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下級巫女です!!  作者: 池中織奈


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下級巫女は、久しぶりに家族に会う。⑨



「姉さんはこの街に良くなじんでいるよね」

「ずっと大神殿にいるからね。馴染むのは当たり前だよー」



 トリツィアとルクルィアは、街を散歩している。

 この街の人々はトリツィアのことをよく知っているので、注目は集めている。あとはルクルィアも見目が大変良いので、二人が揃っているから目を引いているというのもあるだろうが。



 普段のマオとジンの散歩だと走り回っていたりしているわけだが、今回はルクルィアがいるのでトリツィアもそれに合わせてゆっくり歩いている。



「姉さんが楽しそうにしていてよかった。姉さんなら自分で全て解決するだろうけれど、もし大神殿のことが嫌になったら僕らに言ってね? 僕らは姉さんが大神殿から逃げられるようにするからさ」

「嫌になったら自分でどうにかするから、大丈夫だよ?」

「それでも力づくでやるよりも交渉で進めたらいいこともあるでしょ? 姉さんはそういうの苦手そうだから、交渉したいなら言ってね? 僕らは大神殿の情報は集めているからどうにでもするから」


 簡単にそんなことを言ってのけるルクルィアである。

 彼はまだ十三歳だというのに、まるで大神殿をどうにかすることなど簡単だとでもいう風であった。

 トリツィアの家族たちは、商人として人脈が広い。だからこそ、独自の情報網を持ち合わせている。――だからこそ、やろうと思えばできるのであろうというのが分かる。





「まぁ、その時は言うねー? でも私は大神殿暮らしに満足しているから、よっぽどのことがない限りそういうことはないと思うけどね?」


 トリツィアは基本的には、人にとっては大事でも簡単に解決してしまう。その彼女がよっぽどのことというような事態が発生すれば、周りの人々もただでは済まないだろう。


 ルクルィアは本当に自分の姉は相変わらずだと思ってならない。




「そっか。なら、良かった」

「うん。私は大丈夫だから、ルクルィア達は自分の商売のことを一生懸命やればいいよ。それと、私もルクルィアに何かあったらすぐに駆けつけるから、連絡してね」

「姉さん、流石に大神殿所属の巫女がそう簡単に駆けつけられないでしょ」

「そのあたりはどうにでもするよ。そもそも家族の一大事ならば駆けつけるの当然だもん」


 にこにこしながら、彼女はそう言った。



 そんな会話を交わした後、トリツィアとルクルィアは一つのお店を見ることにする。ルクルィアがそのお店を気になったと告げたからである。

 ペットと同伴で中に入ることは出来なかったので、トリツィアは「外で待っているから見てきていいよー」と笑っていた。



 さて、能天気に笑うトリツィアに見送られて、お店へと入ったルクルィアは商品を見ることなく、客としてその場にいる女性の一人に近づく。






「僕と姉さんを付け回しているのがいるみたいだから、どうにかしといて」



 小声で、その女性にのみ聞こえるように告げるルクルィア。その女性はその突然の発言に驚くことなく、静かに頷く。



 その返答に満足したルクルィアは、店内でお菓子を購入し、そのまま何事もなかったかのようにお店の外に出る。







「ルクルィア、おかえり。買いたいもの買えた?」

「うん。買えたよ、姉さん」



 笑顔で彼らはそんな会話を交わし、また散歩が始まる。






「ルクルィア、追ってきた気配消えたけど、何かした?」


 しばらくして、トリツィアがそう問いかける。




「姉さん、気づいていたんだ」

「うん。でも何もしてくる気ないし、見てるだけならいいかなって。折角ルクルィアとお散歩中だしね」


 トリツィアの言葉にルクルィアは少し呆れた表情になる。

 トリツィアとルクルィアが街を散歩し始めている段階から、彼らを追っている者がいた。それはトリツィア目当てなのか、ルクルィア目当てなのかは判断がつかないが……どちらにしてもルクルィアにとっては不愉快だったため対応をさせたのである。




「姉さんは、本当に楽観的というか……早めの対応をした方がいいこともあるからね? 姉さんが幾ら強くたって後手に回ると大変なことになったりもするんだから」

「散歩の後に捕まえる気ではいたよ? それにしてもルクルィアは追手への対応も昔より素早くなったねー。いつ対応依頼したの?」

「さっきのお店」

「そうなんだ、凄いね!」



 そんな会話を交わしているトリツィアとルクルィアのことを、散歩で連れられているマオとジンは何とも言えない表情で見ている。


 トリツィアもルクルィアも普通とはかけ離れており、マオとジンからしてみれば驚きなのだろう。




「うん、僕もこの一年半で成長しているんだよ。僕はもっと凄くなる予定だから、姉さんも楽しみにしていて。姉さんを驚かせるぐらいの存在になりたいなと思っているから」

「楽しみにしているねー」



 トリツィアという規格外の存在を驚愕させるほどの存在。それになるというのは難しいことだろう。しかしルクルィアは全く悲観した様子見せず、いずれそういう存在になることを確信しているようだった。




 

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