第62話
翌日。プヨ歴V二十六年六月六日。
「という訳だ。少し手を貸してくれないか?」
信康は部屋に居るルノワ達に昨日あった事の顛末を話して、更に暫く自主的に用心棒みたいな事をしないかと持ち掛けた。
リビングで三人で食事しながら、ルノワとティファに話し掛ける信康。
「つまり・・・その馬鹿貴族がまた何をやらかすか分からないから、ちょっと様子見しながら護衛しようって事かい?」
「まぁ、概ねそんな感じだ」
「私は構いませんよ」
「そうか。ティファはどうだ?」
「・・・・・・報酬は?」
「一日大銀貨一枚」
「もう一声」
「だったら、大銀貨三枚だ」
「乗った♪」
ティファは笑顔で手を叩いた。
「私も貰えるのですか?」
「当然だろう? 無償労働などさせんさ」
「では、私は大銀貨一枚で良いですよ」
「良いのか?」
「はい。今は特にお金に困っているという訳では無いので」
「そうか。じゃあ、二人には俺が顔を出せない時、午前八時から午後五時までを妖精の隠れ家に居るか、又は店を見てくれ」
「何で、ノブヤス自身が顔を出せないんだい?」
「昨日からある女に、仕事を押し付けられてしまってな。少なくとも午前中はその仕事に付きっ切りで、顔を出せそうに無い」
「仕事? 何時の間に」
「ノブヤス様は、お金には困っていない筈ですが?」
「その通りなんだが、ジーンに頼まれてしまってな」
「ジーンに? では、仕方がないですね」
同居人だからか、普段はどんな生活をしているか何となく聞いているみたいだ。
信康は時計を見ると、そろそろ出ないと仕事に間に合わない時間になっていた。
「やっべ、そろそろ出ないと不味いな。じゃあお前等、後は任せたぞ」
「承知しました」
「食事代は自腹?」
「・・・食事代として大銀貨二枚、追加で付けてやるよ。流石に食べたり飲んだりでもしてないと、退屈だろうからな。だが、護衛を疎かにするなよ」
「良いねぇ。流石はあたしの旦那様だっ。いよっ! 太っ腹っ」
ティファの歓声を背中に受けつつ、信康は鬼鎧の魔剣を腰に差して部屋を出た。
(これで大丈夫だろう。後はどうやって、あのカルノーって馬鹿貴族に馬鹿な事を止めさせるかだな)
信康は仕事に向かいながら、その事を考えていたが良い考えが浮かば無かった。




