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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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セクハラするやつは殴っていい。by女神 ③



「何で止めるの。オノファノ」

「何でも何も、止めるのは当然だろう。つか、力つよっ!」

「……セクハラするやつは殴っていいって女神様も言っているよ?」

「いや、まぁ、セクハラは駄目だけど……。お前が殴ったら洒落にならないから!」

「えー? そんなこと、言われても。私か弱い乙女よ?」

「どの口がいっている!!」



 オノファノとトリツィアはそんな会話を交わしている。

 ちなみにその間もトリツィアは、侯爵子息の事を殴りたいな……とでもいうように手を振りかざそうとしている。それをオノファノは一生懸命止めている。




 そんな二人の前で、侯爵子息は唖然とした様子を見せていた。



 自分が殴られようとしているという事実に驚いて、そして我に返って告げる。




「俺を殴るだと!? 下級巫女と、神殿騎士如きが!! 少し可愛いからといって生意気だ! 貴様を俺の――」

「わぁああああ!! 何言ってんですか!! トリツィアさんにそんなことを言うなんてアホですか!! 目見えてます? トリツィアさんに殴られるとか、死にますよ! 死なないにしても、トラウマものですよ!! 分かっていないでしょう!!」

「なっ――」

「レッティ様、お願いします」



 神官は慌てたように侯爵子息にそんなことを告げている。

 そしてその神官に呼び出されたドーマ大神殿の上級巫女であるレッティは、少し疲れた目をしながらやってくる。


 レッティは、トリツィアとも長い付き合いである上級巫女である。このドーマ大神殿の中では一番の権力者で、当然、トリツィアに手を出そうとした侯爵子息よりも地位は高い。





「――こちらへ。トリツィアさんに対する注意事項をお伝えしますから。トリツィアさん、殴りたくなる気持ちも分かりますけれど、無暗に殴るのはやめてもらえると助かりますわ」

「レッティさんがそういうなら、今日はやめる! でもセクハラされると殴るよ!」

「……そうですか。改めてトリツィアさんが嫌がることをしないように周知しておきますわね」



 侯爵子息を引き取り、トリツィアにレッティは話しかける。

 レッティの言葉にも、トリツィアははっきりとセクハラされたら殴ると言い張っている。

 敬淑な信者であるトリツィアにとって、女神様の言葉は実行すべき言葉である。それにトリツィア個人としてみても、セクハラなんてしてくるやつは殴っていいと思っているというのもある。



 そもそもトリツィアだったからこそ無理に連れていかれることがなかったが、他の下級巫女であったら自分の意志に関わらずにつれていかれることがあっただろう。それを考えると殴ってもいいのでは? というのが本音である。



 そして何か言いたげな侯爵子息は、レッティとその護衛騎士に連れていかれていた。





「あーあ、殴りたかったなぁ」

「殴りたかったなじゃないからな? 殴るなよ?」

「セクハラされたから」

「……まぁ、セクハラは駄目だけどな。今度から俺を連れてけ」

「んー。どうしようかな」

「どうしようかなじゃないから。いいから、連れてけよ。セクハラさせないようにするから」

「というかさ、オノファノ。私、暴れたい気持ちだから戦わない? 模擬戦! ストレス発散!」

「トリツィアはストレスなんて全くたまらない生活しているだろうが。それだけ自由気ままに生きていて、ストレスなんてたまらないだろう。……まぁ、模擬戦をするのはいいけれど」




 トリツィアの突拍子もない会話にも、オノファノは慣れた様子で答えている。

 そして二人はそのまま大神殿の中庭へと向かう。



 ――そして二人の素手での模擬戦が始まった。

 




 さて、その頃、侯爵子息はレッティにトリツィアに手を出さないようにといった説明をされている。しかし侯爵子息からしてみれば、殴られようとしていたのもあってまだ怒りが抑えきれぬようだ。



「レッティ様。あの下級巫女の少女を恐れているようだが、貴方は上級巫女だぞ。それなのに、下級巫女をそんなに恐れるなんて情けないのではないか?」

「……貴方はトリツィアさんの恐ろしさを知らないからこそ、そういうことが言えるのです。それにトリツィアさんはちゃんと立場をわきまえてます。時々暴走気味の時はありますが、あの人は巫女としては素晴らしい力を持っています。貴方がこのままトリツィアさんを求めるのならば破滅しか貴方に与えられないでしょう。そもそも私を含めてドーマ大神殿の巫女と神官が全力で貴方を止めますわ」


 レッティは自分の言葉に納得しない侯爵子息を見ながらそんなことを告げた。


 レッティからしてみれば、トリツィアに手を出そうとするなんて魔王に手を出すようなものである。そんなことを好き好んでやるなんて……と考えているレッティの目に丁度良い光景が目に入った。




「――あれを見ても同じことを言えますか?」


 そしてそれを視界に留めさせる。侯爵子息はそれを見て目を見張った。



「あれは?」

「あれは模擬戦をしているトリツィアさんとその護衛騎士のオノファノさんです。相変わらず二人ともおかしいです」



 レッティたちの視界では、凄まじい激しさで模擬戦をしているトリツィアとオノファノがいる。

 護衛騎士と対等にやりあっているトリツィアはおかしいといえるだろう。オノファノだからこそどうにかなっているが、違う相手なら一撃で気絶している可能性も十分ある。





「……トリツィアさんに手を出してはいけません。トリツィアさんは相手が誰だろうと、自分の意志に沿わないことはやりません。わかりましたね?」

「……はい」



 トリツィアとオノファノの模擬戦を見た侯爵子息は、青ざめながら結局頷くのであった。



 ちなみにトリツィアとオノファノの模擬戦はしばらくの間、続けられた。





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