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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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加護持ち王子と、下級巫女 ③



「加護持ちではない? どういうことだ? それに友達?」



 ゲリーノは何を言われているのか分からないといった様子を見せる。



 この世界にとって神が身近で奇跡を度々目にすることがあるといえど、基本的に直接神が地上の生物に関わることはそこまで多くない。その神力に耐えられない生物の方がずっと多いのだ。

 加護を与えたり、信者に神託を下したりというのはあるが、それ以外に神がこちらに関わってくることはないのだ。




「私は女神様とは王子様の認識通り仲良しですけど、加護は要らないっていいました。なくてもどうにでもなりますし」



 彼女がさらりと、平然と告げた言葉は一般的に考えておかしすぎることである。

 基本的に加護を持つ者か、高位の聖職者以外は神の言葉を聞くことなどありえない。そうでなければ声を聞くことなど堪えられないのだ。それだけ神と呼ばれる存在の力は強いのだから……。



「加護は要らないと断った……? お前はそんなに正確に神の言葉が聞けるというのか?」

「そうですねー。よく世間話をします。私の信仰する偉大な神様である以前に大事なお友達ですからねー」



 神様と当たり前のように世間話をするなど、人の身では難しいことである。それでもトリツィアはそれを平然と行うような少女である。




「その方が世間に露見すれば普通の生活は出来ないと思うが……」


 ゲリーノはトリツィアの言葉を信じられない様子で、そう呟く。



 女神のお気に入りでありながら加護をもらっていないだとか、正確に神の言葉を聞くことができるだとか、世間話をしているだとか――そんなよく分からないことを言われ続けて混乱しているともいえるだろう。



 戦神の加護を持ち、非日常と隣り合わせの生き方をしているゲリーノにさえそんな反応をされるおかしなことがトリツィアにとっての日常である。




「私自身、私の自由を阻害するものは全て何が何でも排除します。私が力づくでどうにかしようとして上手く行かないことって多分少ないですし。それに女神様は私の自由が阻害されれば助けてくれると思います。女神様以外にも、私に嫌なことがあれば助けてくれる人、結構いますしね。私は周りに恵まれてるのです。それでもどうしようもなかったら煩わしいものを捨ててのんびり生活するもありですしねー。今の生活が気に入っているのでこのままがいいですけどどうしようもなかったらどういう生活もありですし」



 トリツィアには沢山の味方がいる。

 女神様の助けを借りずとも、オノファノや家族、『ウテナ』の面々にレッティなど、力を借りられる者は沢山いる。

 トリツィアのペットと化しているジンとマオだって、自分を下す力を持つ者が情けない姿を見せることなど嫌がるだろう。巫女姫だって、トリツィアの自由が阻害されることは全力で止めるだろう。


 ――そもそもそこまでの状況になれば、女神ソーニミアは間違いなく黙っていない。

 神として関われる範囲で制裁は下すことだろう。女神様にとってはそれだけトリツィアという存在は大事な友人なのだから。



「お前は楽観的だな。それでどうにもならなかった場合、どうする気だ?」

「その時はその時考えますよー。王子様は常に先のこととか、もし失敗したらとか考えて生きている感じですか? なんだかそうやって生きていくの大変そうですね」

「当たり前だろう? 俺はただでさえ加護持ちなのだから、何かしら過ちを犯せばその分、大変なことになってしまう」

「なるほどー。でもあんまり気を張らなくていいと思います。加護持ちとか関係なしに、王子様はまだ若いですし、あんまり根を詰めてしまうと疲れ切ってしまいますよ? これからの人生長いのですからもっとリラックスしてのんびりと生きても誰も文句言わないです」



 トリツィアは当たり前に、ただの同年代の少年に向けて言うかのように――そんな言葉を紡ぐ。

 ゲリーノがあまりにも頭を働かせて生きているのを感じ、のほほんとあまり何も考えずに生きているトリツィアとしてみれば少し心配になったようである。




「本当にお前は変わっている。何もかもおかしいというか、俺に当たり前のようにそんなことを言う奴など他には居ないからな」

「そうなんですね。周りの人たちは王子様が加護持ちだから遠慮しているんですかねー? 私的にはのんびりとたまには気を抜くのは重要なことだと思っているのですが」




 そう言い切ったトリツィアは、ゲリーノの目をまっすぐに見てそのまま続ける。




「ところで王子様、私と戦いませんか? 私、戦闘に特化した加護持ちと戦ってみたいなーって好奇心があるのですけれど。それに王子様的にも私がどのくらい強いかって気になりますよね? あとオノファノのこととも戦いましょ?」

「……確かにお前の強さには興味がある。だから戦うことには異論はない。あとオノファノって誰だ?」

「私の幼なじみの騎士ですよー。とても強いので、王子様も楽しめるかと」



 トリツィアは笑顔でそう言い切るのであった。







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― 新着の感想 ―
[一言] 王子終了のお知らせは流れないかぁー…
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