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信康放浪記  作者: 雪国竜
第一章

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第89話

 アパートメントを出た信康達は、何処も寄り道せずにヒョント地区にある傭兵部隊の兵舎へと向かう。


 そして兵舎がある場所に着く三人。


「これはまた・・・一体、何百人住める様に造ったんだ?」


「以前まえよりも、遥かに大きくなってますね」


「何百人ばかりか、千人単位と見て良いだろう。これは傭兵部隊は今後、更に募兵すると期待しても良いだろうな」


 ティファ、ルノワ、信康の三人がその建物を見て驚く。


 前の兵舎に比べて、階数は変わらないが広さは数倍はある。前は一棟しかなかったのが、今の兵舎は二棟加わり、合計三棟になっていた。


 敷地内を目一杯使った立て方で、隣の建物とは数ミリの隙間しかない。恐らく外から設計して、改築工事をしたと思われた。


 外装もなども綺麗になっているので、かなり金を使ったなと思えた。


「まぁ・・・何時までも此処に居ても仕方が無いし、中に入るか」


「そうですね」


 信康がそう言って、兵舎には入る様に促すとルノワもそれに賛同した。


 そして扉を開けて中に入ると、前はそれなりに汚れていた床や内装が綺麗になっていた。


 信康達はそれを見て、思わず此処で合っているよなと思ってしまった。


 そう思っていると、受付に座っている前と同じ管理人が顔を出した。


「おや、ノブヤスとルノワに、それとティファまで来たのかい。面白い組み合わせだね」


「管理人のおばちゃんだな。良かった。ここで合っているようだ」


 信康が安堵の息を吐くのを見て、中年女性の管理人は意味が分からず不審そうな顔をする。


「ん? 何かあったのかい?」


「いや、別に・・・所で、前と同じ部屋で良いのか?」


「ああそうだよ。ほら、部屋の鍵だよ」


 中年女性の管理人は、信康達に部屋の鍵を渡した。


 信康の部屋番号は変わらず、二〇八号室であった。


「お前等の部屋は?」


 信康がそう訊くと、ルノワとティファの二人は不思議そうな顔をしていた。


「どうかしたか?」


「いえ、私の部屋は三号棟の二〇六号室です」


「あたしも三号棟の二〇九号室になっている」


 二人がそう言うので、信康も前と違うのかと思い見てみると自分の鍵には「一号棟二〇八号室」と書かれていた。


「どうやら、男女で別けたみたいだな」


「まぁ、そうだね。でも、食堂は合同なのか変わらない。部屋の行き来も前と同じだよ」


「前と変わらないな」


「その代わり、防音対策はしっかりしたからね。金は掛かったけど、音が全く漏れない様な作りにしたからね」


 中年女性の管理人がそう言うのを感心しながら聞いていた信康達。


「部屋の作りだが、以前(まえ)と変わらないのか?」


「ああ、其処は変わらないよ」


「そうか。じゃあ、二人共後でな」


「ああ、ノブヤス。そっちの荷解きが済んだら、あたしのも手伝ってよ」


「お願いしますね」


「任せろ」


 そう言って信康は、ルノワ達と別れた。


 信康は鍵の記された番号の部屋に向かい、その部屋の前に着いた。


 鍵穴に鍵を差し入れ回すと、ガチャッという音がしてドアノブを回すとすんなりと回り、信康は部屋に入る。


 部屋に入り内装を見てみると、前と同じ作りの部屋であった。


「さて・・・俺の荷物を下ろしてから、ティファの部屋に行ってあいつの荷物を下ろさないとな」


 信康はそう言って、ポケットに仕舞ってある虚空の指環(ヴォイド・リング)を指に嵌める。そして荷物を出して、荷解きをした。


 それほど自分用の荷物を持って来てなかったので、荷解きは直ぐに済んだ。一息つかずに、先ずはルノワの部屋である三号棟二〇六号室に向かった。何も手伝う必要など無いのだが、向かう理由は室内を見たかったからだ。


 二〇六号室に入室すると、前は二人で一つの部屋であったのに今は一人部屋になっていた。


 どんな理由かは分からないので、後で傭兵部隊総隊長のヘルムートに尋ねる事にした信康。


 もしや女性隊員の数が増員されたから一人部屋になったのかと、内心では信康は期待していた。美人が多ければ、多いに越した事は無い。そんな考えを持っていると知られれば、ルノワにもティファにも呆れられるだろうが。


 信康は来たついでに荷解きの手伝いをしようかと思ったが、ルノワに「私の部屋は自分でしますので、ノブヤス様はティファの部屋に行って荷物を下ろしてあげて下さい。ティファが待ってますよ」と言われて部屋を出された。


 仕方が無く、信康はティファの部屋である二〇九号室に向かう。


 こちらの部屋も、ルノワの部屋と同じく一人部屋であった。


 信康は虚空の指環に入っている、ティファの荷物を出した。


 そして荷解きを手伝い、信康は自分の部屋に戻った。

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