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信康放浪記  作者: 雪国竜
第一章

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第86話

 プヨ歴V二十六年六月二十二日。


 

 信康が目を覚ますと、セーラが傍で寝ていた。


 信康は影分身(ドッペルゲンガー)の魔符を使った代償からか、僅かだがまだ身体には疲労感が残っていた。


 しかし行動するのに支障を来たす程ではなかったので、そのまま起床するとセーラも起こして共に朝食を摂った。


 信康とセーラは共にそれぞれの仕事場に向かったが、信康はその前に新たな分身を召喚して部屋に待機させた。


 信康の分身はキャロルの分の朝食を作り終えると、キャロルの部屋に入ると、キャロルは起床していて片眼を擦っていた。


 清浄(クリア)の魔符を使って身体を綺麗にしてから寝間着を着せているので、キャロルは全裸状態では無かった。


「おはよう、目が覚めたみたいだな?」


「・・・・・・おはよう、ねぇノブヤス君」


 信康が挨拶をすると、キャロルも返事をする。それから徐に、キャロルは信康に話し掛けた。


「何だ?」


「あたしにこんな事をした理由って、ノブヤス君とカルレア(大家)さんがしている場面を見てしまったから?」


「それもあるが、些末な事だ。見られていなくても、俺はキャロルに同じ事をしているよ。お前の事は、ずっと狙っていたからな」


「それが何時からかは知らないけど・・・その時からあたしをこうして犯す機会を伺っていたの?」


「いいや、そんな事は無い。本当はもっと交流を重ねて健全なお付き合いがしたかったんだが、お前とは時間が重ならず碌に会って話せなかったろう? それに明々後日の二十五日には、傭兵部隊の兵舎に帰還しなければならなくなってな。だから此処は一つ、不本意だが強引な手段を取らせて貰った」


「・・・・・・君の場合、今回みたいに弱みを握って犯す姿しか想像出来ないんだけど?」


「ははははっ。言葉も無い。言っても信じられないだろうが・・・俺は女性に対してきちんと正面から口説いて、それで合意を確実に得てからやるのが俺の本来のやり方だ」


 信康は自身の女の口説き方をそう言って明言すると、キャロルは半眼視して信康を睨み付けた。


「・・・だったら聞くけど、あたしの場合は?」


「世の中には何事においても、例外というのが存在する」


 信康は悪びれる事無く、その様に言い訳を口にした。


「まぁ自分が良い女だった事と、俺に目を付けられたのが運の尽きだと思って諦めてくれ。その代わりと言っては何だが、衣食住も金銭面でも性的な意味でも幸せにするのでな」


 信康はそう言ったが、決して嘘では無い。信康自身、キャロルを不幸にしようなどとは毛頭思わなかった。そんな大言壮語とも言える発言を聞いて、キャロルは笑い出した。


「あはははっ!・・・・・・君って、本当に面白いね」


 楽しそうに笑うキャロル。笑う意味が分からず困惑する信康だったが、嫌悪感が感じられないのでその事に関しては計算外なれど嬉しく思った。


 キャロルは身体を起こして、寝台から降りる。


「でも・・・あたしをそう簡単に堕とせるなんて、思わない方が良いよ」


「二十日までには俺のものにしてみせよう・・・取り敢えず朝食を作ったから、食べると良い。腕に縒りを掛けて作ったのでな」


「そうなの? だったら、ありがたく頂こうかしら? 誰かさんの所為で私、すっごくお腹が空いているんだ」


 キャロルはそう言って寝室を出たので、信康の分身体も後に続いた。


 リビングに付くと信康の分身体は、朝食をキャロルの前に用意した。


 本来ならば朝から食べるには少々重い内容と量であったが、キャロルは豪勢な朝食に感激してパクパクと食べ進めて全て完食した。


(当たり散らされたり罵倒される覚悟をしていたが・・・まぁ嬉しい誤算という奴だな)


 信康の分身体はそう思いながら、キャロルの食事を眺めていた。キャロルが食事を終えて一時間後、信康の分身体はキャロルの背後から抱き着いた。キャロルは信康の分身体に抱き着かれて、小さく悲鳴を上げる。


「抱くぞ。良いな?」


「・・・駄目って言ってもする癖に。助平(エッチ)なんだから」


 そう悪態を吐いたキャロルだったが、嫌がる素振りは見せなかった。そんなキャロルの反応を見て、信康の分身体は不敵な笑みを浮かべてお姫様抱っこをして寝室までキャロルを運んだ。それから日が出ているにも関わらず、キャロルの寝室から嬌声が上がった。

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