ぎになるぞ、きっと」

「そうだよねー。ただあれだね、女神様から聞いたアニソンを嫌がらない系の人達じゃないと駄目だね。後は周りに広めたりしたら怒るよーってちゃんと言わないと」




 ようやく女神様や精霊にアニソンをお披露目出来るとほくほく顔のトリツィアにとって予想外のことが一つ起きた。


 それはトリツィアとオノファノが聞きなれない歌を歌っているのが噂になり、大神殿のものたちがその歌を聞こうと何人もやってきてしまったからである。基本的にトリツィアは女神様と精霊たちにしか練習した歌を聞かせるつもりはなかったのに、こんな事態になりトリツィアは何とも言えない表情だ。


 彼女にとってはただ女神様を喜ばせたいだけの行動も、周りの人にとっては突拍子もない行動で――それだけ注目を浴びてしまうのだ。それは他のことにも言えることである。

 トリツィアという少女はそれだけ、普通とはかけ離れたことをいとも簡単に行ってしまうのだ。






「女神様にも一旦確認してみるね:



 トリツィアはそう言うと、心の中で女神様へと話しかける。





(女神様ー)

『あら、トリツィア、どうしたの?』

(アニソンのお披露目会、大神殿の人達も聞きたいみたいなんですけど、その辺は別に問題ないです?)

『まぁ! そうなのね。特に問題はないわ。聞きたい人には聞かせていいと思うわ。ただあまり私から聞いたとは言わないでほしいなと思うけれど。それにしてもトリツィアが人気者で嬉しいわ』

(人気者ですか?)

『ええ。だって周りに好かれているからこそ、トリツィアが何か起こす度に皆が集まってくるじゃない。私ね、トリツィアが人に囲まれているのを見るのは嬉しいわ』




 女神様の声はただただ優しい。トリツィアのことを慈しみ、彼女が幸せな様子で過ごしているのを喜ばしく思っている様子である。



(そうなんですねー。よく分からないですけれど、私は女神様が嬉しいと嬉しいです。女神様や精霊たちが見に来るのは言わないようにします。アニソンは古い文献で見かけたとか、そういう風にごまかしときますねー。それか秘密って言っても周りには通じそうな気がします)

『ふふっ、そうね。トリツィアならばそれでも通じそうだわ。これからお披露目なら、もうそっちに行くわね?』



 女神様の楽し気な声が聞こえてきたかと思うと、女神様が実際にこちら側にやってきていた。

 当然、普通の人達には気づけないが、トリツィアには気づける。まさか、大神殿の者達は此処に女神様が居るなどとは思いもしないだろう。




 それからトリツィアは集まった人たちに「聞くのはいいけど、あまり周りに広めないように。広めたら私が怒るからね! 後、聞いていて合わないなと思ったらすぐに聞くのやめてね」とにこにこと笑ってそう言った。



 幼いころからトリツィアのことをよく知っている大神殿の者達は彼女が冗談を言わないことは分かっている。

 彼女が怒ると言ったら、本当に怒りを露わにするのである。





「じゃあ、これから歌を歌うよー。オノファノ、行くよー」

「ああ」



 トリツィアがにっこりと笑ってオノファノに笑いかければ、彼も頷く。


 そしてそれから二人は女神様に教わったアニソンを歌い始める。まずは練習したデュエット曲から。

 軽快な雰囲気の歌。それを楽し気に二人は歌う。オノファノに関しても女神様や精霊たちが見に来ることを知っているというのに落ち着いている。




 この世界では馴染のない歌を、当然不快に思うような者もいる。聞きなれない音楽を嫌がったものはそうそうにその場を後にする。




『もったいないなぁ。こういう曲、楽しいのに』

『ソーニミア様が折角教えた歌を聞かないなんてもったいない』



 その場に集まっていた精霊たちは、その場を去る者達をもったいないなとでもいう風に声をあげている。

 


『あらあら、やっぱり聞き馴染のないアニソンは受け入れられにくいのね』



 女神様はそんなことを言いながら、にこにこと笑ってトリツィアとオノファノを見ている。



 女神様にとってきっと故郷というのは特別なものなのだろう。だからいつも楽しそうにトリツィアに故郷である異世界の話をする。そしてその故郷の話を――、トリツィアが全く嫌がりもせずに、ただただ楽しそうに聞いてくれることが嬉しい。

 神という立場なので、女神様は人の考えなどすぐに分かってしまう。心からトリツィアが故郷のこともアニソンのことも楽しんで聞いていることが分かるので、女神様はそのことも踏まえてトリツィアのことを気に入っているのだ。



 そしてトリツィアとオノファノが歌い終わるころには、ほとんど人は残っていなかった。女神様と精霊たちはその場にとどまっている。






「女神様、違うアニソン教えてくださいねー。そしたらまたお披露目しますよ」



 終わった後、トリツィアがそう言って笑い、女神様はそれに対して嬉しそうに微笑むのだった。




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[一言] この残った者と去った者で明暗が分かれそうw
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