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信康放浪記  作者: 雪国竜
第一章

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第52話

 プヨ国立公園。時刻は夕方になろうとしていた。


 未だに信康は、アリスフィールがプヨ国立公園に来ると信じて待っていた。


(・・・遅いを通り越して、もう忘れているのかもしれんな。まぁ仕方が無いか。アリスはプヨのお姫様だ。忘れてなくても王宮を抜け出せなかったか、やる事が多過ぎたか・・・可能性を考えだしたらキリが無いか)


 信康はもう少し待とうかと考えていたら、夜になろうとしてるこの時間に誰かがこちらにやって来る。


 誰だと思い見ていると、赤を基調とした長袖の侍女服に純白のエプロンを着ている。


 リボンなどの装飾が無く、実用性を重視した侍女服みたいだった。


(何で、こんな公園に侍女(メイド)が居るんだ?)


 と思いながら、侍女を見る信康。


 そしてその侍女は、プヨ国立公園の前をキョロキョロしている。


 こんな所に侍女が居るのも変なのに、挙動不審な行動を取っているので余計に変であった。


 その変な行動を取るメイドに、声を掛けた。


「・・・其処の侍女、ちょっと良いか?」


「はい、私の事ですか?」


「この場に侍女と言える人物は、あんた以外居ないから必然的にそうなるだろうな」


「そうですよね。それで何か御用でしょうか? 主人の命令であるお方を探しにこの公園に参りましたので、お相手しているお時間など無いのですが・・・」


「間違っていなければ、あんたが探している人物は俺の事だ。あんたの主人は、目当ての人物は東洋人とか何とか言わなかったか?」


「!」


 信康に訊ねられた侍女は、その言葉を聞いて両眼を見開いて信康を見た。


 侍女の姿だけを見てそう予想出来たのは、半ば山勘でしか無い。


 しかし侍女服にしては上質なので、最低でも大貴族以上に仕えている侍女だと想像を働かせるのは信康にとって簡単だった。


 もし違ったら謝ってから帰れば良いだけなので、その気楽さも侍女に訊ねる理由になっていた。


「はい、言っていました・・・しかし」


「あーまぁ、東洋人なんて王都アンシを探せば俺だけでは無いかもしれんか・・・俺の名前は信康と言うんだが、主人から名前は聞いていないのか?」


「あ、貴方様がノブヤス様でしたかっ。これは、大変失礼致しました。私の無礼、何卒お許し下さいませ」


 自分が信康に取った態度に対して、侍女は頭を深く下げて謝罪した。


「いや、気にしないでくれ。あんたは美人だし、男に声を掛けられたら警戒するのは当然だ」


 信康はそう言って、侍女に頭を上げる様に促した。


 プヨ国立公園には信康と侍女しか現在は居ないが、他人に見られたら面倒だし誤解されたくない。


 信康はそう思っていると、侍女も頭を上げて信康を見た。


「ありがとうございます。お許し下さるだけでなく、お世辞にも私を美人と言って頂けて・・・」


「別にお世辞でも何でも無いのだがな。あんたが美人なのは、間違いない・・・第一、醜女ブスが王家・・の侍女なんて勤められる訳無いだろう」


 信康の一言で、侍女は両眼を見開いて信康を見た。その視線には、信康に対する警戒心があった。


「新聞に載る程の騒動になったろ? 傭兵部隊にも似顔絵が配布されたし・・・第一、気付かないと思うか?」


「・・・どうなさる御心算ですか?」


「どうもこうもしない。プヨ王家は傭兵である俺の雇い主だぞ。折角の息抜きの時間を、奪ったりするのも可哀想だ。だったら護衛がてら、同行した方が良いだろう。だから伝えておいてくれ。俺で良ければ、また付き合ってやると」


「・・・お心遣い、ありがとうございます。殿下に代わりまして、厚く御礼申し上げます」


 侍女はそう言うと、再び信康に頭を深く下げた。信康は苦笑しながら再び頭を上げさせると、小声で話を続ける。


「それで? 殿下はどうされたんだ。流石に多忙だったか?」


「はい。今日は色々ございまして、王宮を抜け出せませんでした。結局御自分で公園に来られるのを諦めて、私にノブヤス様へ会いに行く様に頼んだのです・・・殿下から、言伝を預かっております」


 信康は予想が的中した事に、再び苦笑した。


「御苦労な事だな。それから伝言の内容は想像も出来るが、ありがたく訊かせて貰おう」


「では、コホン・・・『ご~めん。約束すっぽかしちゃって、今日は色々あって忘れてたの、今度何かで埋め合わせするから、今日の所は許してね♥』・・・以上です」


 無表情で、そんな恥ずかしいセリフを淡々と言うこの侍女に驚きながらも、溜め息を吐く信康。


「まぁ、急用があったのなら仕方がないな。では続けて殿下に了解したとお伝えしてくれ・・・ついでに待ち合わせする場合は時間も指定してくれと、その事も伝えてくれると助かる」


「畏まりました・・・申し遅れました。私はアリス姫様の侍女メイドをしている、リリィ・フォン・バメシャク―ドと申します。これからも姫様共々、よろしく御願い致します」


 そう言って侍女ことリリィは自己紹介を済ませた後、プヨ国立公園を後にした。


 信康はやる事がなくなり、どうしようかと思った。


 其処でプヨ国立公園に来る前に、シエラザードから渡された紙を思い出した。


『その用事が終りましたら、御足労ですが・・・此処に書いてある場所まで、来て頂けないでしょうか?』


 そうカルレアのアパートメントで、シエラザードに言われたの思い出した。


 ケル地区からケソン地区まで距離はあるが、交通機関を使えば要望された時刻には間に合うだろう。


 なので信康は、シエラザードに会いに行ってみる事にした。


「そう言えば、レズリーがシエラザードが占い師を仕事にしているとか言っていたな」


 占いで、この結果が来る事が分かったのだろうか?と思いながら、信康は紙に書かれた住所に向かった。

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