表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
下級巫女です!!  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

156/230

下級巫女は、周りの人々の度肝を抜く ①




「ゲリーノ、大活躍しているっぽいねー」

「新聞に大々的に書かれているからな。それにしても他国にまでこうやって活躍が広まっているのって凄いよな」



 トリツィアとオノファノは仲良く二人で並んで新聞を目を通している。そこに書かれているのは、ゲリーノに関するものである。


 トリツィアとオノファノに負けたゲリーノはそのまま国へと戻った。彼女達と手紙のやりとりをすることを望んでいたので、それは二人とも承諾した。



 そして戻った先で、大活躍をしているのである。どうやらトリツィアとオノファノに負けて以来、心境の変化があったらしい。

 自分よりも強者である存在がおり、自身がそこまで特別じゃないというそういう認識に至れば、それだけ変化するのは当然だった。


 ゲリーノのことを呼び捨てにしているのは、本人がそれを望んだからである。トリツィアもオノファノもそれを受け入れて、すっかり呼び捨てになっている。





「うん。本当に凄いよねー。私はそれだけ注目を浴びたりすると疲れそうだなぁって思うし。王族って立場ってそれだけ国民の命も預かっている感じだよね。本当になんていうか……私だったら嫌だなって思うもん」




 トリツィアは素直な気持ちを口にする。



 トリツィアは平穏な暮らしを望んでいる。だからゲリーノのように人の上に立ち、人の命を預かるなんて嫌だと思っている。きっと出来なくはないだろう。

 それでもトリツィアはそういう立場になりたくないと思っている。






「そうだな。俺も大変な立場だよなぁと思う。というか、本当に細かい個人的な情報もあることないこと広まっているし……。本当にそういうのって、大変そうだよな。同じように俺のことを嘘も交えて噂されているって嫌だし」

「うん。分かる。なんか、ゲリーノも好き勝手噂されてそうだもんねー。私はそういうのされたら訂正するけど、ゲリーノだと訂正をしてもどうしようもないぐらいなのかなぁ」



 彼女は誰かに嘘を広められることが嫌だと思う。

 ――なので、もし自分のことを嫌な方に噂されたらきっと訂正し続ける。それだけ声を上げてもどうしようもないだと面倒だなと感じてしまうのである。



 ゲリーノはそういう立場にあり、それを受け入れている。

 きっと周りの人がどうこう言おうとも、どれだけ噂をされようともそれを受け止めた上でそのまま生きている。たまにそうなるならともかくとして、常にそういう立場であることはトリツィアもオノファノも勘弁したいところだった。





「まぁ、そうだろうな。というか、手紙にもなんか、そこそこ愚痴あるよな」

「うん。もしかしたら愚痴とかいう相手がいないのかもしれないね。王族だとやっぱり友達とかあんまりいないのかなー? オノファノはどう思う?」

「そうだと思う。王族で、それも神からの加護持ちだと、対等な相手ってあんまりいないだろうし」

「ふぅん。だから、こうやってよく手紙を送ってくるようになったのかな? なんか結構な頻度よね? それにオノファノ宛の手紙もかなりの枚数だったし」




 トリツィアとオノファノは新聞から手紙へと、視線を向ける。

 トリツィアにもオノファノにも、ゲリーノは手紙を出していた。両方ともに同じだけの枚数の手紙を送っている。……ゲリーノはオノファノの事も特別に思っているのだろう。もしかしたらいつの間にか男友達的な扱いにされているのかもしれない。



「俺は長文を送られても、同じだけの枚数を返すつもりはないけど」

「ゲリーノ、落ち込むよ?」

「トリツィアは?」

「私も、普通な程度の返答しか書かないかなぁ。そこまで詳しく書くようなことはないし」

「トリツィアも俺と一緒じゃん」

「まぁ、そうだけど。私とオノファノが両方とも短めの返答しかしてくれないだと、落ち込むかなーって」

「それでいいんじゃないか? 向こうがどう思っているかはともかくとして別に特別親しくしたい友人とかそういうわけでもないし。俺はトリツィアにちょっかいかける奴は嫌だし」

「そっかー。私もまぁ、そこまで特別視はしてないかなー。なら、ちょっとした短めの手紙でいいか」



 トリツィアとオノファノはそんな会話を交わしている。



 普通なら特別な王族から手紙をもらい、親しくしたいと行動で示されればそれを喜んで受け入れるものである。だけどトリツィアもオノファノも本当にいつも通りのマイペースだった。



 ……ちなみに神官長であるイドブに関しては、ゲリーノから手紙が来るなら丁寧に返事をするようにとは二人に伝えている。イドブとしてみれば、彼らがゲリーノと良い関係を築いていることは望ましいことであるとは思っているようだが。



 さて、そうして加護持ち王子とそれなりに良好な関係を築いているトリツィアとオノファノは今日も今日とてのんびりと過ごしていたわけだ。


 しかしのんびりしている中でも、騒動というのはいつの間にかやってくるものである。

 二人が過ごす街から、近い場所で強大な力を持つ魔物が現れたというのが噂になっていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 終了のお知らせさん「出番……無かったorz」 あっさりと終わった訪問で何かしらな変化を齎したようだけど、二人にとっては日常の一場面にすらならないとか笑えるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ